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自費出版のリブパブリ2010の日記 [全716件]

2012.02.09楽天プロフィール Add to Google XML

メガバンク、国債暴落に備える対策策定、15年には長期国債利回り3.5%の破局か 
[ 経済 ]  

kawanobu日記/メガバンク、国債暴落に備える対策策定、15年には長期国債利回り3.5%の破局か;ジャンル=経済 画像1

 日本国債の最大の保有者のメガ銀行が、国債価格の暴落に備える危機管理計画を策定しているという。いささか古いが2月2日の朝日新聞朝刊1面トップで報じられた
 急落シナリオに沿った危機管理計画を策定しているのは、三菱UFJ銀行である。昨年末に、初めて作ったという。

◎三菱UFJ銀行が国債急落に備え
 これまで「狼少年」のように国債暴落の危機が指摘されながら、常に悲観シナリオは外れ、現在も10年物長期国債で利回り0.9%台を保っている。よく言われるように製造業はもとより小売りや飲食業も含めて、国内有力企業は海外脱出していて、資金ニーズはないから、国内金融機関は集まった預金の貸出先に難渋している。
 有力な貸出先が個人である住宅ローンで、最近では巨艦店舗を構えて固定費負担の大きいメガバンクまで、0.8%台の変動金利住宅ローンを売り出し始めているほど貸出先に困っている。貸出需要がないのは、預貸率が60%台に低迷していることからも明らかだ。
 そのため運用先として、安全資産とされる日本国債が買われるのである。昨年末現在の国内銀行の国債保有額は163兆円と、1年間で11%も増加している。
 しかし、それがいつまでも続くはずはない。すでに国際収支では貿易赤字が定着化する傾向が見え始めている。銀行・生保という国内金融機関の国債買いの原資である国内貯蓄は枯れ始めようとしているのだ。
 だから考えてみれば、メガバンクが国債急落対策を立て始めているというのは、遅すぎるくらいだ。

◎15年中に国債急落、と三菱UFJは想定
 三菱UFJ銀行の昨年末にまとめた対策は、経済成長率、経常収支、為替など30の指標をチェックし、国債価格の急落につながる変化があれば、保有国債を売却するというものだ。
 それらの指標でも、同銀行が最重視するのは国際収支の経常収支部分で、今のところ巨額な所得収支で貿易赤字を埋め合わせているが、貿易赤字の拡大と所得収支の目減りで、2016年にも経常収支は赤字に転落する、と同銀行は予測している。
 もう1つ、バラマキスト民主党政権は、15年10月に消費税を10%にする法案を今国会に提出しようとしているが、10%に引き上げてもバラマキ福祉に湯水のように使われてしまうので、財政赤字は減らないと見られる。
 マーケットは常に半年から1年先を先取りして動くので、16年を待たずに15年中にも長期国債金利は3.5%に急騰(国債価格は急落)する、と同銀行は見ているようだ。

◎いざとなれば三菱UFJは長期国債3兆円を売却
 その場合、長期国債をできるだけ売却し、低利回りの期間1年以内の短期国債に買い換えるという。同銀行が売却する長期国債は、3兆円ほどに達する。
 さて、そうなると他行はどうするか。横並び意識がひときわ強いサラリーマン国内機関投資家は、ババをつかむまいといっせいに国債売りに回るだろう。
 ちなみに昨年9月末現在の日本国債(748兆円)保有者の内訳を見ると、銀行など38.0%、生損保や年金基金24.6%、公的年金や自治体9.7%、投資信託・ノンバンク5.6%である。つまり国債の4分の3は、横並びのサラリーマン機関投資家が持っているのだ。国債の需給関係が、恐ろしいほどの底の浅いことが分かる。急落に際して買い向かってくれるだろう個人は、たった3.9%なのだ。

◎マーケットの7割は消費税増税は実現しないと推測
 さて前述したように三菱UFJ銀行は、15年10月にも消費税10%増税を予測しているようだが、この想定は正しいだろうか?
 どうやら機関投資家は、消費税の10%増税も怪しんでいるらしい。それを端的に表しているのが、消費者物価に連動して元本が変わる「物価連動国債」の流通利回りだ。
 消費税増税されると消費者物価に、ある程度増税分が転嫁されるから、物価連動国債に物価見通しが織り込まれるはずだ。16年以降に償還を迎える物価連動国債の値動きで弾き出される物価見通しは、直近3カ月で0.2~0.3%上昇なのに、第1次消費税上げの予定される14年と第2次消費税上げとなる15年はたった0.1%の上昇しか見通していないというのだ。
 第1次消費税増税時期の14年4月には3%増税される「はずだ」。すると15年償還の物価連動国債の物価見通しはもっと上昇してよいはずだ。それが、たった0.1%なのだ。
 つまりマーケットは、野田ドジョウ政権の注力する消費税増税は7割方実現しない、と見ているのだそうだ。

◎利回り3.5%は日本のギリシャ化、ポルトガル化
 となると、三菱UFJ銀行の描いたシナリオも絵に描いた餅だ。
 リブパブリは、早ければ再来年の14年にも国債価格の急落が始まる、と見る。仮に現在の0.9%台から3.5%に利回りが上昇すると、財務省は償還に備えて借換債を新規発行しなければならない。それには借換債も、利率を3.5%にしないと買い手がつかない、ということになる。
 この時の利払いに必要な国債費は、今よりも年間で20数兆円も膨らむと計算されている。元本ではなく、利払い費用だけで、これだけの巨額を新たに予算手当てしなければならないのだ。消費税を10%にして、引き上げ額全額を利払いに回しても、とうてい足りない。
 つまり三菱UFJ銀行の想定する国債利回り3.5%というのは、日本のギリシャ化、ポルトガル化に他ならないのだ。
 国債価格の急落、すなわち利回りの急騰がいかに恐ろしいか、分かるだろう。

◎先物市場に上場されているバーチャル債券の利率は6%!!
 そしてさらに言えば、3.5%の利回りは決して非現実的な数字ではない。例えば国債先物市場で、基準になっているバーチャルな10年物債券の利率は6%となっている。これは債券先物市場が創設された時、この利率が当たり前だったからだ。
 したがってこのバーチャル債券の価格は、100円に対して142円近辺になっている。債券バブルと呼ばれる所以だが、逆に言えば長期国債利回りが6%にまで上がってもおかしくない。
 そうなれば、日本の財政は確実に破綻である。
 ちなみにマーケットがパニックになって暴走した時、いかに恐ろしいかは、ヨーロッパの例の他に、わが日本にも過去に例がある。いささか古いが、1987年に起こった「タテホ・ショック」による国債暴落劇である(10年7月23日付日記「財政悪化で債券暴落→IMF管理国家化は杞憂か:タテホ・ショック、債券先物市場」を参照)。

