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ブロスを倒した後はたいした緊張感もなく、日常生活の中で現れるモンスターを倒すという話が続いており、あの壮絶な戦いは嘘だったのか、と思いたくなってきていた。
ブロスを倒してしまったことで、どこかダークジョーカーを倒すという目的意識さえ低下してしまっていたような気がする。 だって普通であれば、「ボスを倒したこと」は「悪の組織を根絶したこと」に繋がるからだ。 そうならないのが、「りりか」という作品が「セーラームーン」とは違った変身戦闘少女物であることの証であるし、クイーン・アースや命の花の問題をおざなりにしていない証拠であるともいえる。 けれども物語の緊張感が一気に切れ、どこに進むのか迷っているかのように見えてしまっていたのも事実だ。 そこにあの衝撃事実である。 ここに「りりか」という作品の根本的なテーマが突如浮かび上がる。 まず、りりかはナースエンジェル、つまり看護婦さんなのである。 看護婦さんの仕事は、大雑把にいってしまえば、患者さんの怪我を手当てしたり、病気を治すことだ。 つまり、生命が危機に陥った時、健康体に戻してあげるお仕事であり、究極的には「命」を助けるのがそのお役目なのである。 ここから導き出されたキーワードは「命」だということを確認しておく。 次に大切なのはこの「命」を守ることの意味だ。 「命」を守ることはどうして大事なのか。 りりかはこれを日常生活の中に見つける。 それは家族であり、友達であり、憧れの先輩であり、幼馴染であるのだ。 彼らとの平穏な生活が、また彼ら自身が、りりかにとって尊く、失い難いものだから。 だから「命」は大切なのである。 ここでブロスを倒した後の日常描写の話に戻る。 何故、ブロスを倒した後、その作品のテンションを下げてまで日常的な描写をしたのか。 別にそのまま、命の花の問題にもっと焦点を当てて描いてもよかったのではないか。 他のHPに書いてあることによると、大地監督がりりかの余りに悲惨な運命に同情してしまったから、という理由があったが、むしろここで日常描写を入れたほうがより残酷だったのではないかと私は考える。 何故なら、りりかは、学校に行けば自分を気遣ってくれる友人がいて、自分と張り合ってくれるライバルがいて、いつでも全力で手助けしてくれる幼馴染がいて、そして学校から帰ってきたら優しく笑顔で迎えてくれる温かな家族がいる、そんな平和の有難さを痛感してしまったからである。 何が大事かを悟ってしまったりりかには、この結末はあまりにも辛辣で残酷だ。 しかもずっと好きだった加納先輩に「君の命がほしい」とまで言われたのだから、その衝撃は倍増しである。 りりかは苦悩する。 「死にたくない、生きていたい」という言葉のなんと重いことか。 けれども、りりかは自分の命を放棄し、代わりに地球とクイーン・アースを救うことを決意する。 いや、正確には少し違う。 地球とクイーン・アースの全生命などとそんな大それたものではなく、自分の目の前にある平和を守るために自分の命を捨てることに決めたのである。 翌日、誕生日を迎えたりりか。 いつもより周りのものが愛おしく見えるような気がする。 誕生日会で蝋燭を消すのだが、りりかの親しい人たちがりりかに対して一言ずつ言葉をかける。 みんな立場は違えど、りりかを大切に思っているのが伝わってくる。 そんなみんなに対して、りりかが言った一言。 「生まれてきて良かった」。 これから自殺する人が本来言うとは思えないような台詞である。 だからこそ、りりかが周囲の人をどれだけ愛し、大切に思っているかが如実に伝わる。 りりかの決意に迷いはない。 だが、ここで一つの疑問が浮かんでくる。 りりかが死んだ後、本当に周囲の人たちは幸せになれるのだろうか。 りりかのことをみんな大切に思っている。 なのに、りりかがいなくても幸せになれるのか。 りりかはそのことを考えているのだろうか。 この問いはりりかが死ぬと決意したことを知った星夜によって投げかけられる。 しかし、りりかはこのことも考えていた。 加納先輩にみんなの自分に関する記憶を消してくれるよう頼むのだ。 りりかという存在が最初からいないことになれば、誰も悲しまないだろうと。 正直、小学生がここまでのことをするのがすごいと思った。 いや、むしろ、小学生にここまでのことをやらせているスタッフは本気だと思った。 そしてこれを了承する加納先輩を描くのもすごい。 これにより、加納先輩というキャラの深みが増した。 そしてりりかは変身し、自分の命と引き換えに命の花を咲かせる。 ・・・はずなのだが、実際には命の花を咲かせた後もりりかは死なない。 このことに憤りを覚える人も多いだろうと思う。 りりかがした決意は何だったのか、と。 でも、個人的にはりりかが死んでいては駄目だったと思う。 何故なら、「りりか」のテーマは「命」だったからだ。 それはりりかがナースエンジェルであること、そして命の花自身であったことからも明らかだろう。 命の尊さを描く作品なのに、命を投げ出すことに感動を覚えさせるのは間違っていると思う。 その意味で、りりかが生きていることを選んだスタッフは正しかったのではないかと私は考える。 まぁ、とにかく、りりかの最終回は泣ける。 命の大切さを思い出させられる。 精一杯今を生きようと思わせてくれる。 それだけで見た甲斐がある作品だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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