KINTYRE’S DIARY～旧館

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原題：Coach Carter(アメリカ)

【この映画について】
この映画は実話に基づいて作品化したものである。高校のバスケットボール部が一人のOBコーチを迎え入れてから、如何にしてチームが劇的な変化を遂げて行ったかを描いたものだ。
主役であるケン・カーターには「スター・ウォーズ」シリーズでメイス・ウインドウ役、「キル・ビル」シリーズ、「パルプ・フィクション」、「S.W.A.T.」、「閉ざされた森」などで強烈な個性と演技力を発揮している、いまやハリウッド映画界きっての売れっ子サミュエル・L・ジャクソンが演じる。
ジャクソン以外の高校バスケット部員らの若手俳優らは、オーディションでバスケットボールが出来るかもテストされたそうだ。
【ストーリー（ネタバレなし）】
カリフォルニア州のリッチモンド高校バスケットボール部「オイラーズ」は、かつては強豪高校として映画を誇ったが今では負け犬根性が染み込んだ弱小チームだ。部員等は練習にも満足に顔を出さず、チーム内もギクシャクしている。高校の周囲は黒人が多く居住する所で決して治安も良いとは言えない環境は、生徒たちの大学進学率が低いことでも分かる。部員のクルーズは麻薬のバイヤーと付き合い、ガールフレンドのキーラ（アシャンティ）が妊娠しているケニョン、ワーム、ジュニア、ライルらも家庭的に恵まれているとは言えない。
バスケットボール部のコーチがさじを投げてカーターに後任を託してきた。カーターが真っ先に部員等を集めて３つのことを契約させた。その３つとは1.学業で決められた点数（２．３）以上をとること2.授業には全て出席し、一番前に座ること3.試合の日は上着とネクタイを着用すること以上を『契約』として守れるなら署名するように言い放った。反発する部員の中には最大のポイントゲッターもいたが、カーターは敢えて引き止めずにそうした部員等は去っていった。
契約に署名した部員等には過酷なトレーニング・メニューを与えてそれをこなさない限り試合形式の練習に移らないと宣言するカーター。他の高校でバスケットボールをしていた息子のダミアンも父に懇願してリッチモンド高校に転校し部員として加わった。
カーターを迎えて始めての対外試合でリッチモンド高校は練習の成果もあって、劇的な勝利を収めて部員等にも笑顔が戻った。そんな様子をみて一度は離脱したクルーズも復帰をカーターに懇願するも、カーターは過酷なメニューを与えてこなしたら復帰させると命じた。中々ノルマをこなせないながらも黙々と励むクルーズの姿を見て、部員等も一緒になってトレーニングに励む。
トレーニングの効果が現れると、カーターは独自に編み出した戦術を捧げる。こうして体力的にもそして戦術的にも他校より一歩先に行くことに成功し、試合を重ねるごとに勝利を収めていく。そして遂に地区大会決勝に進みここでも勝って部員等は有頂天になる。だがカーターの心配してきた事態がこの後、次々とカーターと部員等を襲い始める。学校も徐々にそんな部員等を大目に見るようになり、授業に出なくても咎めることはしなくなる。ましてや校長までもがカーターが部員の生活態度や授業態度に注文を付けると、逆にコーチ業に専念するように言い放つ。
カーターは遂に先生らに頼み込んで、部員等の出席状況や授業へ臨む態度などのアンケートを送った。心配していたとおり部員等は契約内容を守らずに授業をサボっていた。激怒したカーターは部員等を体育館に集めて契約違反を激しくなじった。そして
カーターが部員等を前に、契約を守れるまで体育館を閉鎖して試合も放棄すると宣言する。
ここで再び部員等は反発するが、今回の事態は予想をはるかに超えて州全体を巻き込む騒動となり連日テレビやマスコミが駆けつける事態へと発展する。
さて、ここから先は映画の本質に迫ってくるのでストーリーはここまで。エンディングまでのテーマは、部員等とカーターの関係は今後どうなる？部員等は果たしてカーターの示した条件をクリアして試合復帰出来るか？学校はこの騒動をどう受け止めるか？カーターの地元での評判は？連勝街道を進んでいた学校は不戦敗となるが、他校のその間の成績は？リッチモンド高校はリーグ戦復帰と選手権出場はどうなるのか？それぞれトラブルを抱える部員の私生活の行方は？部員等は無事に卒業できるか？まだまだ一杯テーマはあるが、この辺に注目して欲しい。因みに映画館は単館上映で間もなく上映終了を迎えるので、無理な人はいずれDVDで鑑賞して下さい。
【鑑賞後の感想】
この作品は一にも二にもサミュエル・L.・ジャクソンの演技と個性で成り立った作品だ。まるで彼そのものがケン・カーターではないかとまで思ってしまう、それ程ジャクソンの演技は素晴らしいし堂々としている。
アメリカ版スポ根ドラマであるが、日本ならば野球に置き換えられる題材だろう。しかしこれは実際にアメリカでの実話であり、ガールフレンドの妊娠や人種差別や麻薬売買などといった如何にもアメリカ的な社会背景も描かれている点に注目だ。更に付け加えるならば、部員と契約書を交わすシーンがあるが、日本では有り得ないし精々『誓約書』止まりだろう。ここには日本の高校的な雰囲気は全く見られないのも特徴。
作品としても起承転結がはっきりとしていて、最後のシーンはまさに感動的である。カーターが部員等の進路にも責任を持って取り組むと宣言するシーンがあるが、エンドロール前に部員等のその後の進路が字幕で紹介される。
上映映画館の関係で直接観られる機会は少ないだろうが、DVD発売時に是非観てほしい。R&B系の音楽も映像と見事にマッチしているし、アシャンティも妊娠する役で出ている。スポ根ものに違和感が有る人以外全てに持てもらいたい作品だった。
【自己採点】（１０点満点）
９．８点。サミュエル・Ｌ・ジャクソンの演技は最高！