◎ちょっとしたきっかけが市場に雪崩を起こす
 タテホ化学工業(写真)という年売上高わずか200億円程度の中堅企業が、財テクによる債券投資の失敗で、200億円もの損害を出したことが明るみに出たことで、狼狽した機関投資家は債券市場でいっせいに債券売りに走り、数カ月で長期国債利回りが3%前後も急騰したのだ。
 この時、日本経済はバブルに向かう絶好調時で、財政赤字は全く問題にするほどでなかったので、ほどなく国債利回りは通常レベルに戻った。
 しかし国家の借金が220%にもなろうとして、市場が常に国債暴落の懸念を感じている時に、タテホ・ショックのようなパニックに陥れば、もう収拾はつかないだろう。

◎経常収支黒字も直接投資の流出で危うい
 時あたかも、日本国債を長年ファイナンスしてくれていた貿易収支が、ついに昨年、31年ぶりに赤字に転じた。巨額の所得収支の黒字のおかげで、まだ経常収支は9.6兆円の黒字である。
 ところが超円高のせいで製造業のみならず小売業にまで広がった海外投資の積み上げで、直接投資収支は9.3兆円の赤字だ。もうほとんどイーブンである。
 経常収支の膨大な黒字で、国内金融機関は国債を買っていた。これが、間もなく当てにならなくなるのだ。そのせいか、昨年9月末現在の外国人投資家の国債保有割合は8.2%にも増えた。長年、5%近辺に留まっていたから、ギリシャのようには売り込まれない、と見られていたが、今後とも外国人の国債保有割合は増えていくだろうから、こちらも安心できなくなっている。
 つまり1日も早くバラマキスト民主党政権を打倒し、バラマキ廃止はもちろんのこと、社会保障費も含めた厳しい緊縮財政と規制緩和による成長戦略に軸足を移さない限り、消費税増税しても焼け石に水なのである。

昨年の今日の日記:「冬の珍味のフグ、さてなぜシラコのみ食用なのか」




Last updated 2012.02.10 04:39:59



ハエのような世界最小の超小型カエル、パプアニューギニアの熱帯雨林で発見、なぜ?
[ 生物学 ]  

kawanobu日記/ハエのような世界最小の超小型カエル、パプアニューギニアの熱帯雨林で発見、なぜ?;ジャンル=進化生物学、生態学 画像1

 

kawanobu日記/ハエのような世界最小の超小型カエル、パプアニューギニアの熱帯雨林で発見、なぜ?;ジャンル=進化生物学、生態学 画像2


 熱帯雨林は未発見の生物の宝庫、と言われている。1本の大木を隅から隅まで探すと、たいてい新種の昆虫が大量に見つかる。どれだけ生物種がいるのか、誰にも分からない。

◎体長わずか7.7ミリ、10セント硬貨に楽に載る小ささ
 そのため地球上の生物の種数も、はっきりしない。数百万種と言われているのは、名前を付けられたものだけで、最大限に見積もる人は1億種とも指摘する。
 熱帯雨林の農地化と工業化で多数の生物が絶滅しているが、地球上はまだまだ多様性に満ちている。今回、その中に加わった両生類新種は、「世界最小の脊椎動物」の栄冠を受けた。
 その世界最小のカエルは、今年1月11日付のオンライン科学誌『PLoS ONE』誌に、アメリカ、ルイジアナ州立大学などの研究チームが発表した。発見地は、パプアニューギニア南部の熱帯雨林の中である。
 その新種カエル(Paedophryne amauensis、ペドフリネ・アマエンシス)は、実際、驚くほど小さい。体長わずか7.7ミリ(写真上=小さな10セント硬貨の上に載る新種)だ。

◎「最小脊椎動物は水棲」説を覆す発見
 報告者の1人の同大のクリストファー・オースティン准教授によると、ハエのように小さいそのカエルは、皮膚の模様も土のような色をしているため、肉眼でとらえることも難しかったという。現地スタッフとともに、堆く積もった雨林内の木の葉に顔をくっつけるようにして探し、ようやく見つけた個体は素手で採取した。
 カエルを撮影するのも難しく、同准教授が撮影しようとカメラを目の前に構えた時、被写体がすでに逃げてしまった後ということも再三だった。小さくて軽いからなのか、ジャンプ力は驚くべきもので、自分の体長の30倍の距離を跳べる。となると、接写しようと近づけばあっという間に視界から外れてしまうということになる。よくぞ対照物の10セントコインの上に載せられたものだ。
 ちなみにこれまでに確認されていた最小の脊椎生物は、成体メスの体長が7.9ミリの東南アジアに生息する魚類(Paedocypris progenetica、ペドシプリス・プロゲネティカ)だった。以前から、脊椎生物の最小種は、世界最大種(シロナガスクジラ)ととも水棲だとの説が示唆されていたが、今回の発見でその説は覆されたわけだ。最小種が水棲だと信じられていた理由は、後述する。

◎熱帯雨林にはミニ脊椎動物のニッチェあり
 こんなハエのように小さいカエルがなぜ熱帯雨林に生息していたのだろうか?
 いや、むしろ熱帯雨林だから生息できたと考えるべきだろう。小さいので、雨林に堆積した湿った木の葉の下という絶好の隠れ場がある。これがサバンナだったら、あっという間に干物になり、また捕食者に喰われてしまう。自然淘汰の前に、1世代で種の寿命は終わりだろう。
 しかも食物にも事欠かない。大型の捕食者に見過ごされるダニなどの小型の無脊椎動物は熱帯雨林に豊富だからだ。
 熱帯雨林の木の葉の中というニッチェがあるので、小型化への淘汰圧が働き、限度いっぱい小型化したことになる。そのためか単純な骨格を持ち、孵化した時からオタマジャクシではなくカエルの姿をしているという。湿気はあっても水がないから、オタマジャクシ段階を失うように進化したわけだ。

◎超小型種が続々と発見
 そうした生息地が特殊な環境でないことは、パプアニューギニアの熱帯雨林内で、相次いで超小型カエルが見つかっていることからも明らかである。例えば同チームはペドフリネ・アマエンシスの他に、もう1種の極小カエルの新種、ペドシプリス・スウィフトルム(Paedophryne swiftorum)も発見しているからだ。こちらも体長約8.6ミリと、やはり10セント硬貨に載る。
 今回の発見で推定されるのは、地球上には他にも、まだ見つかっていない小型カエルが存在し、落ち葉の上を跳びはねているのだろうという可能性だ。
 実際、ハワイ、ビショップ博物館に所属する脊椎動物学者のフレッド・クラウス博士らのグループも、2011年、パプアニューギニア南東部の別の熱帯雨林で、体長10ミリに満たない超小型カエル2種を見つけている。
 学名をペドシプリス・デコト(Paedophryne dekot写真下)、ペドシプリス・ヴェルルコサ(Paedophryne verrucosa)とそれぞれ命名されたカエルだが、前者の体長はおよそ8.5~9ミリ、後者の体長は平均で8.8~9.3ミリと、やはり超小型だ。ちなみに「デコト」という種小名は、現地語で「とても小さい」という意味だそうだが、ペドシプリス・アマエンシスの発見で、お株を奪われてしまった。

