


確かにライオンのメスは、集団で狩りをする。しかし連係プレーが悪く、獲物を取
り逃がすこともしばしばで、取り囲んだとしても、攻撃して仕留めるのは単独のメス
だ。事実上、単独狩りに等しいから、しばしば獲物を取り逃がすのだ。
◎集団だと狩りが成功しやすいわけではない
長い間、集団狩猟と考えられたのは、1頭が仕留めた獲物に、次の瞬間、たくさん
のメスがいっせいに食らいつくからだ。見かけ上、集団での狩猟のように見えるだけ
なのだ。
次に大型動物、例えば時にはゾウですら襲えるのは、群れを作るメリットかもしれ
ない。しかし群れであれば、仕留めた大型草食動物を分け合わないといけない。その
上、狩りに参加しないオスが、まず上等な部分を先に食う。1頭当たりの分け前は、
小さくなる。
それならヒョウやチーターのように、単独の狩りであっても、中型の羚羊類などを
標的にした方がよほど効率がいい。
だから別の説明が必要である。群れを作るという行動は、それなりの理由がなけれ
ば、進化するはずはない。
どうもそれは、生存機会が高まるかららしいのだ。長い野外観察研究によって、常
に水の得られる水場をテリトリー内に持つプライドの方が、そうでないプライドより
も生まれた仔の生存確率が高まることが分かってきた。
◎生存確率が上がるうえ、離れオスから仔とメスを守るにも有利
水場は、ライオン自身にとっても大切だが、もっと重要なのは、そこに餌となる草
食獣がたくさん集まってくることだ。メスライオンたちは水場の草むらに隠れて獲物
を待ち伏せし、そこで水を飲みに来た草食動物を襲って餌にする。獲物を捕りやすい
、したがってメスは栄養が良く、仔にもいつも乳や肉を与えられる。生存確率が上が
るのは、当然なのだ。
テリトリー防衛のためには、1頭よりも複数でいた方が都合がいい。
さらにもう1つ重要なメリットとして、交尾したオス以外から自分の仔を守るのに
都合がいいことがある。
前述したようにサバンナには、離れオスが常にプライドを乗っ取ろうと虎視眈々と
機会をうかがっている。乗っ取られたら、大変だ。生後7、8カ月以内の仔は、すべ
て食い殺されてしまう(
写真上)。
凄惨な子殺しを行うのは、子育て中のメスは発情しないからだ。乗っ取りオスにと
って自分の遺伝子を残すために、追い出した前のオスの仔を殺さざるをえない。観察
によれば、ライオンの仔の死亡原因でダントツなのは、他のオスに殺されたことだと
いう。
◎一見ぐうたら、しかし現実は厳しく、やがては野垂れ死に
狩りに参加しないぐうたらオスにとって、自分の遺伝子を半分受け継いだ仔、そし
てその親であるメスを、離れオスから守ることが絶対に必要だ。群れの防衛には、オ
スだけではなくメスも加わる。
だから群れを作るのだ。
単独性のチーターやヒョウは、同種のオスから仔を襲われる機会は少なく、ライオ
ンやハイエナが主な天敵となる。群れで防衛できないから、チーターは頻繁に巣穴を
変えるし、ヒョウは木の上で子育てする。
一見、ぐうたらに見えるオスライオンも、群れの防衛という危険で重要な任務があ
るから、実は楽ではない。年齢を重ねて体力が衰えたら、まず間違いなく群れを追い
出される。そうなると、獲物を獲ってくれるメスがいないので、やがて野垂れ死にす
るしかない。観察によると、プライドの中で君臨できるのは、たった2、3年だとい
う。
◎メスに選んでもらうために発達したオスのたてがみ
生物個体にとって自分の遺伝子を残すことは、最大の関心事だ。だからプライドを
襲う方も守る方も、命がけである。多くの動物に共通するが、オスにとって重要なの
は、どうやったらメスに選んでもらえるか、だ。
鳥類は、派手な羽毛を発達させてメスを誘う。派手であることは、捕食者にそれだ
け目立ちやすく、生存上不利だが、メスにとってみれば、そのオスはそうしたハンデ
を乗り越えられるだけの頑健さと健康であることを見分ける目安になる。つまり優良
な遺伝子を持っている、と推定できるのだ。だから派手なオスの方がメスに選ばれや
すく、それだけ自分の遺伝子を残せる。そのために派手さは、さらに進化していくこ
とになる。これが、ダーウィンが初めて気がついた性選択のメカニズムなのだ。
ライオンも同じである。仔を守れるとメスに思ってもらい、選んでもらうためには
、オスは自分が強く、健康であることを誇示しなければならない。
そのディスプレー材料が、オスライオンにだけあるたてがみなのである。たてがみ
が濃く、かつフサフサと豊かであればあるほど、メスにもてることが実験的に確かめ
られている。
かくてネコ科動物でもライオンのオスにだけ、たてがみが発達した。これも群居性
の副産物であろう。
◎氷河時代にはヨーロッパにも人の身近にいた
百獣の王と畏怖されるライオンは、今、東アフリカと南アフリカ、そしてわずかに
インドにしか残っていない。かつてはユーラシア大陸に広く分布していた。
3万5000年前のフランスのショーヴェ洞窟には、ライオンの壁画(
写真中央)
が残されていることからも、氷河時代のヨーロッパにもいたことが分かる。その他、
アッシリア文明のアッシュールバニパル王のライオン狩りレリーフ(
写真下)などの
例のように、ライオンはよく表現される。中東にも、数千年前まではライオンがいた
のだ。
現生のライオンでアフリカ外ではインドに残るが、それもわずか数百頭であり、個
体数のより多いトラとも競合する。
そしてこれだけ個体数が少なくなると、近親交配のケースが大部分になるから、お
そらくアジアにわずかに残ったライオンは遠からず絶滅するだろう。
やはり野生のライオンを間近で見てみたいという気がつのる。
昨年の今日の日記:「中国漁船衝突事件のユーチューブ投稿した海保保安官は逮捕状
なしでの違法拘束、許されぬ人権蹂躙」
Last updated
2011.11.13 06:10:08