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Selfishly

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二人の関係 14

二人の関係 14 ~Vr閣下Rと伴侶Eの物語P2 

  ~~*《自分自身以上に愛するものがあるとき、
                      人は本当に傷つくのだ。》

 
 ――― あんな顔をさせたかったわけじゃ・・・・・。

 迎えの車中の窓から流れる光景に視線を流しながら、ロイは先ほどまでのやりとりを思い返していた。
 鍵を差し出した時、最初から素直に受け取って貰えると思っていたわけじゃない。が、それ以上のエドワードの戸惑いの強さに、思わず焦ってしまったのはロイの方だ。
 ―― 渡さなければ逃られてしまう。
 そんな焦燥が浮かぶほど、エドワードは困り果てた表情をしていた。
 これで最初に鍵を見た時の彼の表情に、喜びの彩を見て取っていなければ、嫌がられていると誤解しそうなほど。エドワードは誰も縋る者もいない迷い子のような顔をして鍵を見つめていたのだ。
 強引に手の平に乗せたのは、ロイの願望の現われだ。
 ――― 本当は彼が落ち着くまで待てば良かったんだろうな。
 いい歳をした大人なのだから、それがどうして出来ないのかと自分を責めても――― 出来なかったのだ。

 『おいおい、相手は初心な初心者だぜ? 手加減してやれよ、ロイ』
 呆れた様にそう話掛けてきた相手の面影を脳裏に浮かべる。
 (そうは言っても・・・、出来なかったんだヒューズ・・・・・)
 『華々しい噂を繰り広げてきたお前とは思えないな』
 そうからかう声には、嬉しそうな感情が滲んで聞こえる。
 (噂は噂だ。お前も知ってるだろ? 
             エドワードとはそう云う関係じゃないんだ)
 『―― いよいよお前も年貢の納め時ってわけだ』
 (―――――― 最後の恋にしたいと思える相手に
                  出会えるとは思わなかったな・・・・・)
 『ヒュ~♪ そこまでお前さんに言わせるとは、さすがエドだ。
  ・・・が、あいつはまだ子供だ。お前さんのようにはいかないさ』
 だから少しは譲歩してやれと言いたいのだろう。
 (ヒューズ・・・、恋に大人も子供も無い。手に入れ、手放さない為に
   必死で足掻くのは、私も同じなのさ)
 大人の余裕を振りかざすゆとりなぞ、欠片も無い。彼が自分を好きだと思っている事に疑いは持ってないが、それが自分と同じ重さかなんて誰にも量れないではないか。気づいたら離れられていた――― そんなことにはなりたくないし、自分が耐えられそうにも無い。
 だから戸惑い蹈鞴を踏んでいるエドワードの手を引っ張るようにして、先へ先へと進もうとしてしまう。掴んだ手を絶対に離さないままに・・・。
 『成る程な・・・・・、お前も必死だってわけだ』
 (そうだ、悪いか?)
 そう開き直るロイに、幻の癖に妙にリアルな仕草で肩を竦めて見せる。
 『別に悪かないぜ? そんだけお前が真剣だってことだ。
 だがな ―― 嫌がる子供に無理強いすれば、痛い思いをするのは
 大人の方だぜ? ま、それもお前さんの良い経験ってわけだ』
 呵呵と笑うヒューズの最後の言葉に、ロイは思わず聞き返してしまう。
 (痛い思い? それは一体、どういうことだ? ヒューズ! おい、)
 

「着きました」
 その声で目が覚める。見れば司令部のエントランスまで来ていた。どうやら少し転寝をしていたようだ。礼を言って車から降りると、もやもやした気持ちを切り替えて職場に入って行く。
 余計な雑念を抱えたまま、職務をこなせるような職場ではないのだから。ほんの少しだけ、気懸かりを落としていった相手を恨みながら・・・。


