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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会2010
客入りは1階席は満席、2階席は7~8割くらい、客年齢は高い。
映画の話 大手家電メーカーで数々の実績を積み上げ、50歳を目前にしながら仕事に追われる日々を送る肇(中井貴一)。一人暮らしの母が倒れたのをきっかけに故郷へ戻った彼は、一畑電車の運転手になるという幼い頃の夢を思い出し、採用試験に応募してみる。そして、年齢のハンディーを乗り越えて試験に合格した肇は運転手となるが……。 映画の感想 まずタイトルが長過ぎです。本編タイトルは、ただの「RAILWAYS」だったのを見ると、劇場公開するにあたり「RAILWAYS」では判り辛いと配給会社が判断して、こんな長ったらしいタイトルになったのだろうが、いきなりタイトルがネタばれなのはどうなんだ?映画は地味ながら実直な展開であるが、エピソードによってサジ加減が多すぎたり足らなかったりでバランスが悪い所が気になる。 以下ネタばれ注意 映画は主人公・筒井のエリート会社員時代から幕開けで、筒井とは同期入社で親友の川平(遠藤憲一)とのエピソードが少し描かれる。川平は後々筒井の転職へ向かわせる大事なキャラクターだけに大事に描く必要があるがサラリと描かれてしまう。したがって川平のイメージが観客に定着しないのが駄目だ。特に寝たきりの息子さんの話は映像化する必要があるが、作り手は台詞で説明して映像を割愛してしまったのは駄目だ。その為に後のエピソードで使われる小道具も生きてこないのは残念に思った。 映画は田舎で暮らす主人公の母親が倒れた事と親友・川平の死で背中を押されたように、今の仕事を捨てて自分の夢へ向かう姿が描かれる訳であるが、川平の死も台詞だけで済ませてしまったのも駄目だ。主人公にとってターニングポイントと言うべき出来事なのだから、故人となった親友との別れを葬式に出席するなどキッチリと描くべきである。 映画は子供の頃から夢だった電車の運転士と言う職業に対する描き方もやや唐突の様に感じた。映画の中では主人公の子供の頃の写真や集めた切符で電車好きをアピールしていたが、何かもう一つ大人になった主人公が、今でも心の片隅に残した電車好きらしい描写が欲しかった。 映画を見ていると本筋以外にも色々とエピソードが盛り込んでいる。仕事に一途で家庭を省みない主人公と妻や娘との確執や、主人公と共に運転士となる同僚・宮田の挫折した過去など2時間10分の作品に色々と盛り込みすぎて掘り下げが浅くなってしまっているのは否めない。特に宮田は登場シーンの前半はぶっきらぼうな役であり、面接シーンでは台詞すらない。何か彼の心の闇を観客に伝えるのには回想シーンなど使う必要があったように感じた。そして、高島礼子演じる主人公の妻は映画の添え物程度な扱いとなってしまったのはファンとして非常に残念であった。 映画は順調に進むかと思いきや、ある事件を切欠に主人公や電車会社がピンチとなる訳であるが、事件の責任を主人公がかぶり退職願を社長に出した後のエピソードが駄目駄目である。ここは作り手も“泣かせ所”と感じたのかサジ加減を大盛りにしてしまい、私は逆にドン引きしてしまった。一運転手が退職すると言うタイミングを見計らった様に乗客が集まってきて「筒井さん、辞めないで」と言い始めたのはやりすぎである。あそこは事件の当事者となった親子と同僚だけで十分感動できたエピソードを台無しにしてしまった。 映画は主人公を演じた中井貴一の柔軟性のある上手すぎる演技で破綻の無い仕上がりであるが、もう少し丁寧にエピソードを掘り下げれば傑作となる所であるが、まだまだ監督の力量不足なのか佳作になってしまった。まぁ、私は電車の事はよく知らないが電車マニアの鉄男や鉄子が見れば感涙な作品なのかもしれない? 映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転手になった男の物語」関連商品 RAILWAYS オリジナル・サウンドトラック RAILWAYS ダンスのように抱き寄せたい/バトンリレー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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