カテゴリ:社会のできごと
畠山被告が衝撃の「自分の娘を橋から突き落とした」発言をしました。
これがほんとなら彼女は自分の子どもを殺したことになります。 さらに今度は愛知県でも9歳の娘を突き落として母親が殺してしまいました。 畠山被告はシングルマザー、愛知県の母親はご主人がいました。 でもどちらも子どもを突き落としました。 これで「なんて鬼母だろう。自分の子どもを殺すなんて」と眉をひそめることは、簡単です。 でも、この母親達が異常なのだ、と片づけて、それで終わっていいわけないのです。 私はずっと畠山被告は自分の娘までは殺していないはずだと思っていたし、信じていました。 でも現実は(彼女の証言が本当ならば)どうやら違うようです。 でもこれで「ほらやっぱり」で終わっていいのだろうか、と強いギモンがあります。 私は幸いにも作家という職業に恵まれて、今、とても仕事が充実しています。 でももし、天職に巡り会えていなかったら……。 それは、どうなっていたか、わかりません。だからとても他人事とは思えないのです。 子育ては幸せも多いけど、でも、とてもつらいことも多いのです。 神経がキリキリ言うことも、とても多いのです。 だから子どもを殺した母親ばかりを責めるのは、とても酷なことです。 生い立ちに問題がある、といって、家庭ばかりを責めるだけで、いいのでしょうか。 畠山被告は相当追いつめられた結果、そうなったのだと思うのです。 この事件を機に、ちょっとはみだしものの母親への視線は、温かいどころか、なお一層冷たいものになるのではないか、と危惧しています。 このままでは、母親による自分もしくは他人の子殺しは、増えていくでしょう。 そしてその心の闇は、各家庭だけで処理できないほどに、大きくなっているのではないでしょうか。 「金髪のマーガレット」という小説があります。1926年、いまから80年も前に書かれた、 海外の小説なのですが、そこには「マウント・ローン」というところがでてきます。 それが実在しているかどうかは知りませんが、ニューヨークにいるホームレスの子ども達のために、10日間だけ、とても楽しい環境を無償で与えてあげようという慈善施設です。子ども達はそこに招かれると、おいしいごはんや温かい寝床、綺麗な衣服、それから施設の方の心温まる教育をいただけるのです。 そしてどんな暗い顔をした子どもも、10日間が終わるころには、素晴らしい表情になって帰っていくのだそうです。 この話をときどき私は娘の寝しなに読み聞かせたりしているのですが、読むたびに感動します。 いま、日本の恵まれない子どもたちに、そういう環境を与えることができたら、どんなにいいでしょうか。 シングルマザーにせよ、今回の愛知の事件のように神経が疲れた母親にせよ、金銭的にも体力的にも時間的にも、子ども達を遠出させることは、難しいです。そんなのその家の事情だからしかたがないだろう、と言われればそれまでです。でももし日本にもマウントローンのようなところがあったら、どんなにいいでしょうね。 恵まれない境遇の家庭が、一層恵まれない立場に追いやられていく。 それが格差社会だとしても、どこかで、何らかの形で、追いつめられている状態の母親と子どもの心をほぐす必要があるのではないでしょうか。 たとえばシングルマザーになった直後の一年間はとてもつらいと言われます。 そのあいだだけでも、母親が月に一度の心理カウンセリングを無料で受けられるだけでも、かなり何かが違ってくる気がします。 追いつめられている母親達を見ないで過ごそうとすることは、簡単です。 でも今こそ、何らかの形で手を差し伸べるべきだと思っています。 この「金髪のマーガレット」は作者が有名な少女小説「ポリアンナ(パレアナ)物語」を書いたあとに、書かれた作品です。訳者あとがきに重要なことが書かれていました。 「「ポリアンナ(パレアナ)物語」では、個人の幸せだけを願っていた。 けれど「金髪のマーガレット」では社会の幸せを作者は願っているのではないか」 というような説でした。 深く同感します。自分の幸せだけを見つめていると、結局人間の度量は小さくなり、夢すらも見失いがちだと思うのです。今、幸せに子育てをしている方にも、それから子育てをしていない方にも、これからの子ども達の未来、それから追いつめられている母親達への対応策を、考えていただきたいなと思っています。 私ね、今回、娘を殺してしまったふたりの母親については、もちろんしてはいけないことをしてしまった、と思っています。亡くなったお子さんたちのご冥福も心より祈っています。でも、お母さんたちに対しては、 「10年近くも、よく、頑張って子育てしてこられましたね」 と、言ってあげたいです。 彼女たちなりにギリギリまで、10年間も、がんばってきたのだと私は思うのです。 普通に子育てをして、幸せに満ちた家庭にいる方には想像できない世界だとは思いますが、ほんとうにつらい思いで、子どもを育てているかただっているのです。家事が苦手な人がいるように、子育てが得意ではないかたがただって、大勢いるのです。私の周りにも大勢いるし、私だって子育てが得意だとは言えませんから。そしてそれだけ今、日本は、子育てすることが窮屈な国だと思うのです。 育てきれなくて殺してしまう前に、誰も相談できる人がいない。これって、つらいことですね。 (実際は児童相談所とかありますけど、そこまで行くのにどれだけ敷居が高いことか……) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年07月17日 08時29分02秒
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