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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会2010
客入りは7割くらい。
映画の話 高校生の裕一(池松壮亮)は、入院先の病院で心臓病の美しい少女・里香(忽那汐里)と出会い、彼女のわがままに振り回されながらも、次第に惹(ひ)かれていく。里香も外の世界を見せてくれる裕一に思いを寄せていくが、二人が入院する病院の医師・夏目(大泉洋)は悲しい過去に縛られ、複雑な思いで二人を見ていた。 映画の感想 私は本作の原作やアニメやドラマなどまったく知らない。ただ監督が「真木栗ノ穴」で、私が一目置く深川栄洋である事で興味を持って見た。映画は「タイヨウのうた」に似た青春難病物で幕を開け、かなり小っ恥ずかしい青春ラブストーリーが映画の3/4を占めるが、映画の最後の最後に「あっ」と驚くギミックが用意されていて、多くの観客は予想もしなかった展開に放心状態になるが、最終的に感動に繋げる演出が秀逸な作品である。 肝炎で病院に入院中の裕一は夜な夜な無断外出の常習犯で看護婦の亜希子に目をつけられている。裕一は亜希子から「無断外出を黙認する」交換条件と言うか命令で、病院に転院してきた里香の話し相手にさせられる。裕一は気の強い“ツンデレ娘”の里香にあごで使われタジタジになるが、ある出来事で二人の距離は急激に縮まる。映画は並行して二人の入院する病院に勤める医師・夏目の姿が描かれる。自分で手術した妻を亡くし傷心状態の夏目は院長の薦めに反して頑なにメスを握る事を拒否していた。 以下ネタばれ注意映画鑑賞後にお読みください。 映画の前半から3/4くらい迄は本当にシンプルな難病青春物で、初々しい二人の主人公たちの言動や行動には、見ていて恥ずかしささえ感じてしまうストレートな青春演出で「これは駄目か?」と、じっと我慢しながら映画を見ていると、映画は最後の最後に想像もつかなかった展開には唖然とするが、よくよく映画を反芻すると納得のギミックであり、深川監督の「真木栗ノ穴」と共通する驚愕のギミックが素晴らしく、我慢して見ていた映画の言いたい事が一気に理解出来て、素直に映画に騙され、とても良い味の感動をしてしまった。 映画の着地点を踏まえて、もう一度映画を思い起こすと数々の仕掛けが施されている。映画途中で判る1994年と言う時代設定であったり、何故か同じ病院に二人の院長が居たり、夏目が主人公二人のドラマに絡んでこないなど伏線はしっかり張り巡らされていたのに全然気がつかなかった、時間軸の使い方も上手い。 本作は一見ベタな青春物っぽいが深川監督らしい映画的なけれんみも優れている。裕一が初めて里香を見つけるシーンは病院の屋上で洗濯物のシーツごしで、なかなか見えない里香に対しての裕一のドキドキ感や、裕一が里香を連れて病院からの初無断外出のドキドキから続く開放感は実にすがすがしいシーンだ。映画後半、里香と距離を置く裕一の病室のベッドに、夜のベランダから潜り込んでベッドの中で久々のロマンティックなツーショットなど、胸ときめくシーンに深川監督流のけれんみを感じた。 映画「半分の月がのぼる空」関連商品 真木栗ノ穴 / 西島秀俊 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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