 ―*―*―

 気懸かりを抱えたままの日々も、然程何事も変わらずに過ぎて行く。
 確かにロイが言った通り、誰もが自分のことで忙しくて他人の事にまで長く関わっていられないのかも知れないな・・・・・。
 と、そんな風にエドワードが思えるようになってきた頃。

 二人はあの日以来特に変わりない付き合い方をしている。お互い忙しい仕事に就いているから、会える時間はその中でやりくりしての短い逢瀬を少しだけ。ここ最近、極力軍の敷地には足を運ばないようにしているから、余計に顔も見ない日が続くのだ。
 だから会えば言葉を交わすより先に、身体を重ねている事の方が多い。
 慌ただしく睦み合って、朝に走り出すように職場へ向かう。
 それを虚しいとか侘しいとか言えないのは、これがエドワードが選んでいる結果だからだ。
 そうならないようにとの申し出を蹴ったままの自分に、そんな日々が不満だなんて言えやしない。


 
「あれ?」
「おっ?」
 資料を受け取り国研へと戻ろうとしていたエドワードは、少し先で数人の軍人達と声を交わしている顔馴染みを見つける。
 向こうもエドワードに気づいたらしく、少し待っててくれとジェスチャーして、自分の配下の者達なのだろうか数言話して手を上げると、エドワードの方へと歩いてくる。
「よ、久しぶりだなぁ」
 トレードマークのタバコには火が点いていない。街での歩きタバコを禁止されたと話していたことがあったからだろうが、タバコは銜えてるんだなぁと妙な感心を抱く。
「ハボック大尉も久しぶり。・・・何か事件か?」
 それにしては切迫した様子は見受けられないがと、思いながらも聞いてみる。
「うんにゃ、ただの査察だ。丁度交代時間だったんで、今からは休憩ってわけだ。エドは頼まれごとか?」
 手に持った封書に目をやって聞いてくる。
「俺も受け取って用も終ったから戻るところ」
「そっか・・・。じゃ、飯でも食わないか? 丁度、昼飯を食べてから戻ろうと思ってたからさ」
 そう言って顎をしゃくると、丁度その先にあるカフェを指す。
「昼? ・・・・・そうだな、俺もまだだったし、食べて帰ろうかな」
 軍と違ってエドワードの職場の食堂は時間が決まっている。今更帰っても食事抜きになるだろう。
「おっしゃ! じゃ決まりな。顔見るの久しぶりだもんなぁ~」
 歩き出しながらそう言うハボックの声には、他意はまるっきり感じられない。それが更にエドワードの気を軽くしてくれる。
「相変わらず忙しいんだって?」
「そうなんだが、もうこれは平素のことだから忙しいって感覚もないがな」
 時間が無いのが普通に感じると云うのも、なかなかに不憫な環境だ。
 がエドワードも似たり寄ったりの暮らしぶりだから、伝えたい事は判る。

 席に着くと「この店で1番ボリュームの有るの2つ!」とハボックがオーダーするのに任せる。彼はエドワードが見かけによらず大喰らいなのを良く知っているメンバーの一人だ。
 料理が来るまで近況話に花を咲かせ、来たら一気に食べ始める。エドワードも慣れてはいるが、改めて見ているとなかなかに凄い食事方法だ。
 ――― そっか、あいつと食べてる時は、結構時間掛けてるから。
 食べるより飲んだり話したりが主流なので、ロイが急いで食事をしている姿をあまり見たことがない。そこまで考えて、自分達がここ最近食事に行った覚えが無いことにも気づいてしまった。エドワードが浮かべた記憶は、今の関係よりも前の時のものだ。
 ――― それも何だかなぁ・・・・・。
 友人関係の時の方が、ゆっくりと時間を過ごしてたと云う事実には少々凹むものがある。
「ん? 食べないのか?」
 急に手が止まったエドワードに、既に食べ終えて一服をしているハボックが窺ってくる。
「・・・結構、量があるからさ」
 食の進まない理由を、そんな風に誤魔化しておく。
「そっか? エド、食が細くなったんじゃないか?」
「もう子供ん時みたいには食べないって」
 良ければと皿を差し出せば、ハボックは遠慮なくとエドワードの残した料理を平らげていく。
 それに苦笑しながら、食後のコーヒーに手を伸ばした。

