Kramer Pacer Vintageのその後
前回の記事、『80年代を彷彿させるKramer Pacer Vintage』の中で『Kramer Pacer Vintage』のその後について微妙な表現をしましたが、実は『Kramer Pacer Vintage』を使い始めて一ヶ月も経たないうちにネックに異変が・・・。このネック、メイプル(楓)製のネックにメイプルのフィンガーボードを貼りあわせた構造になっているのですが、この構造自体はごくありふれたものです。安っぽいネックだなぁとは思っていましたが、まさかこんなトラブルが出るとは・・・。拡大するとよく分かりますが、フィンガーボードが剥がれてきたのかネックに亀裂が走っています。勿論、ギターを落下させたり、ぶつけたり等、ネックに衝撃が加わるようなことはしていません。トラスロッドの調整など、ネックに負荷がかかるようなこともしていません。仕方ないのでメーカー(Gibson)と販売店(イケベ)に問い合わせたところ、翌日には販売店から連絡あり、保証対象として修理していただけるということになりました。そこで販売店に修理の取次ぎをお願いしたのですが、最終的にはメーカーでも修理不能ということで新品と交換することになりました。まぁ、修理と言ってもネックの全交換になるだろうと予想していたのですが、メーカーではそれすら出来ないようで、少々がっかりしました。販売終了から時間が経過しているのなら交換部品がなくて当然かと思いますが、そもそも修理するなど想定していないような印象を受けました。今後、ギターに何かあってもメーカーでは対応不能と覚悟しておいたほうがよさそうです。また、販売店の対応に比べて、メーカーからの連絡があまりにも遅かったという経緯もあり、『Gibson』にはかなり失望しています。最近は、驚くほど低価格のギターがたくさん登場していますが、ギターの価格が下がっているのではなく、単に昔は無かったような安物が平気で売られているだけのように思います。むしろギター自体は高くなっていて、そこそこの金額のギターでも望むような品質は得られないと感じました。 手持ちの『Kramer』のギターに『Kramer JK-1000』(上側)というモデルがありますが、『Kramer Pacer Vintage』よりも安い『Kramer JK-1000』の方が造りが確りしているように思います。『Kramer JK-1000』は『Kramer USA』ではなく『Kramer Japan』の製品で、『Kramer USA』からライセンスを受けて日本市場向けに『ESP』が製造・販売していた廉価版が『Kramer Japan』なのですが、廉価版とは言え日本のメーカーが手掛けただけのことはありますね。もっとも『ESP』が作ると高くなるので、実際の製造は下請けだったでしょうが・・・。2つのギターは時代が異なりますし、私が持っているイメージも80年代半ばから90年代初め頃に販売されていたギターのイメージなので単純には比較できませんが、『Kramer Pacer Vintage』は定価に釣りった造りには見えません。例えば『Kramer Pacer Vintage』も『Kramer JK-1000』もブリッジは、フロイド・ローズを採用していますが、全く同じものが取り付けられているわけではありません。『Kramer Pacer Vintage』に装備されているフロイド・ローズは『1000シリーズ』と呼ばれる韓国メーカーOEM品ですが、『Kramer JK-1000』には一般に『本物』と言われるドイツのシャーラー製のフロイド・ローズが装備されています。一見、同じように見えますが、黒の『1000シリーズ』(下側)はプレスによってベースプレートを形成しています。対してドイツのシャーラー製のフロイド・ローズ(上側)は鍛造で、『曲げ』の部分のラインがシャープです。当然、ドイツのシャーラー製の方が精度、耐久性共に優れています。『Kramer JK-1000』は、当時5万円以上したシャーラ製のフロイドローズを搭載しながら、10万円を切る定価で販売されましたのでヒットしましたが、価格の安さから『フロイド・ローズを買っているようなもので、後のパーツはオマケ』と揶揄されることもありました。しかし、今どきのギターを見ると『Kramer JK-1000』も馬鹿にはできないなと思います。楽器で最も重要なことは、正しい音程がとれること。無論、精度は重要ですし、音程の安定のためにも耐久性に優れたパーツや加工技術は欠かせません。しかし、最近は10万円を超えるギターに安物の材料・パーツが使われていることも少なくないように思います。昔はそこそこ使えるものが欲しいなら5万円以上、それ以下はゴミと言われてましたが、今は幾ら以上出せば、そこそこのものが買えるんでしょうね?