◎脊椎動物のサイズの下限と上限
 さて、それではなぜこんな超小型カエルがパプアニューギニアの熱帯雨林にかくも多数種、生息しているのだろうか。超小型の方が居心地がよいから適応放散した、としか考えられない。
 さらに考察を進める前に、脊椎動物サイズの上限と下限を考えてみよう。
 脊椎動物には、体重を脊椎や脚骨で支えるためにサイズに上限がある(ないのは、重力の影響を受けない海棲のクジラくらいのものだ)。陸上でゴジラのような超大型動物は、支える脚の骨の素材がリン酸カルシウムである限り、どのように強度を高め、また太くしても、支えきれる限界がある。逆に骨を強化しすぎると、その分、関節に負担がかかって、つまりは自重で崩れ落ちてしまうのだ。

◎小型化にも限度があったはずだが
 しかし同時に下限もある。複雑な体制を支える代謝に活発な熱エネルギー産生が必要だが、それには大量の食物が必要だ。
 ただ代謝を抑えて節約するという戦略を採っているのが、両生類や爬虫類などの変温動物だ。それで、周囲の気温が低くなると、休眠したり、ほとんど動かなくなる。夜間の低温時には極端に代謝を落とせる爬虫類などは、同一サイズなら恒温動物である哺乳類の10分の1しか代謝エネルギーを消費しないといわれる。見つかったのが、超小型カエルだったのも、カエルが変温動物だからだ。
 また変温動物、恒温動物にも共通するが、食物の少ない環境では小型化する(ネズミ以上の脊椎動物は逆に大型化することもある)。それも、代謝エネルギーの節約のためだ。
 ただし小型化にも、大型化同様に限度がある。あまり小さくすると、体重に比べて体表面積が極端に大きくなって熱を失いやすいのだ。だから寒い土地には、小型脊椎動物はいない。同一種でも、寒冷地に行けば行くほど、サイズを大型化して、相対的体表面積を小さくしようとしている。生物学で言う「ベルクマンの法則」である。それに反する動物は、淘汰されて生き残れない。

◎さらに未知の超小型カエルの可能性も
 カエルは前記のように変温動物だが、それでも小型化には限度がある。小さくなると、熱を失いやすいから、小型化に歯止めがかかる。温帯にあまり小さなカエルがいないのは、それが理由だ。
 しかし今回のパプアニューギニアのような熱帯雨林の中では、その歯止めは緩和される。
 暑いので、熱を失いにくい。むしろ活動時に過熱し過ぎるのを防ぐには、相対的体表面積はできるだけ大きく、すなわち小型化した方が適応的だ。
 また水棲か準水棲だと、周囲の温度変化がマイルドなので、小型化しても熱を失いにくい。前記のように脊椎動物の世界最小種が水棲だと考えられたのは、そうした理由がある。
 超小型カエルのペドシプリス属がいずれも高湿度の熱帯雨林に暮らしていたのも、うなずけるし、逆に研究者らが予測するように、まだまだ未知の超小型カエルが隠れていると考えられるのである。
 研究者たちによる熱帯雨林の落ち葉の探索は、これからも続く。

昨年の今日の日記:「出版物も超氷河期を裏付けた販売金額・点数減、ローカル言語の日本語を扱う悲劇」


Last updated 2012.02.09 05:42:33

2012.02.08

普天間基地現状固定化が決まる時、防衛相が識見不足の田中直紀の不幸
[ 国内政治 ]  

 

kawanobu日記/普天間基地現状固定化が決まる時、防衛相が識見不足の田中直紀の不幸;ジャンル=政治 画像1

 今、防衛相の田中直紀が国会で野党の集中攻撃でフラフラだ(写真)。いつ、ダウンしてもおかしくない惨状だ。野党、就中、防衛族の多数居る自民党にとって、派閥均衡人事で汚沢派に居るだけで起用された防衛問題の素人の田中など、質問攻めにすれば立ち往生する赤子同然だろう。

◎副大臣が訂正する防衛相答弁
 最初からおかしかった。野田ドジョウ改造内閣で、先の臨時国会の参院で問責決議された一川保夫との交代で起用されて、「伊江島」を「硫黄島」と言い間違え、防衛問題どころか沖縄に関しても全くの素人であることを露呈した。
 通常国会が始まると、野党の質問で南スーダンに派遣する自衛隊の警護はルワンダ軍がすることにすでに決まっているのに、まだ決まっていないと間違え、副大臣の渡辺周が修正した。
 これだけではない。一昨年末にボケ菅内閣で閣議決定した「新防衛大綱」で陸自の定員削減が明記されているのに、増員する意向を表明した。自衛隊の前身は「警察予備隊」だが、これを「警察予備軍」と言い間違え、野次で指摘されると、慌てて言い直した。
 先月31日、参院予算委員会であまりにもお粗末な答弁を連発した後、15分間も無断退席して雲隠れし、帰ってきて詰問されると、風邪薬を飲んでいたと言い訳を言ったが、本当は国会内食堂でコーヒーを飲んでいた。

◎自衛隊の合憲性を答えられない無知
 悲惨だったのは、2日の衆院予算委員会の答弁である。自民党の防衛政策のピカイチである石破茂議員に、憲法9条2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とありながら、なぜ自衛隊があるのかを聞かれて、答えられなかったのだ。困った田中は憲法の条文を読み上げたというのである。
 石破議員は、呆れて憲法起草段階の「芦田修正」にまで遡って解説し、自衛隊が合憲である根拠を教授することになる。
 国会外でも識見不足が露呈し、NHKの番組では、自衛隊を海外に送る際の武器使用基準と武器輸出3原則の問題を言い間違えた。

◎公務員が「投票に行こう」とする呼びかけの是非
 そして例の真部朗・沖縄防衛局長の「選挙講話」問題である。マスコミと地元沖縄県で問題化すると、トカゲの尻尾切りよろしく「不適切」と批判されていた真部氏の更迭にハッスルした。ここが指導力の見せ所と張り切り、3日朝には防衛省幹部に「真部を変えるぞ、後任を決めろ」と命令したが、政務三役会議で渡辺周に諫められ、さらに他の政務官も同調して腰砕けとなった。
 しかも同日の衆院予算委員会に参考人招致された真部氏の答弁で、宜野湾市長選挙に棄権せず投票を、と講話しただけだったことがはっきりした。出馬予定の2人のどちら側にも肩入れした明白な事実はなかったのだ。
 だから真部氏に対して、野党自民党の中谷元議員から、「公務員が『投票に行きましょう』と呼びかけるのは当たり前だ」と激励されている。状況から考えれば、真部氏が共産・社民などから担がれた元市長派ではなく、自民・公明が推薦する方向だった元自民党県議を応援する意図があったのは明らかだが、単に投票に行くように、と講話しただけでは更迭などできっこない。

