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舞台が門司港であるとの惹句につられて、期待はずれも甚だしかった「謎解きはディナーのあとで」と同時に買って、これまで放置していたもの。
連作短篇の「謎解き」とまったく同じ作風ではあるが、こちらは長篇ということもあり、同じパターンの繰り返しにすぐに飽きてしまうようなことはなかった。 とはいっても、ライト・ノベルの謗りは免れるものではなく、重厚さは欠片もない。 解説の大矢博子は、宮藤官九郎か三谷幸喜に映画化して欲しいと書いていたが、逆だ。読んでいて、彼らの書いたシナリオをノベライズした代物のように思えた。あるいは、ラブコメ漫画のノベライゼーション。 一見、キャラは立っているようでありながら、その実、ほとんどがステロタイプ。 ライト・ノベルだから仕方ないといえば仕方ないのだろうが、いまさら時間トリックにあれはないだろう。アタッシェケースの受け渡し方法は、「本陣」へのオマージなのだろうか。いずれにしても、物理トリックに興味はないので、どうでもいい。 真犯人は、早い段階で丸わかり。その原因は動機の意外性のなさにあるし、動機が平凡な推理小説に良作はないと断言する。 舞台が門司港であるとの惹句にも、やや「看板に偽りあり」の感がある。実のところ舞台のほとんどは下関であるし、どう贔屓目に見ても、「舞台は関門」が精一杯だ。 それは土地の風俗描写にも顕れており、下関の方言はかなり正確であるのに対し、門司の方言は滅茶苦茶。門司は豊の国であって、筑紫の国ではない。 思うに、作者は、下関の取材は比較的真面目にやっておきながら、門司の取材は怠っていたのではないか。 東川篤哉の作品は、今後「もう購入なんてしない」だろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011/02/21 11:33:49 PM
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