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自費出版のリブパブリ2010の日記

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2012.02.03 楽天プロフィール Add to Google XML

『破壊する創造者』を読む(第8話):現生人類の世界制覇を促したもの
[ 生物学 ]    

kawanobu日記/『破壊する創造者』を読む(第8話):現生人類の世界制覇を促したもの;ジャンル=生物学 画像1

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 我々現生人類、ホモ・サピエンスは、考古学、古人類学、そして遺伝学の研究成果から、20万年前頃にアフリカで誕生し、その後7~8万年前頃に紅海南部の現バブ・エル・マンデブ海峡を突破して西アジアに進出したと考えられている。

◎遺伝的多様性の少ない現代人
 つまり我々ホモ・サピエンスは、有名な北京原人ともジャワ原人とも無関係なアフリカ人だったのである。それに異論を唱える研究者は、今では(中国の古い一部研究者を除くと)ほとんどいない。
 ホモ・サピエンスは、最も近い親類種である現生チンパンジーと比べると、驚くほど遺伝的多様性が少ないことも分かっている。見たところ我々にはどこのチンパンジーも同じように見えるが、個体群間での遺伝的差違は、白人と黒人との間よりもずっと大きい。しかも遺伝的多様性の少なさから、我々はかつて1度大きく人口を減らし、数百人、数千人レベルから再拡大したらしいことも分かっている。
 その差は、約800万年に及ぶと見られるチンパンジーの歴史とたかだか20万年しかない我々との歴史の差以上の違いとも言える。

◎西アジアへの拡散はトバ山噴火の前
 上記のようにホモ・サピエンスの歴史について異論はないが、それでは、なぜ西アジアへの拡散が7~8万年前頃までなされなかったのか。なぜアフリカに10数万年間もグズグズしていたのか。
 これについては、明快な解は、まだない。このシナリオの粗筋を描いたイギリスの考古学者ポール・メラーズ(写真上)も、その理由は不明としている。
 しかし『破壊する創造者』を読んで、現生人類ホモ・サピエンスの全世界制覇のシナリオの新たな着想を得た。
 ちなみにリブパブリは、今から4年半前にあるブログで、7.3万年前のスマトラ島トバ山の大爆発が1つのきっかけではなかったかという日記を書いたことがある。しかしその後、ホモ・サピエンスの西アジアへの拡散はもっと早かったという調査結果が発表され、今はこのシナリオも再考を余儀なくされている。

◎ゲノムの半数近いガラクタ遺伝子はなぜ排除されなかったのか
 『破壊する創造者』で目を啓かされた点はいくつもあるが、中でも印象に深く残ったのは、内在性レトロウイルス、すなわちHERVの存在である。これが、我々の全ゲノムの約9%を占めていることは第1話で簡単に紹介した。レトロウイルスの断片らしい配列(LINEとSINE)も含めると43%にもなる。
 これほどたくさんの配列を我々が抱えているのは、それだけ過去に無数のレトロウイルスの攻撃を受けたとの証しだと言える。しかし、レトロウイルスが我々の生殖細胞に入り込んでも、それが有害無益なものであれば、自然淘汰をへて、いずれ排除されるだろう。それでもたくさんの「ガラクタ」配列を抱え込んでいるのは、何かメリットがあるのではないか。

◎最も新しいレトロウイルス感染の名残HERV-K
 その謎の考察は第9話日記に譲ることにするが、謎を解く突破口になったのが、1986年に発見された内在性レトロウイルスに「HERV-K」(写真中央=赤く着色されている粒子)である。HERV-Kは、HIVを除けば、ヒトに感染した最も新しいレトロウイルスの名残であり、今では温和しく我々のゲノムに納まっている。
 このウイルスが元はどの動物から来たのかわからないが、HERV-Kにとってヒトに感染したのは大成功であった。何しろ今や70億人にまで個体数を増やしたヒトに共生し、しかも1人は60兆個もの細胞から構成されているのだ。これだけ数を増やせたレトロウイルスは、他のいかなる動物に感染する仲間も「繁栄」していると言えるだろう。
 さて、このHERV-Kである。個体間での変異がほとんどないので、起源動物は分からないが、ヒトに感染したのはおそらくつい最近のこと--と言っても10万年前前後--だったと思われる。

