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ねことパンの日々

ねことパンの日々

アーニー・パイル劇場 斎藤憐著

アーニー・パイル劇場 斎藤憐著 平成10年 ブロンズ新社

アーニー・パイル劇場


不覚にも、こんな本が出版されていたとは知りませんでした。

「アーニー・パイル劇場」とは、有楽町にあった東京宝塚劇場を、米軍やGHQが接収していたときの呼び名です。昭和20年12月24日から昭和30年1月27日まで接収されていたこの劇場は、沖縄で戦死したアメリカの従軍記者アーニー・パイルの名を冠されました。接収の期間中、この劇場には日本人は関係者以外の立ち入りを禁じられ、米軍あるいはGHQ関係者だけのために、さまざまな演目が舞台を彩ったそうです。

膨大な資料によって活写された「アーニー・パイル劇場」のすがたは、戦後日本が立ち直ってゆくさまから、どことなく乖離し、しかしどことなく符合し...と、何やら不思議なミスマッチを醸し出しております。なんてったってここは「日本」ではないわけですから。
そして、ぽろぽろと登場する有名人たち。高峰秀子、美空ひばり、淡谷のり子...。こんな人達までもが、この劇場の舞台を踏んでいたとは。

著者の斎藤憐さんは、あの『上海バンスキング』の原作者でもいらっしゃいます。
語り口が入れ替わり、資料が交錯し、ちょっと食いついていくには大変かもしれませんが、しかしこのほうがむしろ生々しい印象を受けるような気がします。
高慢と卑屈、勝者と敗者、日本とアメリカ、東南アジア...。複雑にからみあう国家、軍隊、文化、そして個々人の人生。そこに正に「生きていた」ひとびとのドキュメンタリー。
近現代史を学ぶひとには、ぜひ読んでおいていただきたい1冊です。
個人的には、ぜひ著者にインタヴューしてみたいと思います!!

そういえば。
自由劇場の最後の「上海バンスキング」を、私、観ましたよ。
よ、よかったです...(T-T) ウルウル

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