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カテゴリ:東京下町の暮らし
うちの奥さんは、東京に来て間もない頃、豊洲(とよす)と東陽町(とうようちょう)の区別に苦労していた時期があります。その頃、こんな会話がありました。
「ねえねえ。こないだ、豊洲の八百屋さんに行ったの。すごい安かったのよ。イチゴが2パックで398円だって」 「豊洲?・・・豊洲に、そんな八百屋なんか、あったかな?」 「あれよ。あの店。アパホテルの近くで、中国人がやってる、すごい安いあの店」 「ああ、あれは東陽町のうじかわ青果店でしょう?」 漢字で書くと、「豊洲」と「東陽町」は、似ても似つかないものですし、また、ひらがなで書いても、「とよす」と「とうようちょう」、あまり似てませんよね。それなのに、混乱した理由は、ローマ字表記が似ているからです。 豊洲=Toyosu 東陽町=Toyocho 英語圏で育った妻にとっては、どうしても、”Toyo”という最初の二音節が印象に残ってしまい、どちらも、同じように聞こえてしまうようです。 いま、東京には、外国人がたくさん暮らしています。彼らの多くは、東京の地名を、ローマ字で覚えます。中国や韓国の出身者ならともかく、それ以外の国から来た者が、漢字の地名を覚えるのは難しいことです。 そんな彼らに配慮すべく、東京の公共交通機関は、あの手この手を使って、外国人にも分かりやすい表記を心がけています。特に出来が良いのが、東京メトロや都営地下鉄の表記法。東京の地下鉄交通網は、世界一複雑ですが、それでも、各路線が色分けされているのと、どの駅にも、「英字1文字+数字2文字」からなる記号がふられているので、非常に分かりやすく、外国人の好評を博しています。たとえば、 東陽町駅は「T-14」(東西線の14番目の駅) 豊洲駅は「Y-22」(有楽町線の22番目の駅) 門前仲町駅は、「T-12」と「E-15」(大江戸線の15番目の駅) そんな地下鉄と比較して、いまいち、イケてないのが、「都バス」の表記表です。 都バスの路線は、非常に多いので、色分けされていません。その代わり、路線番号があるのですが、それは「漢字1文字+数字2文字」の組み合わせになっています。たとえば、 「錦15」 (錦糸町の15番) 「木11」 (木場の11番) 「業10」 (業平橋の10番) この表記法は、日本人や中国人にとっては、直感的に分かりやすいのですが、漢字を知らない外国人にとっては、なかなか使いにくい。たとえば、 「木11」と「錦11」 が、同じバス停に止まっていたら、どちらに乗ったらいいのか分からない、という事態も十分想定されます。 それ以上に困るのが、都バスのローマ字表記法です。東京には、和製英語を使うバス停名がたくさんあるのですが、都バスのルールでは、それらを英語表記せず、ローマ字でベタ書きします。たとえば、 「東京駅前」は、Tokyo Eki-Mae (Tokyo Stationではない!) 「IBM箱崎ビル」は、IBM Hakozaki Biru (IBM Hakozaki Buildingではない!) 昨日、もっと傑作なバス停名を発見しました。 江戸川区の「くすのきカルチャーセンター前」。このローマ字表記が、なんと、 Kusunoki Karucha Senta Mae なのです。ま、"Culture Center"は思い切り和製英語なので、英語圏の人間にも意味があまり通じないのかもしれませんが、それでも、文化に関する、何らかの施設だろうということは分かるでしょう。でも"Karucha Senta"って書いたら、誰にも意味が通じなくなっちゃいますよね。 このままいくと、「スペシャル・バス」も、"Supesharu Basu"になってしまい、まったくもって、意味不明。都バスは、いったい誰を対象にして、何を伝えるために、こんな表記法を選んだのでしょうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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