「ふぅ~さすが腹一杯だ」
 満足そうにフォークを置いて、またタバコに火を点けている。
 そんな変わらぬハボックの様子を、エドワードは目を細めて眺めてた。
 じっと見ていたのが判ったのか、ハボックがエドワードに視線を向けて「?」と怪訝そうな目をした。
「いや、大尉は変わんないなぁ~と思ってさ」
 昔から人好きのするキャラだったが、それが今でも変わらないのが嬉しい。
「それって暗に成長してないとか言ってないだろうな」
 拗ねたような口調をとってはいるが、表情は和んだままだ。
「言ってない言ってない。ちゃんと褒めてるんだって」
「ははは、んなら良いんだけどさ。―― でも、エドは変わったよな・・・」
 改まって言われたセリフにギクリと身体が強張る。
「ん~~~何か、すっげぇ美人さんになった?」
「へ? ・・・・・何だよ、それって」
 構えていたものとは違う返しに、思わずエドワードも気が抜けて噴出してしまう。
「や、本当だって! 前から綺麗な顔した餓鬼だとは思ってたけど、そうだな今は・・・・綺麗な大人って感じ?」
「何だよ、その変な単語」
 くっくっくっと笑を噛み殺してそう言い返すと、「変か~? 俺ボキャブラリー少ないからさ」と悪びれないのが彼らしい。
「変だって! 大体、男に綺麗はないだろぉ?」
 笑を噛み殺しながらそう返すエドワードに、ハボックは何とも言えない微妙な表情で苦笑している。
「・・・・・んだよ?」
 何か自分の言った事でおかしな点でも有ったのだろうか? 
「――― いや、少将も苦労するだろうとな」
 ふぅーと嘆息とタバコの煙とを一緒に吐き出すと云う、余り褒められない行為をするハボックの言葉は、更にエドワードを困惑させる。
「・・・・・何で? そこであいつが困るとかになるわけ?」
 困らせないように細心の注意を払ってきているつもりなのに、それでも配慮が足りないとでも云うのだろうか・・・・・。

 表情を暗くしたエドワードに、ハボックは自分の言い方が拙かった事に気づいて、慌てて言い直してくる。
「おいおい! 妙な方に考えるなよ? 
 俺が言いたいのはだなぁ~、―――――― 美人過ぎる恋人を持つと、
心配が尽きないってことだ」
 呵呵と笑うハボックに、エドワードはぽけっとした表情を浮かべる。
 そのエドワードの表情にハボックの苦笑が更に濃くなる。
 ――― 昔っから自分の事には疎かったもんな・・・。
 自分の怪我にも痛みにも強くなってしまった子供は、大概のことは「大事無い」で済ませて来ている。人が聞いたら目ん玉が飛び出すような事件でも、「命が有るのだから」が基準だとでも云う様に大丈夫だを繰り返す。
 そして今はこれだけ人目を惹き付けている事さえ、本人は全く気づいていないのだ。多分、送られている視線の殆どが好意感情だからだろう。
 エドワードと連れ立って入って1番始めに気づいたのは、訝りと好奇心の混ざった視線と、純粋に驚きや関心の視線だった。
 席に来たウエイトレスなぞ、注文をしているハボックを全く見ないでエドワードを穴が開くほど見つめていたと云うのに――― 本人は至って暢気に躾良くオーダーするハボックを見て待っていた。
 熱い視線は感じると云うが、彼にはそれは適応されないようだ。
 研究職の人間は皆こんなタイプなのか、それともエドワードが特に鈍感な性質なのか・・・・・。多分、後者のような気もするが。
 これでは行き先々で人を吸引し捲くって歩いているんだろうなぁと、簡単に想像できる。エドワードの性格を知っていなければ、嫌味なほどの無関心振りと謗られても仕方が無いくらい・・・・彼は、本当に頓着無い。
 ま、そこら辺がエドワードたる所以だろう。
 が、少しは注意を促しておいてやろう。同棲に持ち込めないで、ヤキモキしている上司の為にも。

