カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
'91年、怪優竹中直人が、つげ義春の漫画を原作に
初めてメガホンをとった異色作‥‥それが、「無能の人」です。 かつてはそれなりに売れていた漫画家だったが、時流に乗り遅れて干され、 中古カメラ売買などに手を出したが失敗し、 多摩川べりで川の石を売る中年男・助川(竹中直人)。 一家は妻モモ子(風吹ジュン)のチラシ配りのパート賃金で、何とか糊口をしのいでいた。 ある時、助川は石のオークションに参加してひと儲けするため、 妻子を連れて山梨に出かけ、金になりそうな石を見つけるが‥‥ 不器用極まりない生き方しかできない中年男の、哀しすぎてユーモアさえ漂う様子、 世渡りがめちゃくちゃ下手なのに、おのれの情けなさを愚痴ることもなく、 おのれのふがいなさに涙することもなく、 妻の不平不満は黙って聞き流し、それでも石に執着する様子が、 大きな愛をもって、しかしどこか突き放したように描かれていたようです。 映画に出てくるダメ男は、よくおのれを愚痴り、ひとり縄のれんで酔いつぶれて涙を流したりしますが、 モイラはそういうステレオタイプな描写は、大嫌いです。 竹中直人、初監督にしては味わい深い作品を撮りましたね! 主人公助川がひょんなことで出会う鳥男(神代辰巳)も、彼の不安な胸のうちを描写しているようで印象的でした。 助川が漫画雑誌の編集者(いとうせいこう)と打ち合わせをする喫茶店も、 16年前でもなかなか見当たらないであろう、'70年代の香りぷんぷんの雰囲気で、 時流に乗り遅れた助川にぴったり‥‥ さすがは多摩美大在学中に、8ミリ映画製作に精を出していた竹中直人‥‥ ビジュアルに凝った映像作り、うまいです。 でもモイラが一番泣けたのは、助川の家族愛。 「石ころ同然の生きざまでも、生きてりゃきっと何かいいことあるよ‥‥」と、 教えてくれた映画です。 久我美子、原田芳雄、草薙幸二郎、三浦友和といった大物俳優や、 映画監督の神代辰巳、脚本家の荒井晴彦、自殺した漫画家の山田花子などが、 ちょい役で出ているのが、見もの。 マルセ太郎、山口美也子、神戸浩などの個性派俳優が、脇をしっかりかためています。 そうそう、昨日の特撮クイズの答えです。 Q1 オキシジェン・デストロイヤー Q2 シャンソン歌手 Q3 RODAN(へんなの、彫刻家じゃあるまいし‥‥) Q4 阿蘇山 Q5 原節子 Q6 八百屋(八百屋の店員さんが聞いたら怒るでしょうね) Q7 わだつみ Q8 高田美和 Q9 古関裕而(歌詞はインドネシア語、中国語がまじったものだそうです) Q10 地球人との結婚 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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