◎市職労の選挙運動には目をつぶって
 この問題は、共産党の議員が最初に問題化させた。しかし中谷氏によると、共産党の選挙基盤である宜野湾市職員労働組合は、共産・社民などの推薦する元市長への支援を組合員に要請する文書を配っている。このはっきりした公務員の政治活動に目をつぶって、真意は別にしろ真部氏の「一般論」を処分などすれば、片手おちもいいところだ。
 誰かが騒いだから、問題化したからというだけで処分できるのか。もし更迭して、地位保全の仮処分申請がなされれば、地裁で更迭は無効とされるだろう。だから田中以外の政務三役は腰が引けてしまったのである。
 部下を守ろうともしない田中は、防衛省内でも孤立し、すっかり信頼感を失ってしまった。

◎カンニングペーパー差し出す秘書官を更迭の奇っ怪
 このようにちょっと社会科のできる高校生にも劣る見識なので、田中がいつ地雷を踏んでもおかしくない。野党が、田中に集中砲火を浴びせるのも、当然だ。
 これで田中が引責辞職か、参院で問責決議されたら、今度こそ野田ドジョウの任命責任が問われるだろう。
 田中は野党席から「腹話術師か!」と野次られるほど、秘書官の差し出すメモに頼りっぱなしだったが、何をトチ狂ったのか、その萬浪学秘書官を6日付で更迭させている。これは自分が外相だった時、やはりしょっちゅう秘書官を交代させて悪評だったかみさんの田中真紀子の入れ知恵だという噂もある。
 むしろ萬浪氏には、こんなバカに付き合わないでよくなっただけ、清々しているのではないか。

◎普天間基地現状固定化が決まりそうな大事な時期なのに......
 最後に、防衛相の田中抜きで日米間の2+2審議官協議でほとんど決まりかけている普天間基地の現状固定化は、どうするのだろう?
 グアムへの海兵隊8000人の移転は、普天間基地の辺野古沖移設とパッケージだった。アメリカ側はこの規模を縮小する意向だが、これは全体計画の前提が変わったことを意味する。アメリカとしては、いつまでも方針の定まらないバラマキスト民主党政権についにしびれを切らし、普天間基地移設に見切りをつけ、現状のまま固定化させることを決めたのだ。
 当たり前の話だが、アメリカ軍再編の問題について防衛相は責任者の1人である。それなのに、アメリカ国防長官らとコンタクトすらできない。
 前任者の一川ともども大変な時期に、防衛のドシロウトが長に就いている日本。これで国家の体をなしていると言えるのか。
 一刻も早く田中を副大臣の渡辺周に交代させねばならない局面だが、相変わらず野田ドジョウも迷走したままだ。
 この内閣は、間もなく行き詰まりそうである。

昨年の今日の日記:「名古屋市長選・愛知県知事選で渡されたバラマキスト民主党政権への引導」




Last updated 2012.02.08 05:41:37

2012.02.07

シリア制裁決議、ロシア、中国の拒否権で否決。されどアサド政権は先細りへ

kawanobu日記/シリア制裁決議、中ロの拒否権で否決も、アサド政権は先細りへ;ジャンル=現代史 画像1

 

kawanobu日記/シリア制裁決議、中ロの拒否権で否決も、アサド政権は先細りへ;ジャンル=現代史 画像2


 昨年10月に続いてまたしても、国連安保理のシリア、アサド政権制裁決議が葬られた。4日、抵抗するロシアの前に欧米側が譲歩に譲歩を重ねた末、ほとんど骨抜き同然に堕した「アサド政権に反体制派弾圧の停止」を求める決議案が、「それでも」13対2の圧倒的多数「にもかかわらず」否決された(写真上)。

◎常任理事国のロシアと中国のみが反対
 「それでも」と「にもかかわらず」と記したように、これこそ安保理の国連創設以来の矛盾である。この反対国の「2」が、あらゆる決議に拒否権を持つ常任理事国であるロシアと中国だからだ(写真下=決議案反対に挙手する中国の国連大使、李保東)。独裁的・強権的大国2カ国の横車で、当のアラブ諸国の声も封殺する形で残虐な殺戮を続ける独裁政権の延命が許容されてしまった。さながら冷戦時代に戻ってしまったようである。ちなみに昨年10月と異なり、インド、南アフリカなどが中ロの両独裁国・強権国と一線を画して、欧米とアラブ2カ国の提出した決議案に賛成票を投じた。
 先週末のシリア西部ホムスなどで反体制派のデモに、またしてもアサド政権軍が襲いかかり約300人の死者が出た。これでアサド政権軍による弾圧でシリア市民の死者は累計6000人に近づきつつある。

◎ロシアの権益は旧ソ連圏以外で唯一の軍港
 この暴虐に抗議し、アサド政権軍の一部将官を含めて多数の兵士が離反しており、彼らは「自由シリア軍」を編成して、政権軍に対して逆襲に転じている。自由シリア軍による反撃で、政権軍にもかなりの死者が出ている模様だが、NATOによる空爆の支援を受けたリビア反体制派と異なり、自由シリア軍は苦戦している。
 ロシアが一貫してアサド政権に同情的なのは、旧ソ連圏以外、唯一、シリアに海軍基地を設けているからだ。シリアの港湾都市タルトスに、ロシアは空母艦隊も配備している。このロシア海軍基地は、地中海を睨むロシアの中東の橋頭堡であり、地政学的重要性があるからだ。
 またアサド政権には、昨年までに40億ドルもの武器を売却してきており、さらに20億ドルの武器を追加売却するプランがある。アサド政権は、「死の商人」ロシアにとって上得意様なのである。
 スターリニスト中国は、独裁国が民衆革命で倒されることを恐怖しているから、2回目の今回も決議に反対した。

◎アサドの頼みは、中ロとイランだけ
 しかし、これでロシアはアラブ諸国から敵視されるというリスクも犯した。アラブ連盟の総意は、1日も早いアサド政権の退陣と反体制派への政権交代である。今後、アラブ諸国は、国連恃みに足りずと、独自のルートで反体制派への軍事的、経済的支援を進めるだろう。その第一手として、昨年、独裁政権を倒したばかりのチュニジアが、シリアの大使を追放する挙に出た。
 現状のシリアはもはや内戦だと考えるが、内戦はこれからさらに激化する。民衆にしても、アサド政権に虐殺されどおしではない。
 対してアサド政権にすれば、プーチン強権国家ロシアと(シリア国内で存在感は乏しいが)スターリニスト中国、そして隣国のイスラム原理主義国家イランだけが頼みの綱だ。