「それにそんだけ目立つってのに、本人はとんと頓着してないようだから、恋人としてはヤキモキするのは当然だろ? 俺なら心配で片時も目が離せないだろうなぁ~って思ったわけだ」
 それでなくとも軍の職務は不規則を絵に画いたような職場だ。会えない日や時間の方が多くなる。と云う事は必然的に心配は増えると云う訳でと、えらく力が入った口調で説明してくれる。
「・・・・・ハボック大尉も、・・・不安とかになるのか?」
「俺? そりゃもうめっさ不安になるぜ。やっと念願の彼女が出来たかと思えば、テロだ事件だでデートの予定は悉く潰れるわ、相手が会いたいと思ってくれても傍に入れる予定も立たないときてる商売だからな。
 ――― お蔭で、また振られてよぉ~」
 くくくと涙を飲んで嘆くハボックに、「それはご愁傷さまで・・・」とだけ返して彼の愚痴に付き合った。


 一頻り辛い思いを吐き出したハボックは、すっきりした表情をエドワードに見せてくる。きっと誰かに話を聞いて欲しかったんだな、と内心思い浮かべている辺り、ハボックの目論みは全く外れたようだった。
「ま、俺の事は良いんだよ。何だかんだと、それなりに楽しんでるからな。
 けど、あの人は違うだろ?」
 その「あの人」が誰を指すのかはエドワードにも判った。
「職場の雰囲気とかも考えて、馬鹿なこととかも言ったりしてるけどさ。
 俺、あの人自身が自分の為に・・・ってのは、見たこと無かった。
 ちゃらちゃらして見せてるけど、それって殆ど自分の為って云うより、職場の部下とか住民とのコミニケーションの手段だったりとかだろ?
 自分自身の為に、何かないのかよ?とか思うけど、・・・無かったんだよなぁ~あの人。
 若くして出世頭でさ、任務も成功率のが断然高い。花道のど真ん中を歩いて行ってる人間なのに、それ全部自分の為じゃないわけだ。
 何でここまでしゃかり気にやらなきゃいけないんだって、不真面目な俺なんか思ったりもしたけど・・・・・、要するに器用じゃないんだわ、あの人」
 ハボックの話を黙って聞いていたエドワードは、最後のセリフに思わず瞬きした。
「器用じゃ・・・ない?」
 あの男が? 何でもそつなくこなして、扱いづらい上ともそれなりに付き合いを交わし、さぼり魔だ仕事嫌いだとか部下に貶されているようで、驚くほど信望も人望ある、あの男が?
「器用だったら、とっくに過去は清算してるさ。別にあの人だけの罪ってわけじゃない事件だったんだ。過去は過去、今と未来は別々だ・・・って割り切れる人間は、もうとっくにあの時のことを忘却してるぜ」
 エドワードは視線をテーブルに落として考える。
 確かにイシュバールのことを忘れてない者は、まだまだ多く居るはずだ。
が、彼のようにそれを償う為に今も働きかけようとしている者は、そう多くはないだろう。
 過去は清算され、日々目まぐるしくやってくる今を生きるのに忙しい。
 忘れ薄れるたびに、未来へと思う欲が湧いてくる。
 それが人というイキモノなのだ。