◎致死的だったか? 現生人類を襲ったレトロウイルス
 その最初の感染、未知のレトロウイルスと現生人類ホモ・サピエンスの最初のコンタクトがどのようなものであったかは、1981年にAIDSが初めて確認された初源期のことを思い出せばよい。その時、治療方法がなかったこともあり、致死率は98%にも達したとされる。サルから新たな宿主を得たHIVは、新宿主のヒトに激しい攻撃を加えたのである。
 HERV-Kの基になったレトロウイルスは、性交を通じてアフリカのホモ・サピエンスに瞬く間に広がったに違いない。それは必殺の時限爆弾だった。数年という潜伏期をへて、突然に牙を剥いたレトロウイルスによる日和見感染で、感染者はバタバタと死んでいったに違いない。
 1つの集団で成人が死に絶えれば、子どもも生き残れない。ホモ・サピエンスのバンド(血縁で結ばれた単位行動集団)は、全滅に近いことになったことは想像に難くない。

◎生き残った集団に開かれた広大な新天地
 しかし、ここで思い出していただきたいのは、我々ホモ・サピエンスは有性生殖をするということだ。そのおかげで、生殖的に隔離された少数集団というボトルネックをくぐり抜けた末に、我らが従兄弟のチンパンジーなどと比べるとはるかに遺伝的多様性が乏しいけれども、最低限の多様性が生まれた。
 だからもしアフリカのあるバンドに、この恐ろしいレトロウイルスに抵抗性を持った集団がいたとしたら、どうだろうか--。レトロウイルスには感染しただろうが、発病はせず、レトロウイルスは内在性レトロウイルス化してHERV-Kになった。
 生き残ったバンドにとって、野生動物が豊かなアフリカ全大陸は無人の処女地のようなものとなった。
 一般に環境収容力というタガをはめられた狩猟採集民は人口はほとんど増やせないが、無人の処女地に進出した場合は、2~3%という農耕民並みの人口増加率を示すと言われる。人口が増えれば、新たな狩猟採集の土地が必要となる。

◎バブ・エル・マンデブ海峡の突破
 しかも彼らは、長距離交易網、装身具、発達した石器・骨器など文化的な現代化もすでに達成していたのだ。
 爆発的に人口を増やし、増えた人口を養うためにバンドは次々と分裂して、それぞれ新天地を求めて分布域を広げ、ついには1つ、また1つと、次々とバンドがバブ・エル・マンデブ海峡も越え、アデンから西アジアに足を踏み入れたに違いない。
 バブ・エル・マンデブ海峡(写真下)は、現在でも海峡の幅は30キロほどしかないが、氷河期で海水面が低下していた時は、もっと幅が狭く、ひょっとすると歩いて渡れるくらいに狭まっていたかもしれない。
 たどりついた西アジアの行く手には西のヨーロッパにはネアンデルタール人が、東のアジアにはデニーソヴァ人がいた。彼らは、そこで異種交配をしつつ、優れた文化で分布域を拡大し続け、ついに4.5万年前にはオーストラリアにも渡った--のではなかろうか。

◎「夢のない」ストーリーも
 上記のシナリオは、リブパブリの頭の中だけの思考に留まる。あるいはまだ知られていないもっと別の要因があるのか、そもそも何の要因もなく、ただ人口が増えたからはみ出されたバンドが西アジアに進出したという夢のないストーリーだってあり得る
 生物にドラマはめったにないので、実際は「夢のないストーリー」のとおりだったかもしれないが。
(この項、続く)

☆これまでの「『破壊する創造者』を読む」シリーズ日記
▼12年2月2日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第7話):新種を生み出す異種交配、ヒトも?」
▼12年1月31日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第6話):ミトコンドリアとの共生にも関与した?ウイルス」
▼12年1月29日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第5話):遺伝子を他種に移動させるウイルスとウミウシ」
▼12年1月27日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第4話):鳥インフルエンザはパンデミックを起こさない!?」
▼12年1月25日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第3話):サルと平和的に共生していたHIV」
▼12年1月23日付日記:『破壊する創造者』を読む(第2話):共生者としてのレトロウイルス」
▼12年1月20日付日記:「ウイルス像を一変させる刺激的書物『破壊する創造者』を読む(第1話)」

昨年の今日の日記:「大相撲八百長騒動、そして新段階に入ったエジプト革命」


Last updated  2012.02.04 04:24:09


M7以上の首都圏直下型大地震の確率のウソ
[ 社会 ]    

kawanobu日記/M7以上の首都圏直下型大地震の確率のウソ;ジャンル=社会、地震学 画像1

 今週の週刊誌は、いっせいに「首都圏直下型大地震」の大特集を組んでいる。これは読売新聞が1月23日朝刊の1面で特報した東大地震研究所グループの「首都圏直下地震4年以内に70%」に反応したものだ。