◎イスラエルのイラン核施設への空爆も間近か
 アサド政権は、ロシアからは武器を、イランからは原油や武器の支援を受けるが、問題は後者のイランで、こちらもEUとアメリカの経済制裁で金づるの原油輸出の道が断たれつつある。しかも核開発を進めるイランには、やはり中ロ両国が障害となって国連が効果的な手を打てないことにいらだつイスラエルが、核関連施設への空爆をちらつかせている。アメリカのパネッタ国防長官も、先日、イスラエルが早ければ今年4月にイランの核施設を攻撃する可能性が高いと述べている。
 EUのイラン産原油の禁輸に対抗して、声高にホルムズ海峡閉鎖を恫喝したイランのイスラム原理主義者どもだが、結局は空威張りで、海峡閉鎖に踏み切れなかった。
 ハメネイを長とするイラン・イスラム原理主義者どもは、自国の軍事力が、圧倒的海軍・空軍力を持つアメリカに対抗できないことを知っているからだ。閉鎖の挙に出れば、アメリカのミサイルと無人機の猛攻撃を受けてイラン全港湾が破壊され、とたんに命脈が断たれるだけだ。

◎アサドは「もって半年」か
 上記のようにイスラエルの空爆も時間の問題となりつつある時、イラン・イスラム原理主義者どもはとうていアサド政権に肩入れする余裕は失っている。
 すると、アサド政権はもはや先細りを免れない。リビアのカダフィ政権と異なるのは、反体制派への空爆の援護がないだけ。しかしカダフィ政権より充実していないカダフィ政権軍の装備は、反体制派の「自由シリア軍」がこれから欧米とアラブ諸国からの援助で増強されていく装備にいずれ追いつかれる。
 つまりアサドの命も、もって半年、というところに追い詰められつつある、と言えるだろう。

◎ヒズボラも窮地に
 自由シリア軍のスポークスマンが、安保理決議に対して中ロが拒否権を行使したことを強く非難したように、もしアサド政権が倒れると、中東の力のバランスは大きく変化する。ロシアとスターリニスト中国は、アラブ諸国で決定的な影響力減退に追い込まれる。
 そしてイスラエルを北のレバノンから脅かすイスラム原理主義テロリストの「ヒズボラ」と南のガザを支配する同じイスラム原理主義テロリストの「ハマス」は、補給路を断たれる。両テロリスト集団に対して、イランがカネと武器を、シリアが補給路と武器を提供していた。両テロリスト集団にとっては、アサド政権こそ最も頼りがいのある後見国家だから、少なくともヒズボラは、戦闘員をアサド政権軍に送っていることが確認されている。アサド政権が倒れれば、ヒズボラも窮地に立つ。

◎「宗派・宗教対立」の禍根を生んだロシアと中国のエゴ
 ただ、シリア内戦でもう1つ問題を複雑にしているのが、「宗派・宗教対立」の側面もあることだ。アサド政権はシリア国内で1割ほどしかいない少数派のイスラム教アラウィ派であり、これにやはり少数派として約1割のキリスト教徒が味方している
 対する自由シリア軍は、多数派のイスラム教スンニ派で構成されている。スンニ派市民がこれだけ虐殺され続けていると、スンニ派市民の怒りは納まらないだろう。自由シリア軍がシリアを制圧すると、アラウィ派市民とキリスト教徒市民が大規模な難民となる懸念がある。
 つまりここまで憎悪が広がる前に、国連はアサド退陣で収拾すべきだったのだ。
 しかし4日の安保理決議が否決されたことで、国連は打つ手を失った。後は暴力で解決されるしかないことになった。
 フランスのアロー国連大使が、安保理決議否決の後に、ロシアと中国を指して「拒否権を発動した国に対して歴史は厳しい評価を下すだろう」と述べたが、両強権・独裁国の責任は歴史によって追及されるだろう。

昨年の今日の日記:「連合赤軍女性トップの永田洋子が病死、スターリンを否定したミニ・スターリン主義者」


Last updated 2012.02.07 06:26:40

2012.02.06

『破壊する創造者』を読む(第9話最終回):我らがゲノムに内在するレトロウイルス
[ 生物学 ]  

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 内在性レトロウイルスのHERV-Kとは、何なのか? 我々のゲノムに居座っているHERV-K(写真上=赤く着色された粒子)と現生人類ホモ・サピエンスとの拡散の関係は前回に述べたが、そこでこの元レトロウイルスがなぜ今日まで我々のゲノムで繁栄しているのかの謎を保留しておいた。

◎HERVはヒトの生存に不可欠な存在か
 不要なもの、有害なものは、自然淘汰でやがては排除されるのではないか。ちょうど真っ暗闇の深海に棲む深海魚が目を失うように。それなのに、第1話で内在性レトロウイルス、すなわちHERVはじめ、レトロウイルス由来と思われる配列が全ゲノムの43%も占めているように、我々のゲノムは外来者を排除しているようには見えない。
 内在性レトロウイルスは、寄生して休眠したガラクタどころか、たんぱく質合成に発現しているものさえある。いやそれどころか、HERV遺伝子の発現の全く見られない体の組織を見つけようとしても難しいほどだ--『破壊する創造者』の著者、フランク・ライアンは、そう言う。
 つまりかつては我々ヒトやそのはるか祖先を激しく攻撃したレトロウイルスも、居候どころか今では恒久的・不可欠な共生関係になってしまっているというわけだ。

◎胎盤形成に関与するHERVも
 ライアンによると、最も新しくヒトのゲノムの中に入り込んだHERV-Kなどは、実は生物進化に深く関わっていた、と様々な研究者とのインタビューも含めて明らかにしていく。例えば宿主生物とレトロウイルスとが共生関係に入り、宿主の核ゲノムと一体化したとすれば、それはもはや新たな種と言えるのではないか、というのだ
 それどころか、胎盤形成に欠かせない役割を果たすほどになっているHERVもある。ちなみに我々ヒトは、哺乳綱の有胎盤類に含まれる。その分類群のとおり、出産の前に母体の中で胎盤が形成される。
 ここから胎児は、母親から栄養を受け取って生長するのだが、その際に1つ大きな問題がある。母体の血液と胎児の血液とは、決して混じり合ってはいけないのだ。混じり合うと、母体にとっても胎児にとっても互いに「異物」だから、母親の血液の側に異物排除の免疫抗原抗体反応が起こるからだ。

