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カテゴリ:イスタンブールで人と会う
【11月11日・月曜日】 浩子さんとウィリアムさんは土曜・日曜と、イスタンブールが大混雑する最中に来ているので、旧市街側で一番混雑するエミニョニュや、世界遺産歴史地区スルタンアフメットのチケット売り場の行列や、観光客でごった返す有名な観光施設に目を瞠り、イスタンブールの、この汲めども尽きぬエネルギーはどこから来るのか驚き、まるで人間が地底から湧き上がってくるかのように感じていたに違いない。 ウィリアムさんは物流の仕事に関わっているとのことで、この、町全体が大きなショッピング・センターか商店街のようなイスタンブールの雑踏を見るにつけ、巨大人口を抱える不可思議なメガロポリスの流通システムにも非常に興味を引かれたようである。 そこで私は最終日の月曜日、昔から衣料・雑貨や日用品の問屋街として知られた、タフタ・カレやマフムット・パシャ通りを案内してあげようと思った。エジプシャン・バザールとグランド・バザールを結ぶ線上に当たるこの一帯は、常に一般市民も小売商も入り乱れて、肩と肩がぶつかりそうな狭い道をわさわさと往来しているのだった。 朝9時過ぎ、チュクルジュマまでぶらぶら歩きながらタキシム広場方面から下ってきた親子は、私がタクタキ坂を上がって行くのを待っていた。 タクタキ坂とその上の階段をやっとこどっこい登る私。 膝は笑い、息も上がってすごいです。(浩子さん撮影) 今日も上天気なのに、私は3日連続で同じコートを来ているとブログ上まずいなと思い、革のコートを着込んで家を出て大失敗、もう自分の家のそばの坂を上がるだけで暑くて汗だくだった。ジハンギルに上がるのは骨の折れる仕事なのである。待っていた浩子さん達とタクシーを拾い、ガラタ橋を渡ってすぐのイエニ・ジャーミイ前で降りた。 ウィリアムさんは写真を写す腕前もプロ並みで、しかもイスタンブールにすっかり魅せられたかのように、何にでも興味を抱いて立ち止まったり後戻りしたりして姿を消すので、お母さんの浩子さんは「もう、これさえなければいいんだけど・・・」とぶつぶつ言ったりするが、息子さんの方に言わせれば「お袋の旅行について来てやる息子なんか滅多にいないよ」となるんじゃないかな、浩子さん。 さすがに月曜日の朝なので、週末の金曜・土曜ほどの混雑はない(日曜は休み)が、それでもタフタ・カレもマフムット・パシャ通りはかなりの人出で、肩がぶつかるほどのところもある。それも延々と続く上り坂なので、私も以前のようにしげしげと通らなくなり、下から登ったのは久しぶりだった。 そのあたり一帯にたくさんある「ハン」と呼ばれる商館の中には、衣料問屋の同業者が隣り合って何十軒も入っていたりするのである。マフムット・パシャ通りは、人ぞ知る着るものや生地・服地の街なのだった。 アテンダントやってて自分が買い物しちゃった私。日本行きの土産をゲット! これらをひとまとめにしてトルコ語では「テキスティル」と呼んでいるが、そういう工場は主にブルサ県やデニズリ県などに集中している。上質の絹や綿などの繊維製品は、トルコが世界に誇る産業である。 小規模なコンフェクション(家内工業的な工場)は、イスタンブールでも、ゼイティンブルヌのあたりにたくさんある。コーディネーターとして、トルコ紹介番組のネタ探しのため、ずいぶんそのあたりも歩きまわったものである。 浩子さんもウィリアムさんも、興味津々であちこちを覗きながら12時近くになっていよいよグランド・バザールのマフムット・パシャ門から中に入った。入ってすぐのレストランで軽いお昼を食べ、そのあと、グランド・バザール内の主だった通りを案内して20分くらいで外に出た。 そろそろホテルに帰って、空港に行かなければならない。グランド・バザールの駐車場で、トラムワイへの乗り方を示し、名残惜しいがそこで別れた。 初対面だったにもかかわらず親しくなれたのは、観光ではなく、市井に暮らす人々の姿や、親切な気安い人々が多い中で、たまたま欲張り人間と丁々発止をやって、トルコの世知辛い一面も見て貰ったからだろうし、3日間充実していたと思う。 40年ものオランダ暮らしの浩子さんは、たぶん、こんなものを見たかったのだろう、と私はお2人を退屈させなかった自信はあった。抱き合い、手を振り合って別れ、そのあと私は再びグランド・バザールの方に踵を返した。 用事を済ませ、美由紀さんともちょっと出会って、美保子さんの店に向かう途中、古いなじみの「キベレ・ホテル」の元オーナー達、マイクさん、アルパッサンさん、ハッサンさんの3兄弟を訪問したのだった。 この夏、人気絶頂のランプのホテルとして知られた「キベレ・ホテル」を譲渡し、もともと専門職の絨毯やキリムほかの土産物店「ユリュック」に力を入れるという兄弟は、店の2階を大改装している最中だった。アルパッサンさんとお喋りしながらチャイをご馳走になって、しばし休憩することが出来た。 左からアルパッサンさん(二男)、マイクさん(長男)、ハサンさん(三男) 澁澤幸子先生にこの写真をプレゼントします! 最後に美保子さんの店で油を売り、暗くなる前に店を出ると、彼女がタクシー乗り場まで送って来てくれた。薄暮の中、西空に三日月が浮かんでいる。アテンドとしての責任を果たした安堵感でいっぱい、幸福感でいっぱいの自分を感じたのだった。 お知らせ ◎※△ 海泡石(リュレタシュ)がネットで買えます! イスタンブール唯一の海泡石アトリエ、シナン・ウスタの作品がついにネットで購入出来るようになりました。追々品数も増やしていくとのことです。ぜひご覧ください。 ネットショップ 「リュレタシュ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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