「だから宜しく頼むな」

 思考の中に落ち込んでいたエドワードは、ハボックのそのセリフで視線を上げて戻ってくる。
「・・・・・は?」
 いきなり何を宜しくされれば良いのだろう? 何か考え中に頼まれごとでもしていたのだろうか?
「だから、――― 少将のことだよ」
「・・・・・あいつ?」
「ああ。お前がこっちで暮らすようになってからさ、日に日にあの人、人間らしくなって来てると思ってたんだぜ、俺たち」
「・・・・・」
「会えると判ってる日なんて、朝からテンション高いわ、仕事は速いわ。
 本人は極力出さないってか、最初は自分も気づいてなかったのかも知れないけど、子供みたいに約束を待ち侘びてたようだし」
 その情景を思い出しているのか、ハボックはくっくっくっと笑を零している。
「逆に駄目だった時は、しょげちゃっててさ。な~んか、可愛いよなって。
 俺らじゃ、後ろは固めれるけど、対等に並んで進むってのが出来ないだろ? ・・・・・きっと、ヒューズさんが居なくなってから、ずっと独りで前、睨んでたんだろうな~てな。・・・・・大将が還って来てくれて・・・ほんとに良かったよ」
 ハボックの話からは、彼が本心で語っていることは伝わってくる。
 だから思わずエドワードも聞かずに済ませたいと思っていたことを、口にしてしまったのだ。
「――― 嫌じゃ・・・なかったのか?」
 小さく呟いたつもりだったのに、声は思ったより良く通り、耳にしたハボックが驚いたように見つめ返してくる。
 そんな相手の反応に(言わなければ良かった)とすぐさま後悔したが、
零した言葉は記憶から簡単には消えてくれない。
 気詰まりな気分を味わわせてしまったと反省し始めた頃。
「―― 何で? 大将、俺の話をちゃんと聞いてなかっただろ?」
 こらっ!と口をへの字にして窘めてくるハボックに、呆気に取られた。
「言っただろ? 『良かった』って。・・・まぁ、他所では嫌なことを言ってくる奴がいるかも知れないが、少なくともあの人と周囲の俺らは良かったって心から思ってるぜ?」
 ――― 本当に・・・? 本当に良かったのだろうか・・・・・。
「で、でも俺ら―― 男同士だし・・・」
「ん~~~、そこら辺は個人の趣味じゃないのか? でも、別に少将が女じゃなきゃ嫌だってんじゃないだろ?」
 そのとんでもない発想に、驚きながら大きく頷く。
「じゃ、・・・もしかしたら、少将が『エドが女だったら?』とかって言うのか?」
「え!?」と驚き、全く思い辺りがなかったから、大きく首を横に振る。
「そっか・・・じゃ、問題ないんだろ? 男同士でも。男か女かって以前に、誰が好きなのかって事だろ? どっちも互いで良いと思ってんなら、それが1番良い答えじゃないのか」
 
 ――― 男か女かではなく、誰が好きなのかと云う事・・・・・。

 エドワードはそのシンプルな言葉に、暫し茫然とさせられた。
 どうしてこんな簡単な答えが思いつかなかったのか・・・・・。
 何でも難しく理由や理屈付けをするのは昔からの悪癖だ。
 アルやウィンリー達からも、「情緒が無い」と良く貶されていた。そういうものは、『考える』ものではなく、『感じる』ものだと言ってなかったか?
 好きという感情に理由を探せば、きっと色々と有るのだろう。
 でもそうやって理由付けをするよりも、感情はもっとシンプルでも良いのかも・・・。

 『好きなものは好き』、その一言なのかも知れない。



 ハボックと店で別れ、エドワードは道すがら軽くなった気分に口元を弛める。
 ロイは「変わりない、大丈夫だ」と言ってはくれていたが、それがどこまで本当かが判らず、懐疑的な気持ちで避けてばかりいたが、そんなに気を張らなくても良かったのかも知れない。
 考え過ぎるのは自分の悪い癖だ。
 気楽に楽しむ心境になれるほど、恋の機微には慣れてはいないが、少しだけ肩の力を抜いても良いのかも知れない・・・。

 そんな心境の変化が、久しぶりにエドワードの表情を明るくしたのだった。



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