◎胎盤の細胞を融合させて胎児と母体の血液混じり合いを遮断
 血液の混じり合いを防ぐために、内膜直下筋層を構成する細胞が融合して、細胞膜がなくなった1枚の薄い膜(合胞体という)になっている。ところが我々脊椎動物には、もともと合胞体を作る遺伝子は備わっていない。だがレトロウイルスなら、できる。例えばAIDSの原因ウイルスであるHIV-1は、哺乳類の細胞を融合させることができるのだ。
 では、どうしてこのような巧みな能力が獲得されたのだろうか。レトロウイルスがかんでいるだろうとは予測できた。そして12年前、アメリカの研究者によって、ヒトゲノムに入り込んでいる内在性レトロウイルスであるHERV-Wの、元はウイルスの殻を作る領域から、細胞を融合させて合胞体を作る遺伝情報が見つけ出したのだ
 レトロウイルスとヒトとの相利共生(互いに利益を得る共生)がヒトの進化に関与していることを示した、これが最初の証拠であった。
 さらにこの3年後には、合胞体生成に重要な役割を果たしているたんぱく質合成のコードがHERV-FRDと呼ばれる内在性レトロウイルスで見つかった。前者のHERV-Wの作るたんぱく質は「シンシチン1」、後者のHERV-FRDのそれは「シンシチン2」と呼ばれる。

◎疾病を予防するレトロウイルスも
 まだ役割はよく分かっていないが、HERVファミリーの中にはヒトの脳内でも活発に発現し、シンシチンたんぱく質を盛んに生成しているものもあるという研究もある。特に健常者の脳内ではそうなのだが、統合失調症患者と双極性障害患者ではそうではないという。精神性疾患から、HERVがヒトを守ってくれている可能性も指摘されるのだ。
 さらに全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患を防ぐ働きもしているらしい。自己免疫疾患の発症には、ウイルスが関与していることは広く知られるようになったが(例えば俗に「小児糖尿病」と呼ばれる1型糖尿病も自己免疫疾患だが、これはウイルス感染による)、その発症を防ぐ役割もしている形跡がある。
 せっかく新宿主を得て、そのゲノムの中に安住の地を見出し、宿主とともに繁栄しているHERVにとって、宿主個体の健康は必須である。個体が死ねば、自分たちも一貫の終わりだからだ。

◎時には発がんの悪さもするが
 ただし当然のことながら、いいことばかりでもない。HERVは逆転写酵素を持っているので、いつでもゲノムの外に飛び出し、また内部に入り込める。
 つまりヒトのゲノムを、(意思は持っていないけれども)自由にいじれるわけだ。たまたまがん抑制たんぱく質、逆の発がんたんぱく質を作る遺伝領域に入り込むと発がんの引き金を引く可能性があるということだ。無害だった領域を切り貼りして、発がん性たんぱく質を合成させることもあり得る。HERVだけでなく、子宮頸がんを起こすパピローマウイルスなども含め、がん症例の20%はウイルス絡みだとされる
 実際、最も新しい感染者であるHERV-Kの一部遺伝子が、様々な兆候から発がんに関与している疑いは濃厚になっているという。だからと言って、生殖細胞のゲノムにも入り込んだHERV-Kなどをもはや追い出すことはできない。追い出せば、別の不都合が生じるのは間違いない。何しろ10万年前後もヒトと共存してきているのだから。

◎人類史では負の効果を及ぼさなかったHERV
 ただ、ものは考えようである。がんの多くは、個体の老化に伴う疾病だ。小児がん、子宮頸がんを含む一部の子宮がん、乳がんなどは、若くして患者の命を奪い、残された家族に深い悲しみをもたらす憎むべきがんだが、そうした一部を除いたほとんどのがんは、個体が再生産能力を失った後に発症する。
 であるとすれば、宿主個体にとってもHERVにとっても、自分の遺伝子は確実に次世代に受け渡されているわけだから、もう宿主が死んでも生物としての役割は十分終えていることになる。むしろそれ以前に宿主は、HERV-Kなど内在性レトロウイルスから十分な利益を受けており、その不都合を埋め合わせて余りあると言えるかもしれないのだ。
 さらにがんが発症する再生産能力を失った年齢の個体は、人類史の99.8%を占める農耕開始以前の旧石器時代にあっては、ほとんど死亡していた。旧石器人にあっては、「がん」という病気はほとんど存在しなかったのである。それ以前に、様々な感染症で死亡していたから。つまりHERVのマイナス効果は、人類においても事実上存在しなかった。
 だから我々のゲノムの中で、HERVは生き続けたのだろう。

◎最後に蛇足的な呟きを
 以下は、本シリーズを書いてきたリブパブリの蛇足的な感慨である。あくまでも個人的な思いなので、中には承服できないという方もおられるだろうが、ご寛恕を。
 リブパブリは思うのだが、人間はやたらと長生きしたいと思うべきではない。自分が生涯で何かを十分にやり終えたと思えば、がんに遭ってもそれが天命と知るべきではなかろうか。悔いを残して死にたくはないが、社会に貢献もせず、ダラダラとただ生き延びることは生物の本性に反するし、後世代の負担になるだけだ。
 特に思索を奪われた痴呆になってまで生きたいとは、決して思わない。
 その点で、オーストラリア生まれでイギリスの考古学界で活躍し、現代考古学にもなお深い影響力を残しているゴードン・チャイルド(写真中央=オークニー諸島の新石器時代集落址スカラ・ブレで、はスカラ・ブレ遺跡)の生き方に深く共感するのである。
(完=9話にわたっての長い間のご愛読ありがとうございました)

☆これまでの「『破壊する創造者』を読む」シリーズ日記
▼12年2月4日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第8話):現生人類の世界制覇を促したもの」
▼12年2月2日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第7話):新種を生み出す異種交配、ヒトも?」
▼12年1月31日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第6話):ミトコンドリアとの共生にも関与した?ウイルス」
▼12年1月29日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第5話):遺伝子を他種に移動させるウイルスとウミウシ」
▼12年1月27日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第4話):鳥インフルエンザはパンデミックを起こさない!?」
▼12年1月25日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第3話):サルと平和的に共生していたHIV」
▼12年1月23日付日記:『破壊する創造者』を読む(第2話):共生者としてのレトロウイルス」
▼12年1月20日付日記:「ウイルス像を一変させる刺激的書物『破壊する創造者』を読む(第1話)」

