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2009.10.30 楽天プロフィール Add to Google XML

映画「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」@映画美学校第一試写室 辛口映画批評(399)」
[ ブロガー試写会 ]    

 Yahoo!映画ユーザーレビュアー試写会にて鑑賞しました。客席はほぼ満席、映画終了後に佐藤祐市監督と観客とのティーチインが行われた。

   
【23%OFF!】ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない(DVD) 

 映画の話
 ニート生活を送ってきた26歳のマ男(小池徹平)は母親を亡くし、一念発起して情報処理の資格を取得する。不況のご時世の中、必死で就職活動をするものの試験に落ち続け、最終的にパスしたのはとんでもない問題企業だった。彼は初出社当日から当然のようにサービス残業をさせられ、その状態が毎日続いていく。

 映画の感想
 今の不景気日本の世相を色濃く反映した作品と言えるだろう。映画は主人公・マ男が限界点に達しボロボロになった状態から幕を開け、何故マ男がこんな状態になってしまったのか時間がさかのぼり、マ男が辿った道のりが時系列で描かれる。

以下ネタばれ注意

 私は原作を未読の為に不明であるが、マ男が就職する下請けIT企業“黒井システム”で働くキャラクターはかなりデフォルメされていると思われる。取引先にはへいこらしているくせに、会社内では部下や同僚をアゴでこき使い悪態を突き通す品川祐演じるリーダーには正直嫌悪感を持ってしまった。主人公には頭ごなしに「パっカ」を連呼して、ろくに仕事をしているようにも見えない人物だ。他の社員たちも皆強烈なキャラクターばかりで本当にどうしょうも無い会社であるが、田辺誠一演じる藤田だけが違う。人に対して思いやりを持ち、間違った事は「間違っている」といえる誠実な人物だ。まぁ、映画は品川演じるヒールキャラがいるからこそ、藤田がより引き立つ訳で「彼がいるからこそマ男も会社で働いていた」という設定も納得の好演ぶりだ。

 映画はほぼ会社のオフィス内が舞台となり、映画として広がりに欠けるのが難点であるが、佐藤監督は自由な発想でアイディアを膨らませ物語に緩急を付ける。デスマーチと呼ばれる残業続きの過剰労働者を戦地の兵士と見立てて、次々と押し付けられるノルマを機銃で撃ちまくる主人公の姿をインサートさせたり、場の空気を読み戦術を立てる藤田を「三国志」の“孔明”と見立て「レッドクリフ」ばりの映像をインサートさせ映画を盛り上げる。そして、小さな紙切れ状の主人公のニート時代の分身(監督は“チビマー”と呼んでいた)が、主人公に悪魔のささやきのような事を吹き込んだりで、上手くアイディアを膨らませ実になっているのが良い。

 映画は途中、マイコ演じる派遣社員の中西を投入して、オフィス内もにわかに活気付くが、この中西も強烈なキャラだ。藤田を好きになり猛アタックをするが、あっけなく振られてしまい何故か、その後遺症が足にきてしまい松葉杖をついて出社すると言う失恋を引きずるネガティブキャラというのも楽しい。マ男はその仕事ぶりが評価され入社2週間でプロジェクトリーダーにまで上り詰めるが、新入社員の木村(田中圭)の黒い陰謀や、自身の学歴問題でボロボロになってゆく。

 映画はワーキング・エンターテインメントとして中々面白いのだが、映画の舞台となるのが下請けIT企業という事で、主人公達が黙々とプログラムを打ち込む姿ばかりで映画として面白味に欠けるのは否めない。それも私の様にIT関連に疎い観客が見ると、彼らが何をやっているのか判らないのも難点であろし、仕事の達成感もイマイチ伝わりにくいのも難点だ。

 映画は2ちゃんねるの掲示板の書き込みから生まれただけに、何処か同じように掲示板の書き込みから生まれた大ヒット作品「電車男」とも似た匂いを感じてしまった。特に主人公が掲示板に書き込みをしているシーンでは、リアルタイムでスレッド住民たちの書き込みがされて、その文字が次々と画面に表示される所は共通点を感じた。しかし、本作のスレッド住民たちはまったく顔が見えないのが難点であろう。

 映画は現在の不景気日本の縮図の様に感じた。ピラミッド状の縦社会の中、発注を受けた大手の会社の仕事を子会社が引き継ぎ、更にそれを孫会社が最終的には下請け会社に丸投げをして、無理難題を押し付けられて下請け社員はサービス残業が当たり前という、いびつな仕事形態が出来上がり、映画の様に労働者たちは身も心も疲れきり過労死までは行かないが、ほぼ同じような状態になってしまう。これから就職を控える学生が本作を見ると悪夢のような光景に映るだろう。

 本作はネガティブな題材であるがテンポも良く笑い所も多い。映画は物語が進む内に主人公がどん底まで落ちるが、這い上がりポジティブな幕引きとなる所に好感を持った。暗くなりがちな物語を独特のテンポで明快に描いた佐藤監督のセンスが光る作品である。

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最終更新日  2010.09.25 13:47:01
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