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台湾役者日記

中文カタカナ化計画
どんなルビをつければ雰囲気が伝わるか?


たとえば「忠孝復興」というコトバをカタカナでどう表記するかという問題である。とりあえず四声は無視してピンインで表記すると、「zhong xiao fu xing」となるのだが、「zh」も「ong」も「xiao」も「fu」も「xing」も、ことごとく日本語にはない発音なので、当然のことながら、カタカナに直すのは無理、というのが実は正しい。

が、まあそれはそれとして、わたしは無理を承知で、カタカナを言わば発音記号と見なして、なんとか中文と「1対1」の対応をさせたいと思うのである。

それはなぜかと言うと、台湾でのいろいろを、とりあえず中文まじりで書きたい、そしてその中文にカタカナのルビを振りたいからなのである。(ゆくゆくは閩南語もまぜて書きたいが、今のところ閩南語はまったくできないので、とりあえずは中文からと考えている。)

で、中文は当然漢字で表記可能なんで、

「忠孝復興で待ち合わせた相手がいつまでたっても現れないと思ったら、俺の対角線のケーキ屋の前にいた。」

というような文章の「忠孝復興」のところにカタカナのルビを振りたいのである。

…と思っていたところ、家に置いてある小学館『日中辞典』を何気なく見てみたら、なんと巻末に「中国語拼音(ピンイン)-カタカナ対照表」なるものが付いているではないか!

この『日中辞典』は1987年初版のやつで、お世話になってる事務所に置いてあるもう1冊の2002年第2版の巻末には、こんな「対照表」は付いていない。

1987年と2002年、この15年の間にいったい何があったのか?

想像するに、初版では一応の「カタカナ中文」を確定しては見たものの日中の交流が拡大深化するにつれて「どうも実際の発音と違う」という声が高まり、第2版の執筆開始と同時に編集委員初会合の冒頭、「これ、やっぱ削除、っつうことで、ひとつ…」かなんか誰からともなく言い出し、反対の声もなく消えていったと、まあ、そういうようなことだったんじゃないかと思うのである。

しかしこれ、「中文カタカナ化」、やってみると開始後3分で気がつくが、むちゃくちゃ大変な作業ですぜ。それに、「どうも実際の発音と違う」つったって、そんなことは最初から百も承知のことなのだ!(って、想像上の「声」に対して興奮してどうするよ、おれ…)

この小学館『日中辞典』初版の「中国語拼音(ピンイン)-カタカナ対照表」、たいへんな労作であることはまちがいない。これを一から作ってみろと言われたら、これはもう、着手するまでに一週間は腕組みして考え込み、あげくの果てに知恵熱を発して会社病欠しちゃうという、たいへんな代物なのである。

ピンインを表記するためのアルファベットは25文字(どうも「v」は使わないようだ)。台湾の学校教育で使っている注音符号は37個。それに対してカタカナは清音濁音半濁音、拗音発音促音いろいろ合わせてまあ100音くらいは表現できるだろうから、子音と子音、母音と母音を対応させれば、とりあえず100くらいの音節にまとめて「カナ化」ができるんじゃないかな、……と思ったら大間違い。

『日中辞典』の「対照表」を、表にある通りの順番で、まずはExcelに全部打ち込んでみた。Excelでやったのは、あとでソート(並べ替え)機能を駆使してピンイン(アルファベット)順でもカナ順でもひけるようにしたかったからだ。ついでのことに、『日中辞典』にはない注音符号もあわせて打ち込んだ。わたしのパソコンのExcelは、注音符号順のソートもできるのだ。

さて、皆さん、聞いてください。どうなったと思います? 音節の総数は、驚くなかれ、417項目(音節)にものぼったのである!

ああ、一から全部自力でやり始める前にこの「対照表」を発見してよかったぁ~!

それではここで、小学館『日中辞典』1987年初版の巻末「中国語拼音(ピンイン)-カタカナ対照表」に付記されている「注」をご紹介しよう。

注:中国語の音節は400余りあり,変化に富んだものである.したがって,ここに示した日本語の50音順によるカタカナ表記は,あくまでも便宜的なものにすぎない.加えて,実際に発音するときには,母音の上に1声から4声までのトーンピッチ(声調・四声)をかぶせて発音する.以下,カナ表記の発音上の注意点を簡単に示す.<1>〔バ・ダ……〕などは濁音ではなくて無気清音.〔パ・タ……〕などは息を吐き出す有気音.<2>ここに示したのはすべて1音節なので滑らかに一気に発音し,カタカナ表記に影響されて2音節に分けないようにする.<3>「…【小さい】ヌ」「…ン」は韻尾「-n」「-ng」の区別である.<4>一部 shao〔シャオ〕と xiao〔シアオ〕など,語頭のカナ表記が同音になったものがあるが,中国の音ははっきり異なる.j, q, x, l などの舌面音に対し,zh, ch, sh, r の系列は舌先をぐっと奥へそらせたそり舌音である.

*<1><2>…は原文では○の中に数字。なんか「機種依存文字」つうことで、その通りに記入できませんでした。
*【小さい】というのは米七偶による注記。「小さいヌ」のフォントがこのパソコンでは打てないので。(←早くHTMLをマスターせぇよ、と……。)

さて、そこで懸案の「忠孝復興」である。「zhong xiao fu xing」。これを「対応表」で対応させるとどういうカナ表記になるか?

「忠孝復興」=「zhong xiao fu xing」=「ジョォンシアオフゥシン」
「忠孝復興」は「ジョォンシアオフゥシン」となるのである。どうですか?

どうですかと言われてもあいさつに困る、というのが大方のご感想でしょうな。

わたしには少々不満がある。いや、この「対照表」は非常に良くできている。なるべく原音(のイメージ)から離れないで日本語のカナをなんとか「対応」させようとしている。何度も言うが、やってみると分かります。これはたいへんな作業なのです。しかしながら、とりあえずわたしとしては二つの点を修正する改定案を提出したい(と言ってもこの「対応表」、『日中辞典』の第2版からは消えちゃってるんで、こっから先はもうわたしの「私案」に過ぎなくなるのだが……)。

(1)
小文字のカタカナはやめたい。と言うのも、中文(漢字)の横にこれをルビとして振った場合に、小文字だと細かすぎて読めそうにないので(つうか、そもそもルビには小文字が使えないんじゃないか?)。

(2)
「復」=「fu」を「フゥ」とすると、ピンインで「hu」と書く方の「護」とか「戶」とか「互」とかと区別ができない。「対応表」では、「hu」も「フゥ」になっているのである。

(1) の小文字の問題は、「ジョォンシアオフゥシン」を「ジヨオンシアオフウシン」としてしまえばよい。ほかの中文(漢字)の読みについても、「対応表」のカナのうち小文字になっている部分はそっくり大文字にしてしまって、そのまま利用させていただくということでよかろう。

問題は(2)である。「fu」と「hu」には、できれば違うカナ表記をあてたい。でもどうする?

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