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2005.07.14
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ロンドンには色々な紳士クラブ(Gentlemen’s Club)があります。 保守党の流れを汲むReform Club, 会社の役員の集まるInstitute of Directors、科学者やノーベル賞受賞者を含む有識者の集まるAthenaeum, メデイア人が集まるCentury 。 これらのクラブはそれぞれの思想や志向(あるいは嗜好)別に集う人々に社交の場を提供しています。 18世紀後半、コーヒーが初めて飲まれるようになった時に、Pall Mall(ペルメルと発音します)界隈に貴族階級用のコーヒーハウスが立ち並び、それらのコーヒーハウスが共同で社交場を提供するようになったのがクラブのそもそもの始まりだとか。 したがってクラブによっては現在でも、食堂をcoffee room、 バーをmorning roomと呼んでいるそうです。 今でこそ思想や志向に関わらず中産階級以上の人々が集いますが、かつては貴族や政治家など、イギリスVIPたちが集い、会談、密談、議論などが繰り広げられ、国の運命を左右するような重大な意思決定がなされていたことでしょう。 

実は私も自由党の歴史を引き継ぐNational Liberal Clubのメンバーになっています。 日本に帰国したため、今ではクラブを使えるのはせいぜい1年に1度程度ですが、私を育んでくれたイギリスへのささやかな恩返しと思い、逼迫した財政事情を抱えるクラブのためにメンバーシップを毎年更新しています。 紳士クラブの多くは‘紳士の社交場’だったため、男女の入り口が別々であったり男性の同伴なしには女性が入れないライブラリーがあります。 日本で言えば、相撲の土俵にあたるような場所ということなのでしょうか。 リベラルクラブは男女の差別がありません。現代の女性として、私はこのクラブに入会することにしました。 申し込みには既存会員の推薦が必要になります。 現在のクラブは社交の場として夕食やパーテイーの会場として、独りで読書を楽しむ書斎として使われています。 基本的には仕事はしてはいけない決まりになっていますが、最近ではコンピュータールームもあります。


これらのロンドンのクラブには地方の会員も多くいますので、会員がロンドンへ滞在する時用にクラブには専用の宿泊施設も併設されています。 しかしリベラルクラブの場合は宿泊施設を持たずに、近隣のホテルや他のクラブの宿泊施設に頼っているため、私は今回のロンドン滞在でリベラルクラブから紹介されて2軒先のThe Farmers Clubに部屋を取りました。 


なるほどファーマーズ(農業従事者)のクラブですから、日本で言うとJA会員専用のクラブと言えましょうか。 農業に従事している人ですから、会員もおのずと地方の方がたも多いのでしょう。 壁には牛やら馬やら農業関連のテーマのプリントがところ狭しと掛けてあります。 クラブ自体は宿泊施設が10室ほど、ドリンクバー、ダイニングルーム、べランダがあります。  最近はEメール対応にしたらしく、明らかにコート用のクローゼットに簡易棚を取り付け、イーメールルーム(独りがやっと)と称した部屋(といえる広さではない)を設けたりしていて苦心のあとが見えました。 私の部屋はシングルで、まるで大学の寮のような小さく、寝室はどこかのおうちのゲストルームのようです。 宿泊用の部屋は全て至って質素で、バスルーム、ベッドにたんす、装飾品はランプが置いてあるくらいでテレビもありません。テレビの代わりに古いラジオが置いてあり、テレビを見たいときには共有のテレビ室を使用します。


クラブに勤務している人は、皆「アンテイーク」のような素朴な人々でロンドンのペースとは別の世界の人々です。 私が宿泊したのは女王陛下も出席するVE Day(戦後60年記念式典)が催される週末だったので、他の客人はその式典に参列する70代以上の名誉会員的な上流のご夫婦がほとんどでした。 朝食でダイニングル―ムでは眼鏡の置くからチラっと一瞥され、こちらも勇気と品格を持って微妙に小声で挨拶すると、先方もほぼ口が動くだけの微妙な挨拶を返されます。 このような雰囲気は苦手なのですが、私のような日本人が滞在しているのも珍しいはずです。 クラブですからドレスコードも決められており、男性はジャケットにネクタイ、女性はconventional (保守的)な洋服着用のこと、ズボンの場合はスラックスでジーンズは不許可とあります。


併設のレストランでは、好きなものを好きな分量だけ注文できます。見栄を張る必要はなく、もったいないとケチっても大丈夫。 食事もお酒も、クラブが助成金を出しているので一般のレストランに比べると、ぐっとお値打ちものです。 日本のクラブのように高額の入会金に加え、行くたびに高いサービス料を払わなければいけないということではありません。 「会員のクラブ」というスピリットが、すべてのサービスの根底に流れています。 自分にとっても、または社交の場としても、あくまでも自宅の延長のようにくつろぐ場所を提供するということが、ロンドンのクラブ精神なのです。


これからもずっと継承してほしいイギリスの財産の一つです。





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Last updated  2005.07.24 22:10:59
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