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テーマ:映画レビュー(894)
カテゴリ:アメリカ映画
原題:Munich(アメリカ)
上映時間:164分 監督:スティーヴン・スピールバーグ 出演:エリック・バナ(アヴナー)、ダニエル・クレイグ(スティーヴ)、キアラン・ハインズ(カール)、マチュー・カソヴィッツ(ロバート)、ハンス・ジシュラー(ハンス)、ジェフリー・ラッシュ(エフライム)、リン・コーエン(ゴルダ・メイア) 【この映画について】 トリノ五輪開会中だが、この映画の題材はミュンヘン五輪で実際の起こった話を下に制作された。 ユダヤ系アメリカ人のスピールバーグ監督がこの題材を取り上げるには、色々と葛藤があったと思う。作品内では当時の模様を忠実に再現した冒頭のシーンからラストまで、流石と思わせる展開で流れていく。 この血生臭い事件を、テロリストに報復する特殊部隊の人間のリーダーの目から見るという視点で追う。 エリック・バナ演じるアヴナーの家族と祖国愛に悩む姿が時には痛々しく映る辺りを感じながら観て頂きたい。 【ストーリー(ネタバレなし)】 時は1972年9月5日未明、夏期五輪が開催されている旧西ドイツのミュンヘン。静まり返った選手村に不気味な英語の喋れない集団が群れていた。 その群れはパレスチナ・ゲリラの「ブラック・セプテンバー(黒い9月)」であり、宿敵であるイスラエル選手団目がけて突入し選手やコーチを人質に取る事件が発生した。 早速この模様は世界中にテレビ中継されるなか、ドイツ警察の不手際もあり空港移送までの間に人質となった選手・コーチ人全員が死亡した。 この事件に激怒したのは時のイスラエル首相ゴルダ・メイア女史は、ゲリラに対し「報復」を宣言し秘密裏に人選に掛かった。 父も有名なモサド(イスラエル秘密情報機関)のメンバーだったアヴナーは、一度も人殺しをしたことが無かったモサド隊員だったが首相直々の要請を一晩考えた末に受諾した。アヴナーへの要請は断ることの出来ない要請でありながら、アヴナーの妻が妊娠中でもあり祖国愛と家庭愛の狭間で悩むがリーダーとしてこの任務を請け負う。 メイア首相の密命を受けたメンバーはアヴナーをリーダーに、南ア出身で車両のスペシャリストのスティーヴ、後処理のスペシャリストであるカール、元来はおもちゃ職人で手先の器用さを買われたベルギー人のロバートは爆弾のスペシャリストとして、ドイツ系ユダヤ人のハンスは文書偽造のスペシャリスト、以上5人のメンバーがアヴナーの上官エフライムの指示の基でスイスに集合した。 エフライムはアヴナーに任務に就く前に、国との関わりを一切否定する文書に署名させ健康保険も取り上げた上で、高給と豊富な資金を提供した。 一行は早速襲撃犯の居所を探る為に、情報提供屋であるフランス人のルイを使う。ルイの情報は正確で最初のターゲットをローマで殺害してからは、この謎の人物ルイの情報をフルに使った。 順調に次々とターゲットの殺害に成功するメンバーたちだが、欧州での移動の合間を縫ってアヴナーはメンバーには内緒で母国に一時戻る。それは妊娠中の妻の出産に立ち会うためで、妻は夫の任務の詳細は聞かされていない。 仕事の合間の束の間の幸せを噛み締めたアヴナーだが、直ぐに任務に戻るがその前に自分の危険な仕事からNY移住の話を切り出すが妻は真意を図りかねている。 順調に見えていたメンバー達の仕事だが、徐々に綻びも見え始めてきた。素性の分からない情報屋ルイの利用に疑問を呈するメンバーも出てくる。苦悩するアヴナーはリーダーとしての資質をメンバーから問われ始める。 アヴナーは任務に就く際にエフライムにソ連の情報機関を敵に廻さないことと、犯人を追って中東地区に来るなと、一般人を巻き込むなと厳命されている。だがある時その禁を破ることになるが、軍との共同作戦は失敗し一般人の死傷者を多数出してしまう。 情報屋ルイの正体とその目的が分かってきたアヴナーは、ルイの父の邸宅に招かれメンバー達が追っている大物がロンドンにいることを知り、同時にルイ父子の正体も掴みはじめる。 それまで順調だった殺害計画はロンドンでの失敗を機に、メンバーの士気が低下し始める。今までは一切の失敗も乗り切ってきたが、メンバーが一人一人異なった形で離脱していく。その影響はアヴナーにも現れ、彼は、自分に与えられた任務の遂行と家族愛との狭間で悩むのだが...。 さて、ここから先はポイントを書く。離脱していったメンバーの離れ方とは?アヴナーの身にも危険が迫るのか?アヴナーの苦悩とは?危険な任務が完了する日は果たして来るのか?祖国愛と任務遂行で悩むアヴナーが出した答えは?などを中心に映画館でご覧下さい。 【鑑賞後の感想】 スピールバーグ監督作と言えば昨年公開の「宇宙戦争」はもう一つインパクトに欠けていたが、今回の作品は徹底した秘密主義でこのストーリーの詳細が語られることが無かった。 だがこの映画のタイトルと内容が実話も基に制作されたことから、ある程度のストーリー展開は予想できた。だがそれでもこのテーマをユダヤ系アメリカ人のスピールバーグ監督が取り合えたのは、恐らく彼は長年この企画を温めていたのではないだろうか? 冒頭に事件の再現シーンを当時の映像を交えながら紹介したのは、この事件を知らない世代などに分かりやすかったと思う。 さて164分と長編映画ながら全く長さを感じさせないところに、スピールバーグ監督の非凡さがある。テーマも一貫していて「民族愛」「家族愛」「同士愛」「親子愛」などが語られている。首相の取った「復讐」も広い意味で「民族愛」の範疇に入るだろうが、この解釈には異論もあるだろう。 主人公のアヴナーが一般人に戻って、かつての上官であるエフライムと会話を交わすラスト・シーンが何だかある意味で一番印象的だった。 【自己採点】(10点満点) 9.0点この作品はユダヤ人がパレスチナ人のテロ組織へ復讐するのがテーマだが、パレスチナ人の心情ももう少し描いて欲しかった。 人気blogランキングへ [今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.Donald Fagen/The Nightfly 2.The Bees Knees/Pure Honey 3.The Beatles/Past Masters Vol.1 4.Bob James & Earl Klugh/Cool 5.James Ingram/Greatest Hits:The Power Of Great Music お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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