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Maryam's HP 日記

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2013年12月07日
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カテゴリ:おとぎ話 ”春”

 

 

 

画像は こちら より拝借<(_ _)> 

 

 

 

 





春の訪れ <1>



娘は食の細そうな、小さくかよわい身体つきをしていた。

彼女の真っ白な頬の左横と着物の裾からのぞく、小さなふくらはぎの肌からは、

明瞭に緑の血管が浮き上がっていた。

細く、小さな身体相応の手の先の爪は、薄く平らで、

縦にいくつもの線が走っており、

爪ひとつだけをみても、彼女の健康の乏しさを示してた。




普段は黒目がちな娘の瞳は、光に照らされると、

澄んだ浅瀬のように陽を吸って明るく澄み透り、


また娘の小さな心が揺れ動くと

丸く整った上下の唇を噛み締める癖を持っていた。


長い髪は、湿気を帯びたように光を放ち、

しっとりと豊かに、細く華奢な肩と背中にゆったりと腰かけていた。


全く 春 の取り柄は 器量 だけだった。



春の季節に生まれたからであろうか?

娘は 春 と呼ばれていた。




春 の母は既に他界していた。

しかし春 の虚弱な身体は母ではなく、父譲りであった。


春 の母は並の体力を有した女(ひと)であったが、

病弱な夫の代わりに力仕事し、行商に出、

その上、虚弱に生まれた愛娘の看病に、心と身体を次第、次第に細らせていった。

母は一家を支えるために休む暇なく働き続け、

春 が8つの歳に、行商からの帰宅途中不慮の事故で亡くなったのだった。



春の父には兄がいた。

兄には子がなく、比較的裕福な生活をしていたので、

一家の柱に先立たれた二人を憐れに思い、

命をつないでいける程の援助を言い出してくれたのだった。


しかし、この心優しい伯父の家計は、

しっかりものの嫁の意向で、常に取り仕切られていた。


この嫁は自分の姪のためには、田舎の村娘には贅沢すぎるほどの着物と帯を

数年に一回こしらえ送り届けていたが、

夫の姪のみすぼらしい身なりと、最低限の生活には、

全く心を痛めることはなかったのだった。



それでも 春 にとっての14回目の春が訪れようとしていた。





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Last updated  2014年05月21日 11時53分36秒
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