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テーマ:ミニ・シアター系映画(152)
カテゴリ:アメリカ映画
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【この映画について】 この映画は1995年公開の「恋人までの距離(ディスタンス)」という邦題で公開された作品の続編になる。その原題は「Before Sunrise」で今回の「Before Sunset」と比較すると続編ポイのが分かるだろう?私は1995年の作品を観ていないので詳細は分からないが、監督のリチャード・リンクレーターと今回の主役の二人のイーサン・ホーク(ジェシー)とジュリー・デルピー(セリーヌ)の3人は全く変らない。脚本もこの3人が共同で執筆した。 アカデミー賞の脚色賞にノミネートされたが、残念ながら授賞は「サイドウェイ」にさらわれたが充分に授賞に値するノミネートである。 登場人物は冒頭の本屋でのシーン以外は、基本的には全て二人の会話で成立している。その辺の会話の妙は映画館で堪能してもらいたい。 【ストーリー(ネタバレなし)】 前作を見ていない私でも充分に堪能出来る作品だった。 ユーロトレインの中で出会ったアメリカ青年のジェシーとフランス娘のセリーヌは、ウィーンで想い出に残る14時間を過ごした。そして6ヶ月後にウィーンの駅で再会する事を約束したが、彼らは再会に際して過ちを犯していた。 ジェシーはフランス娘が嫌いな父を拝み倒してお金を借りてオーストリアへと向かった。当然セリーヌと再会出来ると信じての行動だった。だがセリーヌはブダペストに住む祖母が亡くなり葬式に参列する為に、ジェシーとは会えなかった。そして月日は流れてジェシーは作家となり新作のプロモーションの為に12日間の欧州へのキャンペーンの一環で、パリへ滞在し老舗の書店で読者等と懇談していた。その懇談会も終わりに差し掛かった時に、ふと眼をやった先にジェシーの視界に入ってきたのがセリーヌだった。彼女はパリのこの書店を度々利用していて、タマタマ立ち寄った書店で偶然再会を果たしたのだった。 9年ぶりに再会した二人だったが、ジェシーはアメリカへ帰国する便へ乗るためにのこされた時間は85分だった。セリーヌはジェシーを店外に連れ出して近所のカフェや公園へと案内する。そして9年前に会えなかった理由がそこで判明し、何故連絡先を交換しなかったのかと後悔するジェシー。二人は限られた時間で9年間の空白を埋めようと、時間を惜しんで取り留めのない会話を交わすのだった。 そこで分かったのは、二人が会えなかったことを悔いていることであり今でも9年前の出来事を忘れずにいることだ。特に、既に結婚して妻子がいるジェシーは結婚する直前までセリーヌのことが忘れられないでいた。会話の中でセリーヌがNYの大学に留学していた話を聞いたジェシーは、その時代に直ぐ傍に住んでいたことが判明し悔しがった。 ジェシーの出発時間は徐々に迫ってくるが、そんな時間を無駄にする事無く二人は相変わらず会話に花を咲かせる。だが話している間にお互いが知らなかった価値観が徐々に表面化してくる。 遂にジェシーの出発時間がやってくるが、彼は本屋さんが手配してくれたタクシーを自分が現在いる所まで来るように電話で要請する。そしてセリーヌと別れがたいジェシーは、空港へ行く途中の彼女の家に立ち寄るように運転手に告げて彼女のアパルトマンへ車は着く。ジェシーは運転手に玄関まで送ると告げて下車する。そうしている間にもジェシーのフライトの時間は刻一刻と迫る。 彼女の家の中に入ったジェシーだが、果たしてこの二人の今後の運命はどうなるのだろうか?意味深な終わり方が更なる続編を感じさせるが、果たしてどう思うかは映画館で観て感じて欲しい。 【鑑賞後の感想】 実際に映画の本編で演じられている時間の経過と、映画の時間がほぼ同じという設定が面白い。昔ヒッチコック映画でこうした試みがあったが、今回の映画は更に特徴的なことがある。それは登場人物が基本的に二人であることと、映画の展開が二人の会話で全てが成り立っている点にある。映画館で観ている我々は、まるで二人の恋人の会話をそのまま眺めているかのような錯覚に陥る。そして映画には付き物の音楽も、冒頭とエンディング間近のセリーヌの部屋でのシーンに登場するだけに留まっている。 本編の上映時間と実際の流れる時間を一致させるのは、恐らくかなりの緊張感が撮影時にはあった事だろう。第一常に同じ時間に撮影をしないと辻褄が会わないし、同じ気象条件下でのロケも要求される。観ている方としては、まるで映画全体がワンショットで撮られているかの様に仕向けないと行けないから大変だったはずだ。 だがそうした苦労も感じさせない位に、全編パリでのロケ映像で通した本作品は脚本と良い編集といい優れた出来栄えだ。残念ながらアカデミー賞の脚色賞は逸したが、会話だけで成り立つ脚本は見事だった。 エンディングの様子からみて、また9年後に素晴らしい続々編を提供してくれるのだろうか?期待したい。 【自己採点】(10点満点) 8.9点。ラストの終わり方が意味深なので、再び続編が作れそうだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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