◎東大地震研グループと京大防災研グループの発生確率の大きな差
 広告の見出しだけ見ると、おどろおどろしいタイトルが並び、まるで明日にでもM7以上の直下型大地震が首都圏を襲うかのようである。
 これに読売新聞とつれて週刊誌が飛びついたのは、政府予測である「30年以内に70%」よりもはるかに切迫感を備えているからだ。
 ところが事態は、その後、複雑化した。2月に入って、各紙が京大防災研の研究グループの別の予測を報道したからである。ただし、こちらは前者よりおどろおどろしくはないから、扱いはずっと地味だった。
 京大防災研の研究グループの発表したM7以上の東京直下型地震が起こる確率は、「5年以内に28%」である。
 全然、違うではないか。いったいこの違いは何なのだ?

◎地震予知は「占い」なのか
 ちなみに読売新聞の特報した「4年以内に70%」という情報は、リブパブリのアンテナに入ってこなかった。各紙・NHKは、読売に追随せず、したとしても地味な扱いにしたので、見落としたのかもしれない。
 最初に、このニュースを知ったのは、ある読者からの質問である。その時、このニュースは知らなかったので、把握していないので判断できない、という愛想のないリプライとなった。
 それにしても、どうしてこんな違いが出てくるのか? 地震予知というのは、言っては悪いが、しょせんは「占い」のようなもので、科学ではないのではないか、と考えてしまう。
 前にも書いたがリブパブリは、地震予知などできない、と考えているので(11年10月25日付日記:「『地震予知』幻想はすっぱりと捨て去るべし、被害を大きくする予知幻想の大いなる歪み」を参照)、研究者によって大きなズレが出てくるのも当然、と冷静に見ているが、どうやらデータの取り方の違いがあったらしい。

◎「後」からの情報が正確なのは当たり前だが
 ちなみにいかなる情報といえども、最初に出された情報より後から出た情報の方が正確であるのは、理の当然である。だから京大防災研グループの「予知」の方が信憑性が高いとは、直感的にも理解できるが、データの取り方の違いの「実態」を知って、実は呆れてしまった。
 京大防災研グループが使ったデータは、昨年3月11日の東日本大地震の発生直後から今年1月21日までの約10カ月間の首都圏で起きたM3以上の地震を気象庁の観測データから抽出したものだ。そのデータを基に、規模が大きい地震ほど発生頻度が低いなどの様々な法則を組み合わせて統計的に推計した。それが、前述した「5年以内に28%」なのである。ちなみに30年以内とタイムスパンを長く取ると、確率は64%に上がる。だが「30年」という長い先まででも、東大地震研グループの確率より下回る。

◎東日本大地震直後の不安定期の半年だけのデータ
 こうした大きな違いになるのは、東大地震グループは、東日本大地震発生直後から9月までという半年という短い期間のデータを拾ったからだ。M9という超巨大地震の発生直後から半年間は、東日本一帯の地殻は不安定で、大きな余震や誘発地震が頻発していた。この時のデータだけ取っていたのだ!!
 9月以降になると、地震回数も大きな余震も減少する。京大防災研グループは、直近までのこの期間も加えたので、確率が下がったのである。今後、より発生頻度の下がった時点で計算すれば、発生確率はさらに小さくなるだろう。例えばあと1年先のデータまで加えて1年後に再計算すれば、もっと確率は小さくなるのは必定だ。
 東日本大地震発災前のデータも含めて、できるだけ長いレンジで判断すべきものだろう。極端な話、東日本大地震前のデータだけで推計値を出せば、確率はほとんどゼロ%に近づくかもしれないのだ。

◎東大地震研グループは意図して出したのか?
 逆に東日本の地殻は大いに不安定になっていて、大きな余震や誘発地震が相次いだ時のデータだけ抽出して推計すれば、高確率が出るのは子どもでも分かる理屈だ。
 それによって人心を惑わし、週刊誌が騒ぐ。行政も、住民からの不安を訴える電話やメールを受けて対応を迫られる。
 意図して出したとすれば、これは詐欺に近い。ただ研究者なら、いくら研究費が欲しくても、こうまであこぎなことはしないだろう。
 リブパブリが推定するに、試算に近いものを特ダネに焦る読売新聞記者が引き抜き、「飛ばし」記事を書いたのではないだろうか。
 だからプロ野球も含めて読売新聞は、信用ならない。

昨年の今日の日記:「アフリカ、マダガスカル島のキツネザルの偶然;進化が生んだ多様化」

Last updated  2012.02.03 05:32:39

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