昨年の今日の日記:「30センチもの長大な口吻を持つ蛾とこれまた長大な蜜までの道=距を持つ奇天烈ランとの共進化」


Last updated 2012.02.06 06:35:55

2012.02.05

あと金環食まで4カ月弱!! 生きているうちに観られる最後の機会かも
[ 天文学 ]  

kawanobu日記/あと金環食まで4カ月弱!! 生きているうちに観られる最後の機械かも;ジャンル=天文学 画像1

kawanobu日記/あと金環食まで4カ月弱!! 生きているうちに観られる最後の機械かも;ジャンル=天文学 画像2


 天文ファンにはとうにご存知だろうが、今年5月21日に国内で25年ぶりの天体ショーがある。金環食が見られるのだ(写真上)。

◎8000万人に観望のチャンス!!
 勤め人には辛いところだが、今回の観測条件は抜群によい。東京では午前7時31分から始まり37分まで、実に6分間も続くのだ。こんな長時間続くのは、滅多にない。現在生きている日本人は、誰1人、これほどの長時間の金環食を観望したことがないはずだ。
 しかも南九州から始まり、四国のほぼ全島、京都・大阪など近畿圏のほとんど、名古屋を中心にした中部圏の3分の2、そして関東全域と福島県の南部まで見られる。
 東西に走る、金環食の見られる帯状の観望可能帯域の真ん中に、東京は位置する。だから東京は最も長い6分間という観望機会となるのだ。帯の北端に位置する京都は、たった1分間だ。
 それでも人口稠密な太平洋ベルト地帯を、観望可能帯は横断している。それだけに日本人の3分の2に当たる約8000万人が観測可能だ。こんな機会もまた、滅多にない。

◎20世紀は離島でばっかし
 日本で金環食の観測機会は、むろん21世紀になって初めてのことだ。20世紀では、100年間に6回あったが、すべて離島だった。1915年小笠原、37年小笠原、48年礼文島(北海道)、55年八重山諸島(沖縄)、58年西南諸島・伊豆諸島、87年沖縄本島、だった。これほど見事に人口稠密地帯を回避した天文ショーは、そうはないだろう。
 次は2030年の北海道だというから、これだって離島。金環食の神さまは、よほど恥ずかしがりなのか、3大都市圏がお嫌いらしい。
 だから天文ファンは、5月21日を手ぐすねひいて待っている。09年に南西諸島の一部で皆既日食が見られたが、宿泊施設の乏しい観望可能地だったため、この時1泊30万円なんていうトンでもない高値の宿泊施設も出たといわれる。それでいてはるばる押しかけた天文ファンに待っていたのは、悪天候だった。
 今回の金環食は、梅雨入りの前に起こるだけに、期待感が高まる。

◎太陽の大きさを測る好機
 今回、観測条件がいいだけに、太陽の直径を正確に測れる絶好の機会、と天文学者も期待する。探査機が飛び交う今日でも、太陽の大きさには500メートルもの誤差範囲でしか分からない。
 そこで金環食帯とその外れ(ここはかなり太陽の欠けた部分日食になる)の境界線、つまり「限界線」がどこを通ったかを調べて太陽の大きさを逆算しようというのだ
 限界線は、西は熊本県、東は福島県北部まで通る。地元の科学館などが小中学生に呼びかけて観測を呼びかけているのも、多数の目が期待できるからだ。

◎太陽と月のサイズ、太陽-地球と地球-月の距離の絶妙のバランス
 さて太陽の全面に月が通って太陽を隠す日食でも、時には皆既食となり、時には金環食になるのは、月と地球の軌道が関係している。太陽の周りを周回する地球の軌道も、地球を周回する月の軌道も、いずれも真円ではなく楕円だ。そのために月と太陽の相対的大きさが微妙に変わるのだ。
 しかし逆に言えば、太陽系で金環食も皆既食も両方とも観られるのは太陽と月のサイズ、それに月の軌道と地球軌道が絶妙にバランスしているから、とも言える。大まかに言えば、太陽は月の400倍大きく、地球からの距離は月よりも400倍遠い。だから両方、観られる。こんな好条件の惑星なんて、宇宙でもそうはないだろう。
 例えば、今の月を衛星に持つ地球が火星のように遠いか金星のように近ければ、いずれかしか観られない。また月軌道が今の位置になければ、やはりどちらかである。さらに言えば、母惑星に比べて太陽系内では異常に大きい衛星の月を持っていることも、両方観られる条件の1つだろう。

◎遠い将来には観られなくなる皆既食
 現在、地球大のサイズを持った太陽系外の惑星系探しが進んでいて、約3000個の系外惑星が見つかっているが、こうした条件の惑星はまだ確定されていない。地球はある程度、特殊な存在のようだ。
 ただし、皆既食が観られるのは今のうちだけだ。現在、月は地球の潮汐の影響で毎年約4センチずつ遠ざかっているからだ。遠い将来、月の見かけの大きさは小さくなり、観られる日食は金環食と部分食だけになる。
 逆に太古の恐竜は、意識はなかったはずだが、今より頻繁に起こった皆既食に恐れおおのいたに違いない。
 写真下は、1571年にアントワーヌ・カロンに描かれた「日食を観測する天文学者」(タイトルは通称で、最初の絵の名前は伝えられていない)。コロナが見えるから、これは皆既食であったのだろう。なおアントワーヌ・カロンは、フランス、ヴァロワ朝のアンリ2世の王妃カトリーヌ・ド・メディシスに寵愛された宮廷画家。

昨年の今日の日記:「再論『日本の山野に野生オオカミの復活を願う』、はたして生態系を壊すのか」


Last updated 2012.02.05 13:17:04

2012.02.03

『破壊する創造者』を読む(第8話):現生人類の世界制覇を促したもの
[ 生物学 ]  

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 我々現生人類、ホモ・サピエンスは、考古学、古人類学、そして遺伝学の研究成果から、20万年前頃にアフリカで誕生し、その後7~8万年前頃に紅海南部の現バブ・エル・マンデブ海峡を突破して西アジアに進出したと考えられている。

◎遺伝的多様性の少ない現代人
 つまり我々ホモ・サピエンスは、有名な北京原人ともジャワ原人とも無関係なアフリカ人だったのである。それに異論を唱える研究者は、今では(中国の古い一部研究者を除くと)ほとんどいない。
 ホモ・サピエンスは、最も近い親類種である現生チンパンジーと比べると、驚くほど遺伝的多様性が少ないことも分かっている。見たところ我々にはどこのチンパンジーも同じように見えるが、個体群間での遺伝的差違は、白人と黒人との間よりもずっと大きい。しかも遺伝的多様性の少なさから、我々はかつて1度大きく人口を減らし、数百人、数千人レベルから再拡大したらしいことも分かっている。
 その差は、約800万年に及ぶと見られるチンパンジーの歴史とたかだか20万年しかない我々との歴史の差以上の違いとも言える。

