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趣味の漢詩と日本文学

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March 30, 2009
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カテゴリ:国漢文
【本文】
元日。なほおなじとまりなり。
【訳】
元日。まだ依然として、おなじ港である。

【本文】
白散を、あるもの、「よのま」とて、ふなやかたにさしはさめりければ、かぜにふきならさせて、うみにいれて、えのまずなりぬ。
【注】
●ふなやかた 船上にこしらえた屋根付きの部屋。
【訳】
白散を、ある者が、「ちょっと夜の間だけ」といって、船上に造った屋根のある部屋のところに挿んでおいたところ、風に吹かれて飛ばされ、海に入れてしまい、飲むことができなくなってしまった。

【本文】
いもじ・あらめも、はがためもなし。かうやうのものなきくになり。もとめしもおかず。
【注】
●いもじ 里芋の茎を干したもの。いもがら。ずいき。
●あらめ 食用の海藻の一種。
●はがため 歯固め。「歯」は、年齢で、寿命を固め延ばす意。正月の三が日に長寿を祈って鏡餅・いのしし・しか・あゆ・大根・瓜などを食べる行事および、その食べ物。
●かうやうのものなきくに 『土佐日記』(岩波新日本古典文学大系)では「船中のこと。諧謔的表現」とするが、果たしてそうであろうか?土佐日記の旅は帰京するまで五十五日も要しているが、土佐に赴任した時にもほぼ同じような日数を要したであろうし、十二月二十一日に出発しても、帰途で元日を迎えることはわかりきっていたはずである。ということは、船に乗る前から正月を迎えるための最小限の用品の準備はしていたはずである。そう考えれば、京では正月用品としてどこにでも置いてあるような入手容易な品々が、土佐の国では風習が異なるので正月用品も異なり入手困難だった、ということであろう。
●もとめしもおかず 『土佐日記』(小学館、新編日本古典文学全集)では「し」を強意の副助詞、「も」を強意の係助詞、「おく」を補助動詞として扱っているようだが、私は、ここでは「し」を過去の助動詞、「も」を逆接の接続助詞、「おく」を本動詞と考えた。
【訳】
ずいきも・あらめも、歯固めもない。こういった京では正月に普通に食べるような物が無い土地である。探したが、どこにも置いていない。

【本文】
ただ、おしあゆのくちをのみぞすふ。このすふひとびとのくちを、おしあゆもし、おもふやうあらんや。「けふは、みやこのみぞ、おもひやらるる。」「こへのかどの、しりくべなはの、なよしのかしら、ひひら木ら、いかにぞ」とぞいひあへなる。
【注】
●おしあゆ 塩漬けにして、重しを加えて押した鮎。正月の祝いに用いた。
●くちをのみぞすふ 「くちすふ」は、キスする意の動詞。『遊仙窟』の訓などに見える。
●こへ 小さな家。
●しりくべなは しめ縄。清浄な場所に張り渡して立ち入り禁止の印にした縄。のちに神前に張り巡らしたり。正月の飾りに用いた。
●なよし ボラの別名。「名良し」という言葉を連想させるところから、縁起の良い魚とし、正月のしめ縄に頭を刺し、飾りにして祝った。
●。「けふは、みやこのみぞ、おもひやらるる。」と「こへのかどの、しりくべなはの、なよしのかしら、ひひら木ら、いかにぞ」の部分を、船中の人々の会話とみる説と、押し鮎の会話とみる説がある。
【訳】
ただ押鮎の口をかじるだけだ。このキスする人々の口を、押鮎がひょっとすると何か考えるところがあるのであろうか。「今日は都のことばかり想像させられる」「小家の門のしめ縄にぶら下がっているボラの頭や柊などはどんなだろう」と話し合っているようだ。





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Last updated  March 31, 2009 08:27:10 PM
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