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たまには地球(した)を向いて歩こう。

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2011.11.20
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すっかり秋の恒例行事となったサイエンスアゴラに今年も行ってきました。いろいろ考えさせられましたが、今年の感想を一言に集約すると、タイトルのようになります。

11/19(土)、お台場は嵐の中。午前中は未来館の1階でサイエンスショーを見たり、プレゼンテーションや展示ブースをちょっとずつ見て歩いていました。いわゆる「楽しい科学」系が中心で、この悪天にも関わらず盛況でした。今年の特徴としては、カードゲームや漫画などが目立ち、いかにも実験っぽいコーナーがあまり多くなかったような気がします。一つ気づいたのは、どんなに面白いトークやパフォーマンスでも、こどもは15分もすると集中力が切れるということです。こればかりはどうにもならないんでしょうね。

午後の前半は、「ジオツーリズムの楽しみ方」という企画に参加しました。今年は「震災からの再生」がテーマになっているのに、地学系の企画は少ないんですよね。そんな数少ない貴重な地学系企画の1つでした。伊豆大島ジオパークの方のお話が印象的でした。この文章ではうまく表現できませんが、とても生き生きとしていて、本当にその場に行ったような気分になりました。最近はジオパークについて説明しなくなった、お客さんに土地の恵みを楽しんでもらって、そういえばジオパークだった、という感じだそうです。また、その方自身がとても楽しそうで、人間的な魅力も大いに役立っているのではと思いました。私はここにジオパークのみならずサイエンスコミュニケーション一般にも通じるヒントを見たような気がしました。

午後の後半は、「科学のハナシの届け方」という企画に参加しました。研究機関の広報担当のベストプラクティスの紹介がとても参考になりました。特に物質・材料研究機構が一般公開のための宣伝映像を作ったというのに感心しました。こういう映像を作ること自体今までなかったことだと思います。また議論の中で、多少正確性を犠牲にしても一般市民の感情に訴える広報が必要、研究機関が伝えるべきものは科学そのものよりも、科学者の人間性というような意見もありました。私も、難しい科学を全ての一般市民に正確に理解してもらうのはやはり無理があると感じています。そういうところをどこまで割り切れるかということも、サイエンスコミュニケーションに必要な要素の1つなのかもしれません。

11/20(日)。昨日と違って良い天気で、屋外展示も盛況でした。何といっても「アゴラ」はギリシャ語で広場という意味ですからね。午前中は「計算科学と化学の不思議で楽しい関係 ─世界化学年に」という日本コンピュータ化学会の企画に参加しました。今年は世界化学年ですから、1つくらいはそういう行事にも参加しないと、と思ったからです。内容は「コンピュータ化学」というわりには折り紙とか分子模型といったアナログなものも登場し、とても楽しく分子の形とその役割について理解することができました。もっとこどもたちにも来てもらえると良かったのですが、場所があまり良くなかったんですかね。

午後の前半は「政策形成における科学的助言のあり方」という、サイエンスアゴラでも最も固そうな企画に参加しました。録画をUstreamで見ることができます。政策形成における科学と政府の行動規範についてのルールづくりが求められており、その試案が提示されるとともに、科学と政治のあり方について議論が行われました。内閣府(科学技術政策・イノベーション担当)の大竹参事官の科学を社会に根付かせ、リーダーがより良い判断ができるような社会にしたいという熱い思いや、東大の笠木教授の日本にもAAASのような科学者が広い視野を持てるような仕組みを、という提言も良かったと思います。残念ながら現在の日本学術会議は政策提言を行うのに最もふさわしい立場にありながらその機能が十分に発揮されていないようですが、いずれにせよ、政府側にも学者側にも改善すべき点はたくさんあるのだろうと思いました。討論の中で、政治と科学の関係の前提として、まず社会と科学、科学教育の問題を何とかしなければならない、というような議論もありましたが、この場だけでそんな大きなテーマを議論するのは無理というものでしょう。しかし非常に大事な問題であることには間違いありません。私個人の考えでは、科学が政府に直接政策提言するべき重要な場というのは、特に非常時だと思います。そういったときにスピード感をもって提言し、政策に反映させるという仕組みと、政府と科学の信頼関係を普段から構築しておくべきだと思います。

午後の後半は総括セッションに参加しました。見る人が見ればわかると思いますが、サイエンスコミュニケーション関係のキーパーソンが多数登壇し、震災後のサイエンスコミュニケーションが目指すべき方向について討論が行われました。この録画もUstreamで見ることができます。しかし議論が深まれば深まるほど、私には「サイエンスコミュニケーション」が主役であってはならないのでは、と思えてきてしまいました。主役はあくまでもその地域の住民であるはずなのです。多くの方の反感を覚悟で言うならば、「サイエンスコミュニケーション」は主役を助ける脇役、あるいは黒子で良いと思うのです。いま「サイエンスコミュニケーション」という言葉が独り歩きしていないでしょうか。極端な話、もう、そんな言葉すらいらないのではないかとさえ思うのです。初めから「サイエンスコミュニケーション」ありきではなく、何のための「サイエンスコミュニケーション」なのか、それぞれの立場でもう一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。モデレーターの方が最後に「サイエンスコミュニケーターのためのプラットフォームを」というようなまとめ方をされました。プラットフォームは良いのですが、それが本来目的も手段も多様であるはずの「サイエンスコミュニケーション」を縛るようなものになってしまわないか、いま若干心配しているところです。

というわけでこの記事を最後に、今後はあんまり「サイエンスコミュニケーション」を強調し過ぎないように気をつけながら、少しでも社会に役立つかもしれない(あるいは直接役立たなくても社会の基礎体力の足しになるかもしれない)科学を伝えることに地道に関わっていきたいと思います。

(参考)
2009年の感想→その1その2
2010年の感想→その1その2





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Last updated  2011.11.20 23:54:32



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