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テーマ:介護・看護・喪失(5170)
カテゴリ:その他
伯父よ、お疲れさま。
どうぞ安らかに。 闘病中であった伯父は旅立っていった。 旅立つその数日前、私は既に週末の先約あり、また先週末からの連続出勤により疲労で体調が万全な状況ではない中、なぜか 「行かなくちゃ」 という思いにかられ、金曜の夜に会いに行ったのだ。 そしてこれが伯父との最後の別れになったのだ。 伯父は前回会った時よりもさらに痩せ、もうこれ以上は痩せられないというぐらいにまで痩せ、やつれていた。良く眠っていたので、ベッドの傍らで1時間ほど伯母や母と談笑し、また足もさすりながらしばし時間を過ごした。そして帰り間際、伯父が動いたその時に伯母が声を掛けてくれた。 「お父さん、なぽうちゃんよ、なぽうちゃんが来てくれたのよ。 仕事場が近いから、また来るって。また来るからね、って。」 伯父は目を開け私の方へ身体を向け、顔中しわくちゃになりながら笑を浮かべて手を差し出して来た。その手をしっかりと、本当にしっかりと握り合った。骨と皮ばかりの手。そしてひんやりと冷たい。しかし、とても力強かったのだ。それまで気持ちをこらえていたものの、さすがにこらえきれない瞬間だった。 しっかりと手を握ったまま、再び眠りに落ちる伯父。 私は身体が少しでも楽になるようにと、そのまましばらく祈りを込めた。 この時、もっともっと手を握っていれば良かったか。 些細なことだが、今となっては悔やまれる。 そして週末明けて火曜の朝。皆に見守られながら伯父は旅立ったのだ。 立ち会っていた母によれば、それは穏やかな旅立ちであったという。その時の状況を淡々と語る母。皆が集まっていたその場でも一人冷静な態度であったようだ。きちんと現実を受け止め、今、何を感じ、何をきちんと見ておくべきなのか、冷静に判断している。必要な事柄を見失わない態度だ。こういう存在も必要なのだと感じさせられた。日頃冷たい人だと思っていたが、今回は思いを新たにさせられた。冷たいというより、冷静。情に流されない強さを感じた。思うに母のこの強さには、伯父もかなわなかったのだ。 伯父の脈は、ゆっくり、ゆっくりとなり、消えるようになりながらも時おり大きな呼吸をし、やがて眠るように旅立ったという。週末、父が闘病平癒のお護摩をお願いし、その法要に私も立ち会ったばかりだが、そのご加護もあるのだろう。静かに、静かに、み仏様のもとへ引き取られていったのだ。 その後、それまでお世話くださった看護婦さん達が 伯父に仏さまの支度をしてくださったそうだ。 なんてありがたい、尊い職業の人たちだろうと、心から思った。 幼少の頃より、伯父には本当にお世話になった。一番身近な親戚であり、そして心強い存在だったのだ。その昔、中学校に上がるまでは、それぞれの家族とともに良く旅行へ行ったものだった。おいしい食べ物とお酒を楽しむのが好きだった伯父。旅の途中でもそのスタイルは変わらなかった。あるとき列車の中で、とあるウイスキーの小ビンを注文し、飲んでいた。私の目はその茶色い小ビンに釘付けになった。 「なぽうちゃん、このビンが欲しいかい? おじさん、飲み終わったらあげようか。」 その茶色い小ビンが私には宝物のように見えたのだ。伯父から譲り受けたその茶色い小ビンに、旅の思い出に摘んだ植物をドライフラワーにして飾り、毎日眺めていたように思う。 伯父との思い出が残るその小ビンの正体だが、 「だるま」の愛称を持つ、サントリーのオールドだ。 それを手に、週末はきちんとお別れをしよう。 無理かもしれないが、出来るだけ母のように冷静に 伯父を見送りたい。 11/24:サントリーオールドに関し、追記&リンク。 サントリーオールド ミニチュアボトル 楽天広しといえど、ミニチュアボトルはなかなかありません。ここだけでした(2006年11/24現在)。 とっておき酒天本舗さん サントリーさんに電話をしてたずねましたが大手デパートに出荷しているのみ。あとは旅用に鉄道の車内販売か。せめてサントリーのホームページで販売してほしいところ(お客様センターのYさんには良くしていただきました)。 サントリーオールド 参考:サントリーオールド お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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