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小説「首輪のニュースキャスター」5
「たっ、助けてくれぇ。」 阿部は悲鳴に近い大声を上げながら田舎道を駆け続けるが、シゲ代の家は集落から離れた一軒家で民家までは結構な距離がある。 やっとの思いで小さな集落の1軒に辿り着いた時、後ろで叫び声がした。 「待てぇ・・・。」 振り向くと寅吉とシゲ代が母屋を出て来て、その後ろにはキク子の姿も見える。 「た、助けて・・・警察を呼んで下さいっ。」 じわじわ迫ってくる追っ手を気にしながら必死の思いでガンガンと脚で玄関扉を蹴っていた阿部の顔がぱっと明るくなった。 ガラス扉の向こうに人影が見え、錠を開け始めたのだ。 「何だい、騒々しいねぇ・・・。」 ガラガラと開いた玄関扉の向こうの住人を目にした阿部が、ヘナヘナと崩れ落ちた。 「朝風呂かと思ったら、朝飯前の運動かい・・・ご苦労なこった。」 何とその住人とは、一旦家に戻ったハツ枝だったのだ。 「はい、お疲れさん・・・いっひっひ。」 笑い声に顔を上げるとシゲ代と寅吉、更にはキク子も地面にぺったりと尻をついた阿部を見下ろしていた。 「こ、こんな事をして・・・只で済むと思っているのかっ。はっ、離せ。」 ハツ枝の家の玄関に横たえられ、足首をキク子とハツ枝に掴まれた阿部が精一杯の強がりを口にした。 「ほうら、大人しくせんかっ。」 暴れ続ける阿部の足首に荒縄を廻しながら、寅吉が言い聞かせるように威嚇する。 「馬鹿だねぇ・・・この辺りは年寄りばかり、しかも男連中は皆出稼ぎに出て残っているのはアタシたちだけだと言ったろ。だから、いくら大声を上げても誰も来やしないのさ。」 荒縄で膝も揃えて括られ、無念そうに唇を噛み締める阿部を、シゲ代がさも可笑しそうに見遣った。 「ふふ・・・約束を破って逃げたから、早速写真をバラ撒くとするかい。『おはようジャパン』キャスターの全裸写真流出で、世間は大騒ぎになるだろうよ・・・楽しみだねぇ。」 「ま、待ってくれっ。」 玄関を出て行こうとするシゲ代を、阿部が顔を強ばらせて見上げた。 「たっ、頼む・・・お願いだ。写真をバラ撒くのだけは止めてくれっ。」 その阿部の、脂汗滲んだ端正な頬をシゲ代がピシャリと打った。 「人に物を頼むのに、何て言い草だい・・・止めてあげても良いけど、その代わり逃亡を謀った罰を受けて貰うよっ。」 「わ、わかった・・・。」 シゲ代がもう1度、阿部の頬を平手打ちする。 「わかりました、だろっ。『どんな罰でも受けさせていただきますから、どうか写真をバラ撒くのはお許し下さい、シゲ代様。』ほら、こうお願いしないかっ。」 「くっ・・・ど、どんな罰も受けますから・・・どうか写真をバラ撒くのはお許し下さい・・・し、シゲ代・・・さま・・・。」 悔しげな阿部の言葉に満足したシゲ代が、更に追い打ちをかける。 「いいかい、これからアタシたちには最上級の敬語を使って貰うよ。アタシたちの事もシゲ代様、寅吉様と呼ぶんだ。それと・・・くれぐれも言っておくけど、今度逆らったりしたら容赦無く写真をバラ撒くからねっ。」 ビシッ・・・歯を食いしばる阿部の白い頬に、今度は寅吉の容赦ないビンタが飛んだ。 「返事をせんか、返事を。このオス犬っ!」 「は、はい・・・。」 そう力無く答え目を潤ませる阿部の姿に、農婦たちと寅吉が満足そうに顔を見合わせた。 「では、お望みどおり折檻場にご案内いたしますぞ。」 寅吉が阿部をひょいと抱え上げ、軽々と横抱きにした。 「ああ・・・。」 褌一丁の縛めの身を同じ裸の男の腕に抱かれる羞恥に、阿部が寅吉の腕の中で身悶えする。 「念のために轡を噛ませておくとするかい。ほら、アーンしな。」 そう言ったシゲ代が、阿部の腰から素早く褌を解き去った。 「嫌だ・・・止め・・・うぐぅ。」 シゲ代が開いた阿部の口に、白い褌でがっちりと猿轡を噛ませた。 「どうだい、自分の褌で猿轡されるご気分は。くくく・・・それにしても、まるで爺さんに抱っこされた赤子のようだよ。」 ハツ枝に続いてキク子も、寅吉の腕の中で猿轡で歪められた頬を真っ赤に染めた阿部を囃し立てる。 「おじちゃんの言うことが訊けるように、ボクをたっぷりとお仕置きして頂戴・・・いっひっひ。」 わっはっは・・・寅吉たちの笑い声を聞きながら、シゲ代が棚にあった茶色の瓶を手に取った。 [首輪のニュースキャスター]カテゴリの最新記事
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