食事から摂取した1日のエネルギー量に対して、日常生活における1日のエネルギー消費量が少ないと、余ったエネルギーは脂肪に合成され内臓脂肪として蓄積されます。
逆に、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回ると、内臓脂肪は分解され、活動エネルギーの材料として使われます。
よって、内臓脂肪の蓄積を減少させるためには、食事の内容や摂取量の見直しを行うと同時に、日常の身体活動や運動について振り返ることが重要となります。
新たなスポーツなどに取り組むことも結構ですが、メタボリックシンドロームの場合は、毎日の生活習慣の結果として内臓脂肪蓄積に至っていることから、運動をどのように習慣化するのか、また、日々の身体活動量を習慣的に増やすかがポイントとなります。
習慣化した運動の重要性として、筋肉でのインスリン作用の向上があります。
運動を継続的に行う効果として、筋肉に糖を取り込みやすい体質になるため、筋肉内でのエネルギー消費が増加します。また、筋肉細胞は絶えず重力に抵抗していないと細く小さくなっていきます。
日常生活においても、身体活動による体重負荷や筋肉の伸縮による重量刺激が減少してしまうと、筋肉細胞が痩せていき、基礎代謝におけるエネルギー消費量も減少してしまいます。
これらのことを各自が理解し、習慣として継続できる運動を生活の中に取り入れていくことがとても重要です。
運動を考えるときは、エネルギー摂取量と消費量のバランスを保つことが重要です。
摂取については食事を考えることになり、消費は代謝について考えることになります。
代謝には、基礎代謝と活動代謝があります。基礎代謝量は年齢とともに低下していきますが、筋肉量を増やすことによって増加させることができ、エネルギーを効率よく燃焼させることができます。したがって、機械を用いるような特別な運動や激しい運動を行わなくても、日頃の動作を増やすことで基礎代謝量を上げることができます。
自身の日常生活の中で、どの動きの量を増やすことが無理なく習慣化できるのかを考え、数ヶ月単位で取り組んで評価・再検討をすることが良いと思います。
内臓脂肪は蓄積されやすいですが、また分解もされやすいことが分かっています。内臓脂肪が蓄積されると、内臓脂肪は肝臓に送られ、遊離脂肪酸となって血液中に流れていきます。
そのまま運動不足が続くと、過剰になったコレステロールは血管壁に付着してしまいます。しかし、体をよく動かせば脂肪酸は燃焼させることができるため、内臓脂肪は皮下脂肪より燃焼させやすいことが分かっています。
運動時間の長さについては、最近では、わずかな時間であっても繰り返し行うことで効果が得られることが分かっています。
新たなスポーツに取り組むよりも、今の生活の中のどこで運動量を増やすことができるかを考える方が現実的です。例えば、通勤で電車やバスを利用している人は1つ手前の駅で降りて歩くとか、エレベーターやエスカレーターを利用せずに階段を昇り降りするなど、身近な動きでいかに活動量を増やすことができるかを考えることが重要です。 また、歩数計の活用はかなり有効です。
毎日の歩数をチェックすると、その日の活動量を客観的に見ることができるため、デスクワークが多かった日などは意識的に階段を使うなど、自分で活動量を調整することができます。
厚生労働省が2006年に出した運動指針では、メタボリックシンドロームの予防のための歩数の目安は、1日8,000~10,000歩となっています。
内臓脂肪を燃焼するための理想的な取り組みは、食事を減らすことと運動を続けること両方に取り組むことです。
食事の摂取量を守り、各自の許容エネルギーを超過した分を運動で消費することが理想的です。運動のみで目標とするレベルの内臓脂肪の燃焼は困難と思われ、一方でみなさんが意識して運動量を増やしていくことで、アルコールや嗜好品などの各自の楽しみを継続できると考えることができます。
1日あたりの消費エネルギー量は下記の表を参考にされるとよいと思います。
運動種目別エネルギー消費量
項目 |
10分間続けるときの 消費エネルギー(kcal) |
体重60kgの人の場合の 消費エネルギー(kcal)
|
歩行速度60m/分 |
0.534×体重 |
32.04 |
歩行速度70m/分 |
0.623×体重 |
37.38 |
歩行速度80m/分 |
0.747×体重 |
44.82 |
ジョギング 軽め |
1.384×体重 |
83.04 |
ジョギング 強め |
1.561×体重 |
93.66 |
自転車平地10km |
0.800×体重 |
48.00 |
階段(昇り) |
1.349×体重 |
80.94 |
階段(降り) |
0.658×体重 |
39.48 |
乗り物(電車・バス立位) |
0.375×体重 |
22.5 |
掃除(掃く・拭く) |
0.676×体重 |
40.56 |
掃除(電気掃除機) |
0.499×体重 |
29.94 |
水泳 平泳ぎ |
1.614×体重 |
96.84 |
テニス |
1.437×体重 |
86.22 |
ゴルフ(平均) |
0.835×体重 |
50.1 |
(日本体育協会スポーツ科学委員会)
(糖尿病運動療法のてびき、医歯薬出版、1998より引用)
生活の中に取り入れやすいものとしては、早歩き,ジョギング,階段の昇り降りなどですが、毎日何ができるかはみなさんのライフスタイルの中で考える必要があります。
家から駅まで早歩きで片道10分程度歩くと、1日の往復で約80ckal消費することができます。
また、会社や駅などでエレベーターを使用せずに階段を使うと、1日10分程度の使用量とすれば同じく約80kcalを消費できることになります。このような地道な活動を続けることが大切です。習慣になれば全く苦になることはありません。
食事と運動の両方を組み合せた実践のフィードバックは、半年か、短くても数ヶ月単位で腹囲や体重を確認し、目標が達成されてない場合は実践内容を見直します。
目標がめでたく達成されていた場合は、実践内容に無理がないか、継続可能かどうかを確認して、さらに高い目標に取り組んでも良いかと思います。決して無理はしないことです。
このように、計画→実践→フィードバック→計画のサイクルを自分のペースで続けていくことで、きっと内臓脂肪の燃焼をコントロールし、理想の体重や体質に近づけていくことができると思います。
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