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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:劇場2010
毎月10日は109シネマズの“109シネマズの日”で鑑賞料金が¥1000だ、と言うことで初日を迎えた「第9地区」を上映するシアター1は最前列以外満席である。
【ポイント6倍対象商品】第9地区DVD&ブルーレイセット 【初回生産限定】 映画の話 ある日、ほかの惑星から正体不明の難民を乗せた謎の宇宙船が、突如南アフリカ上空に姿を現す。攻撃もしてこない彼らと人間は、共同生活をすることになる。彼らが最初に出現してから28年後、共同居住地区である第9区のスラム化により、超国家機関MNUは難民の強制収容所移住計画を立てるのだが……。 映画の感想 映画は鑑賞前に私が予想していた硬派なSF作品を見事に裏切られ、テレビドキュメンタリー番組を模したブラックでシニカルなフェイクドキュメンタリーで幕を開け、映画冒頭は忙しない展開に面食らうが、映画は進行しながら変革を繰り返しユーモアを交えた作風は中盤辺りから影を潜め、観客が想像しない展開になだれこむ変幻自在な作風が面白い。しかし、難点は過激な暴力&スプラッター描写が多いので女性やお子さんには厳しい作品であろう。 映画のベースは世界的問題になる難民問題をエイリアンに置き換えた発想が秀逸であり、映画の舞台となる未開拓な南アフリカの町並みとUFOが奇妙にマッチしてリアル映像を見せられている錯覚さえ感じてしまう。難民は人間からエイリアンに変換され、人間からの差別や虐待がシニカルな視線で描かれる。 以下ネタばれ注意 映画の特徴として本作には“起承転結”で言う“起”の部分がバッサリと無い。いきなりUFOが南アフリカの上空に浮かんでいる状態からのスタートである。映画は冒頭にUFOが飛来した直後の1982年の報道映像と共に、エイリアン難民事件に関連した人物たちのインタビューを凝縮して、事件の当事者となる主人公・ヴィカスの行動が時系列で描かれる。 映画は冒頭こそブラックでシニカルなフェイクドキュメンタリーで幕を開け、ユーモアを交えた作風に「これはコメディか?」と錯覚してしまうが、主人公がエイリアンが作り出した黒い液体を浴びてから作風がガラリと変わってくる。黒い鼻血、嘔吐という感染パニック物に変貌しながら、爪や歯が抜け落ち左腕がエイリアンの腕となり、正にデヴィッド・クローネンバーグ監督「ザ・フライ」と共通する苦悩する変身人間物へと変貌を遂げて、最終的には戦争アクション物にまで上り詰める。 隔離された第9地区にはエイリアンと共存するナイジェリア系ギャングは、エイリアンの肉体を食する事で彼らのパワーを身に付けようと実践しつつ、政府の介入の無い地区で勢力をつけ、エイリアンが操る武器を猫のえさ缶と交換して備蓄して何かを画策している。ギャング達の一見奇異な行動は後々クライマックスの伏線として生きてくる。 映画後半は一転して戦争アクションへと変貌する。エイリアンのD.N.A.が入り込み、エイリアンへと変貌してゆく主人公が人間に戻る方法はエイリアンの母船に戻り治療する事と知り、エイリアン側の主人公クリストファー・ジョンソン(何ともアバウトな命名が可笑しい)と共に、事件の大元となる黒い液体の入った筒を取り返しにMNU本部を急襲する件からは、映画冒頭からは想像もつかなかった怒涛のアクションになだれ込む。 エイリアンが作り出した兵器はとてつもない威力で、他作品のエイリアンの兵器で言うとティム・バートン監督「マーズ・アタック」の滑稽なビームや、スピルバーグ監督「宇宙戦争」の蒸発系ビームとも違う、血肉が吹き飛ぶスプラッター描写満載な演出が強烈である。まぁ、本作の制作はピーター・ジャクソンであるが、今でこそ「ロード・オブ・ザ・リング」「キングコング」の監督で知られるが、彼の出世作はスプラッターホラー「ブレインデッド」だ。「ブレインデッド」は大量の血糊でグチャグチャネチョネチョとしたスプラッター描写で見る人によっては絶句するホラー作品である。本作はそんなジャクソンのD.N.A.が継承されているように感じた。 クライマックスの第9地区に逃げ込んだ主人公と軍隊との一騎打ちで登場する人間乗り込み形小型ロボットは「アバター」にもそっくりなロボットが登場してしまったので、公開する順番からバツが悪いがとても魅力的なマシーンでSFマインドを擽られる。映画は最終的に“愛”と言うキーワードで締めくくられるが、主人公ヴィカスとクリストファーの口約束を考えると「続編もありうるのかな?」と勘ぐってしまった。本作を見るとCG技術の進歩に驚愕しつつ、社会問題を大胆にメタファーしながら痛烈に風刺した新ジャンル作品であろう。 映画「第9地区」関連商品 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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