|
テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:ブロガー試写会
当日はyahoo!映画ユーザーレビュアー試写会と言う事で、上映終了後に富永まい監督を招いて観客とのティーチインが行われた。客席は満席、座れないお客さんは補助椅子で鑑賞していました。
食堂かたつむり スタンダード・エディション 映画の話 倫子(柴咲コウ)がアルバイト先の料理店から戻ると同棲(どうせい)中のインド人の恋人の姿はどこにもなく、部屋は空っぽだった。彼女はあまりのショックで声が出なくなり、スナックを営む折り合いの悪い母親ルリコ(余貴美子)のもとに戻るしか選択肢は残されていなかった。倫子は自活するためにも、実家の物置を利用して小さな食堂を開くことにする。 映画の感想 富永まい監督作品は初めて鑑賞したが、アニメーションやCGを駆使した絵作りはCM監督時代に授かったセンスなのだろう。映画は主人公・倫子の生い立ちがアニメーションを使いミュージカル仕立てで説明されるが、映画冒頭から意表をついた出足で若干面食らってしまった。ノリとしては同じCM監督出身の中島哲也監督の「嫌われ松子の一生」なんかに類似するが、中島監督に比べると濃度は非常に薄い。 以下ネタばれ注意 映画は失恋のショックで失語症になった倫子が、母の暮らす田舎に帰郷する所から幕を開ける。舞台となる田舎には母性の象徴の様な“おっぱい山”と呼ばれる、女性のおっぱいの形にそっくりな二つの山を間近にした、丘の近く(地理的には特に説明的な描写が無いので不明)に立地する倫子の母が暮らす田舎には不釣合いな一軒屋と、離れの倉庫(後に改築されて「食堂かたつむり」になる)と、母が経営するスナック“アムール”がメインととなる箱庭的な世界観だ。 監督は舞台演出も手がけているだけに、スタジオ収録した屋内シーンは舞台的でもある。物語の中心は母と娘の確執がやがて愛情に変わってゆく過程が描かれる。まぁ、それにしても主人公が失語症なので、彼女の内面がなかなか読み取れない。彼女は基本的に他人との対話に筆談を使っていて、母の飼っているブタのエルメスと話す時だけモノローグが使われる位で、倫子を演じた柴咲コウはとても感情表現に苦労したと思われる。対する倫子の母を演じた余貴美子は倫子とは対照的に自由天真爛漫な役どころだったので演じやすかったのではないだろうか? 映画は監督曰く「映画の趣旨はファンタジーと現実ドラマの中間に位置する作品」と言ってるように、何とも中途半端な仕上がりの様に感じた。特に本作のポイントは食堂かたつむりで倫子が作り出す料理を食べた人の願いがかなったり、元気になったりと、丁度ネガティブ~ポジティブになる不思議なパワーを秘めている事が本作の要である。 映画の中では子供と離れ離れに暮らすブラザートム演じる熊さんのエピソードや、志田未来演じる片思いの少女の話や、江波杏子演じるおめかけさんのエピソードなどが描かれるが、熊さんはなんとなく人物の背景が描かれたが、他のお客さんは人物の背景が描かれていないので、どこかエピソードがぶつ切り感の様に感じてしまった。ちゃんと、食堂かたつむりに来店する客を丁寧に掘り下げて描けば、物語に奥行きが出てくるのだが、どうも人物の表現が表面的な所は否めない。 表面的な人物像と言うと今、最も旬な女優・満島ひかりがチョこっと出演している。彼女は作品毎に様々な表情を見せる面白い女優である。本作では倫子に対してネガティブな事をしてしまう役であるが、何か演技が表面的で彼女のキャラクターを活かしきっていないのが残念であった。 映画は母の結婚と病で親子はお互いと向き合い確執は解凍されるわけであるが、母があんなに可愛がっていたブタのエルメスの末路なんか、人の命や食する意味を突き詰めたエピソードとして、もっと踏み込めたであろうし、物語の要所要所に登場するハトの末路も、どれもこれも唐突感は否めないし、もう一歩踏み込める余地を残したサラリとした演出がもどかしい。 「かもめ食堂」で幕を開けた料理がらみの邦画が人気を博しているが、映画を見るたびに美味しそうな料理が物語を牽引していた。しかし本作は主人公を演じた柴咲コウが吹き替え無しで、自分の手で料理を作ったそうであるが、今回は出来上がった料理を見てもあまり食指が動かなかった。 本作の出来上がった料理を食べるシーンで思い出したのが、フジテレビ「美味しんぼ」である。「美味しんぼ」では、美味しい料理を食べた人物が覚醒するイメージを大胆な合成技術で表現しているが、「アレぐらいやれ」とは言わないが、何か本作は料理を食べ終わった後に、登場人物に画面を食材で彩ったフレームを使う位の地味な使い方もギミックとして面白味にかけた。 富永監督にとって劇場長編2作目と言う事もあって、まだイメージ先行で表面的な演出が玉に瑕なのだが、彼女らしいアニメやCGを使った自由な発想を開花させれば映像クリエイターとして才能を発揮できるかもしれない。そんな彼女の才能の原石を見せられた様な作品であった。 映画「食堂かたつむり」関連商品 【中古】単行本(小説・エッセイ) 食堂かたつむり 食堂かたつむり コミック版 食堂かたつむりの料理 「食堂かたつむり」オリジナル・サウンドトラック/サントラ[CD]【返品種別A】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.09.15 23:15:28
コメント(0) | コメントを書く
[ブロガー試写会] カテゴリの最新記事
|
|