寶の蔵 幸田露伴著寶の蔵 幸田露伴著 明治25年 學齢館![]() ![]() 先日、髪を切りに行った帰りにふらっと立ち寄った古本屋で手に入れました。値段は忘れました(;´▽`A`` 幸田露伴といえば、明治大正期の文豪であり、日本近代文学の一時代を築いた人物として知られていますが、私は雑学王(!)としての露伴にとても興味があります。内田魯庵とならんで、今「超私的研究」の題材にしたい人物です。 さて、この本、明治中頃の子供向け絵本で、漢字は総ルビ(よみがなつき)、活字も大きく見やすいのですが、当然のことながら旧仮名遣いであるのと、あて字が相当多いので、現代文に親しんでいる我々にはけっこう読みづらいものです。しかしこの言い回しに慣れてくると、これが講談調でけっこう面白い。 タイトルの「寶の蔵」とは、ある翁が持っている巻物のことです。ここにはいろいろな教訓が込められたお話がたくさん書かれており、翁はそれをひもといて子ども達に話して聞かせるわけです。ここで、「はじまり、はじまり」となり、そのあと主に仏教の経典から引いた説話が15本続きます。 それぞれの細かいお話は、儒教あるいは仏教思想に裏打ちされた教訓がわかりやすく示されていますが、それよりも私は、冒頭の翁の 「考ふることハ悟ることの初めなり」 ということば、それを受けた巻末の 「知らるゝことはまことに能く知られたり、されどそれはいまだ悟りたるといふにはあらず」 ということばに、案外近代的な実証主義的思想が見え隠れしているように思えてなりません。 単なる教訓譚に終わらず、「思考する」ことの大切さを説くあたり、やはり彼がすぐれた思想家であり文筆家であったことを証明するものでしょう。そんなに珍しくはないものなのかもしれませんが、私にとっては発見でした。(2004/10/1) |