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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会
試写会の主権はニッポン放送「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」だ。映画上映前にパーソナリティーの増田みのりさんの舞台挨拶があり上映だ。客入りは若干空席のある9割ほどで年齢層は高い。
おくりびと 映画の話 リストラされたチェロ奏者・大悟(本木雅弘)は、故郷に戻り、求人広告を手にNKエージェントを訪れる。しかし、そこの社長・佐々木(山崎努)から思いもよらない業務内容を告げられる。それは、遺体を棺に納める“納棺師(のうかんし)”の仕事。妻の美香(広末涼子)には冠婚葬祭関係=結婚式場の仕事と偽り、見習いとして働き出す大悟。だがそこには、様々な境遇のお別れが待っていた…。 映画の感想 これは良かった!笑いと涙のバランスがとても良い。 主演の本木雅弘にとって、主人公が未体験のジャンルにチャレンジする「ファンシーダンス」「シコふんじゃった。」の延長線上に本作があるように感じた。 監督は滝田洋二郎だ。前作「バッテリー」の不甲斐無い出来にがっかりだっただけに、本作のクオリティの高さは筆舌尽し難いほどだ。 まず面白い映画はオープニングから上手い。本作も納棺師の仕事ぶりを厳かに描きながらも意表をついたオチを用意して観客の心をつかむ。そして月日が遡り、主人公が納棺師という職業との出会いが描かれる構成で、映画前半は納棺師のhow to物として楽しめる。 以下ネタばれあり 私は納棺師という職業をこの映画で初めて知った訳で本当に大変な仕事みたいです。まず会社のプローモーションビデオの死体役を演じる大悟に笑わされ、2週間放置された老婆の死体回収から、死臭の付いた体の匂い消しの銭湯のシーンとコミカルに描かれる。 この映画のポイントは納棺師と言う職業を周りの人々がはなから見下していて、大悟本人も妻に自分の仕事をひた隠しにしている。そんな中、映画は様々な人の葬儀の場で納棺師の仕事ぶりを披露して、それを見た人たちが納棺師に対して尊敬の眼差しに変わる過程が何度も描かれ、見ている観客も死者に対して敬意を示し旅立ちのお手伝いをする納棺師の仕事を見ていて自然に涙を流してしまう。 本作は本木雅弘の好演が映画を牽引するのだが、彼をこの世界に引き入れる社長役の山崎努の存在感も実に良い。ふてぶてしさの中に信念を持った役は主人公の父親的であり、NKエージェントの事務員役の余貴美子を含めて擬似家族の様にも見える。そして役者としてイマイチ存在感が薄かった広末涼子もいい仕事をした。暗くなりがちな物語に彼女が画面に登場するとホッとする感覚を覚え、映画にいいムードを作ってくれたし、広末にしては珍しくエロいシーンもある。まぁこのシーンは日活ロマンポルノを撮ってきた滝田監督ならではのものだと思うのだが、死体に初めて直面した主人公が生きた女性の肌の温もりにすがり付きたくなる人間の基本本能を良く描いたシーンのように感じた。同じように死体に接した後に潰した鳥を食べられなくなったり、逆にフライドチキンにむしゃぶりつく描写は人間の精神的な弱さと図太さを良く表したシーンだ。 映画の着地点も実に上手く、主人公が父親との確執に決着をつけ旅立たせるシーンには涙があふれてしまった。余韻を残す潔い幕切れも見事である。そして物語の性質上控えめだった久石譲の音楽もエンディングではタンバリンやティンパニーが鳴り響くダイナミックな“久石節”が炸裂して観客をお見送りしてくれる。人間の喜怒哀楽をこれだけバランスよく盛り込んだ作品は近年まれといえるだろう。 本作は昨日付けで「モントリオール世界映画祭」でクランプリを獲得したそうです。今年の日本の映画祭でも台風の目になる作品になるであろう。 追記090223 本日「おくりびと」が第81回アカデミー賞“外国語映画賞”を受賞しました。主人公の父を演じ「アカデミー賞授賞式に参加する」と張り切りながら実現しなかった、天国の峰岸徹さんも喜んでいる事でしょう、おめでとう! 映画「おくりびと」の関連商品はこちら おくりびと おくりびと ■送料120円■初回盤■AI CD+DVD【So Special-Version AI-/おくりびと(仮)】08/9/10発売 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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