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カテゴリ:ちょっと医学なお話
昨日の日記に、健診の問診の事を書いたら、誰やねん君が「あの問診票って役に立ってるんですか?」と質問した。
彼の場合、どうも文脈から普段の診療の問診表の事を言っているのだと推察される。 まあ、僕の書き方も悪くて、健診の場合は問診票と言うより調査票と言った方がふさわしいだろう。 で、今夜の日記はその普通の診療の場合の問診票である。 これが役に立ってるのかどうか? この問診票は普通患者さんがその医療機関を最初に訪れた時に記入させられる事が多いです。 どこの病院も似たりよったりと思うのですが、当院の場合を例にとってみると、 まず、患者情報、これは 1 名前(ふりがな) 2 住所、生年月日、電話番号など。 3そして次は主訴(今日、来院することになったメインの症状・・今日はどこが悪くて来られましたか?となっている) 4 既往歴(過去に、入院、手術、長い通院をしたことありますか?と聞いている) 5 現在、治療してる病気があればその内容など 6 薬や注射でアレルギーを起こしたことがあるかどうか。 当院の場合は非常に簡潔なのでまあこの程度だ。 普通、これに喫煙や飲酒の有無を問う質問があるけど、どうせ正直に書かないことが多いので、当院では医者が直接聞いて書くようにしてる。 この問診を普通に書けば、患者さんがどんな症状をメインとしてやってきたか? その病気に関して既に治療されていたらその内容。 過去の病気の有無など。 薬のアレルギーの有無など。 まあ、こんな事がわかるわけで、診療には非常に役に立つのだ。 ところで、問診票はどんな風に書いていたら医者の喜ぶレベルになるのか? 「長すぎず、短すぎず、情報が簡潔でかつ十分に・・な」んて言ってると殴られそうなので具体的に例をあげよう。 例えば主訴。 簡潔な方が良いけど、頭とか背中とか一言で書くのは止めて欲しい。また風邪とか診断名を書くのもよくない。 「頭が重い」「お腹が痛い」「身体が痒い」「足が浮腫む」まあこんな感じで主語と述語があればオッケーである。 もう少し余裕(こころと、用紙の)があれば、いつ頃から調子が悪いのかも書けばよろしい。 「3日前から38度を超える熱があって、今日は咳もひどくなりました」まあこう書けばベストだろう。 これ以上長く書いても、医者は読むのに時間がかかるので、それなら自分の口から聞いた方が早いと考えると思う。 主訴がどんなに変化をしたかとか、どんな対処(薬を飲んだのか、病院へ行ったのか)をしたのかとかももちろん知りたいが、それは医者が自分の口から聞くだろう。そんだけ書くと手が疲れるから書かなくてよろしい。 次に既往歴である。 これはどのくらい前に、どんな病気でどんな処置をしたかを簡潔に書けばよろしい。 「3年前に中央病院で胃ガンの手術をして現在抗ガン剤を飲んでいます」と書けば100点である。 これも、以前の病気のところに「ある」と書いてる人が居た。これは医者にどつかれるかも知れないので要注意だ。 当院では書かせてないが、酒とタバコのところも、「飲む」、「吸う」なんて喧嘩の種になるような事は書かないで、「ビール350mlを毎日1本飲みます」とか、焼酎湯割りコップ一杯と、ウイスキーをロックで2杯」なんて書いて欲しい。タバコも、1日20本を15才の時から吸っていますが、2年前から禁煙してます」とか書くと医者から頭をなでなでして貰えるかも知れない。 逆に、3日前まで1日40本吸っていたのに咳が出て調子が悪くなって止めてるだけなのに、タバコの欄に「吸ってない」と書いてる人も居るけど、これも医者を怒らせる元である。しかし、「吸ってない」と言うのはある意味日本語的には正確だから、本当は怒られる筋合いではないんだろうけど。問診する方も「タバコを今吸っていますか?もしくは過去に吸っていましたか?」と書くべきかも知れない。 先日、徳島市の休日診療所に出務した時にその問診票を見ていたら、「どんなお薬が飲めますか?」という質問があって、錠剤、カプセル、粉、水薬のところに○をつけるようになっていた。 これも中々ええ質問やなあと思った。処方を出した後で、粉はダメなんです~なんて言う人も結構いるのでね。 まあ、僕に言わせると、何でも出されたものを飲め!って感じなのだけど。 少し話がそれた。 現在治療中の病気に関しては「高血圧で、○○と言う薬を3年前から飲んでいます」なんて書くと100点である。 薬のアレルギーも「以前○○と言う薬を飲んだときに発疹が出ました」なんて書くと100点であるが、大抵の場合薬の名前なんぞ覚えてない人の方が多い。「風邪ひいて貰った薬で調子が悪くなりました」ではあまりに情報が少ないか。 せめて、鎮痛剤とか抗生剤とかわかれば良いのだが。(まあ、実際にどの薬剤が原因でかわかってない事も多いのであまり多くは望めまい) どうです? こんな風に問診票を書けば100点貰えるかも。 ところで、問診票からわかるのはこれだけなのだろうか? いえいえ、そんな事はないのです。 もっともっと有用な事実がわかってくる事が多い。 例えば患者さんの性格。 元気そうなのに何も書いてない人が居る。 こういう人は大抵が面倒くさがりでずぼらである。 でも、こういう人も大抵名前と生年月日、住所電話ぐらいは書いてある。 本当に何も書いてない人も居るのである。 意外な展開だが、そういう人の中には字が書けない(もしかして読めないも追加されるかも)人も居るのだ。 一文字も書いてない患者さんは、字が書けないのでは?と疑う必要ありである。(もっとも、これは受付の段階でチェックされている事が多い。受付も患者さんのプライドがあるので、何も書いてない人にあまり突っ込んではいけないのだ) これは少し笑える話だが、どこが悪くて来られましたか?の質問に、「腹」とか「頭」とか書く人は多いが、極めつけは「身体」と書いた人だ。そんなの書かなくてもわかってるよ~。どこの身体の調子が悪いのかと聞いてるんですよ(まあ、心の調子が悪いのではないと言うことはわかるが・・)。 こういう人は、受けを狙おうとしてるだろうか?それとも喧嘩を売ってるのか?と思うけど実は本人は大まじめな事が多い。医療機関には色んな理解力レベルの人が来るから、いつも医者の目線のレベルで考えてはいけないのだ。 また、苦しそうな顔をして何も書いてなければ、これはホントに病気がしんどくて問診票さえ書けなかったのだろうと推測できる。 ところで、大抵の場合、問診票は十分に書かれて無くて医者が質問して補正するのが普通である。 しかし、逆に問診票を書きすぎる人も居るのだ。 B5版の紙にびっしりと書いてある。アリのはい出る隙間も無いぐらいだ。 縦と横がしっかりと揃っていて、縦にも横にも読めそうな・・いや、そうなると最早読みにくい。 こういう人は絶対に粘着気質である。学校の先生に多いような気がする。 そしてこんだけ沢山書いてあるのに、肝心要の事が抜けていたりするのだ。 こういう人は、診察室の椅子に座ると、書いてある事の10倍ぐらい喋る事が多い。 だから、こっちも患者さんが入ってくる前に既に身構えていたり、腰が浮いていたりするのだ。 どっちかと言えば、何も書いていないすぼらな人の方が与しやすいかも知れない。 以上、たかが問診票、されど問診票なのである。 医者はその書き方から貴方の性格まで読もうとしてる。 隙を見せないように、しっかりと書いてくだされ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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