◎西アジアへの拡散はトバ山噴火の前
 上記のようにホモ・サピエンスの歴史について異論はないが、それでは、なぜ西アジアへの拡散が7~8万年前頃までなされなかったのか。なぜアフリカに10数万年間もグズグズしていたのか。
 これについては、明快な解は、まだない。このシナリオの粗筋を描いたイギリスの考古学者ポール・メラーズ(写真上)も、その理由は不明としている。
 しかし『破壊する創造者』を読んで、現生人類ホモ・サピエンスの全世界制覇のシナリオの新たな着想を得た。
 ちなみにリブパブリは、今から4年半前にあるブログで、7.3万年前のスマトラ島トバ山の大爆発が1つのきっかけではなかったかという日記を書いたことがある。しかしその後、ホモ・サピエンスの西アジアへの拡散はもっと早かったという調査結果が発表され、今はこのシナリオも再考を余儀なくされている。

◎ゲノムの半数近いガラクタ遺伝子はなぜ排除されなかったのか
 『破壊する創造者』で目を啓かされた点はいくつもあるが、中でも印象に深く残ったのは、内在性レトロウイルス、すなわちHERVの存在である。これが、我々の全ゲノムの約9%を占めていることは第1話で簡単に紹介した。レトロウイルスの断片らしい配列(LINEとSINE)も含めると43%にもなる。
 これほどたくさんの配列を我々が抱えているのは、それだけ過去に無数のレトロウイルスの攻撃を受けたとの証しだと言える。しかし、レトロウイルスが我々の生殖細胞に入り込んでも、それが有害無益なものであれば、自然淘汰をへて、いずれ排除されるだろう。それでもたくさんの「ガラクタ」配列を抱え込んでいるのは、何かメリットがあるのではないか。

◎最も新しいレトロウイルス感染の名残HERV-K
 その謎の考察は第9話日記に譲ることにするが、謎を解く突破口になったのが、1986年に発見された内在性レトロウイルスに「HERV-K」(写真中央=赤く着色されている粒子)である。HERV-Kは、HIVを除けば、ヒトに感染した最も新しいレトロウイルスの名残であり、今では温和しく我々のゲノムに納まっている。
 このウイルスが元はどの動物から来たのかわからないが、HERV-Kにとってヒトに感染したのは大成功であった。何しろ今や70億人にまで個体数を増やしたヒトに共生し、しかも1人は60兆個もの細胞から構成されているのだ。これだけ数を増やせたレトロウイルスは、他のいかなる動物に感染する仲間も「繁栄」していると言えるだろう。
 さて、このHERV-Kである。個体間での変異がほとんどないので、起源動物は分からないが、ヒトに感染したのはおそらくつい最近のこと--と言っても10万年前前後--だったと思われる。

◎致死的だったか? 現生人類を襲ったレトロウイルス
 その最初の感染、未知のレトロウイルスと現生人類ホモ・サピエンスの最初のコンタクトがどのようなものであったかは、1981年にAIDSが初めて確認された初源期のことを思い出せばよい。その時、治療方法がなかったこともあり、致死率は98%にも達したとされる。サルから新たな宿主を得たHIVは、新宿主のヒトに激しい攻撃を加えたのである。
 HERV-Kの基になったレトロウイルスは、性交を通じてアフリカのホモ・サピエンスに瞬く間に広がったに違いない。それは必殺の時限爆弾だった。数年という潜伏期をへて、突然に牙を剥いたレトロウイルスによる日和見感染で、感染者はバタバタと死んでいったに違いない。
 1つの集団で成人が死に絶えれば、子どもも生き残れない。ホモ・サピエンスのバンド(血縁で結ばれた単位行動集団)は、全滅に近いことになったことは想像に難くない。

◎生き残った集団に開かれた広大な新天地
 しかし、ここで思い出していただきたいのは、我々ホモ・サピエンスは有性生殖をするということだ。そのおかげで、生殖的に隔離された少数集団というボトルネックをくぐり抜けた末に、我らが従兄弟のチンパンジーなどと比べるとはるかに遺伝的多様性が乏しいけれども、最低限の多様性が生まれた。
 だからもしアフリカのあるバンドに、この恐ろしいレトロウイルスに抵抗性を持った集団がいたとしたら、どうだろうか--。レトロウイルスには感染しただろうが、発病はせず、レトロウイルスは内在性レトロウイルス化してHERV-Kになった。
 生き残ったバンドにとって、野生動物が豊かなアフリカ全大陸は無人の処女地のようなものとなった。
 一般に環境収容力というタガをはめられた狩猟採集民は人口はほとんど増やせないが、無人の処女地に進出した場合は、2~3%という農耕民並みの人口増加率を示すと言われる。人口が増えれば、新たな狩猟採集の土地が必要となる。

◎バブ・エル・マンデブ海峡の突破
 しかも彼らは、長距離交易網、装身具、発達した石器・骨器など文化的な現代化もすでに達成していたのだ。
 爆発的に人口を増やし、増えた人口を養うためにバンドは次々と分裂して、それぞれ新天地を求めて分布域を広げ、ついには1つ、また1つと、次々とバンドがバブ・エル・マンデブ海峡も越え、アデンから西アジアに足を踏み入れたに違いない。
 バブ・エル・マンデブ海峡(写真下)は、現在でも海峡の幅は30キロほどしかないが、氷河期で海水面が低下していた時は、もっと幅が狭く、ひょっとすると歩いて渡れるくらいに狭まっていたかもしれない。
 たどりついた西アジアの行く手には西のヨーロッパにはネアンデルタール人が、東のアジアにはデニーソヴァ人がいた。彼らは、そこで異種交配をしつつ、優れた文化で分布域を拡大し続け、ついに4.5万年前にはオーストラリアにも渡った--のではなかろうか。

◎「夢のない」ストーリーも
 上記のシナリオは、リブパブリの頭の中だけの思考に留まる。あるいはまだ知られていないもっと別の要因があるのか、そもそも何の要因もなく、ただ人口が増えたからはみ出されたバンドが西アジアに進出したという夢のないストーリーだってあり得る
 生物にドラマはめったにないので、実際は「夢のないストーリー」のとおりだったかもしれないが。
(この項、続く)

☆これまでの「『破壊する創造者』を読む」シリーズ日記
▼12年2月2日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第7話):新種を生み出す異種交配、ヒトも?」
▼12年1月31日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第6話):ミトコンドリアとの共生にも関与した?ウイルス」
▼12年1月29日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第5話):遺伝子を他種に移動させるウイルスとウミウシ」
▼12年1月27日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第4話):鳥インフルエンザはパンデミックを起こさない!?」
▼12年1月25日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第3話):サルと平和的に共生していたHIV」
▼12年1月23日付日記:『破壊する創造者』を読む(第2話):共生者としてのレトロウイルス」
▼12年1月20日付日記:「ウイルス像を一変させる刺激的書物『破壊する創造者』を読む(第1話)」

昨年の今日の日記:「大相撲八百長騒動、そして新段階に入ったエジプト革命」



Last updated 2012.02.04 04:24:09

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