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台湾役者日記

台湾役者日記

『三大怪獣…』

■『三大怪獣 地球最大の決戦』を観る。 ■ 05月16日(日)


台北市内のCD屋で発見した『摩斯拉傳奇(モスラ伝奇)』というVCDのパッケージは、380元(1200日本円くらいか?)で8作品16枚組(!)の超お買い得版。迷わず買ってしまった。

うちに帰ってパッケージをよく見ると、どうも中に入ってるのはモスラ映画だけじゃないようだ。

最初の (1)『大金剛』 は「ダアヂヌガン」と読む。「ヂヌガン」は「キングコング King Kong 」の英語音読み当て字。なんとこれ、1933年アメリカRKO製作の、元祖怪獣映画なのである。……どこが「モスラ伝奇」やねん!

次の (2)『大怪獸挑戰烏龜拉』。 「烏龜」は「ウーグエ」と読んで、この2文字で「カメ」を意味する。つまり「烏龜拉」は「ガメラ」なんである。『大怪獸挑戰烏龜拉』、すなわち、直訳タイトル『大怪獣がガメラに挑戦する』。VCD本体に印刷してある写真にはバルゴンが写ってるんで、これは『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年大映)に違いあるまい。……「モスラ伝奇」とちゃうやん!

(3)『三大怪獸大決戰』 でようやくモスラが出てくる。

その後は、

(4)『地球防衛軍』  1957年 東宝 『地球防衛軍』
(5)『怪獸總進級』  1968年 東宝 『怪獣総進撃』
(6)『大怪獸巴狼』  1958年 東宝 『大怪獣バラン』
(7)『烏龜拉力戰大魔獸』 直訳タイトル『ガメラが大魔獣と力戦する』 正体不明なるも「ガメラもの」。
(8)『宇宙大怪獸』 VCD本体の写真にギャオスらしきものが写ってるんで、おそらく 1967年 大映 『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』 ではないか?

これで見ると、モスラの出てくるのは(3)と(5)の2本だけ。それに対してガメラは3作品が入っている。『ガメラ伝奇』やん、どっちか言うたら……。

いま気がついたが、(5)の『怪獸總進級』の「級」は「撃」の誤植である。どっちの漢字も中文だと「ヂイ」と発音する。明らかに変換ミスだ。VCD本体にはちゃんと『怪獸總進撃』と印刷してあるが、パッケージの方では『怪獸總進級』となっている。これじゃあ「怪獣/全員レベルアップ!」みたいな意味になってしまい、故ジョン・キャンディが出てこないといけなくなってしまう。

ちなみに、日本語の「進級(学年が上がる)」は中文では「升級(ションヂイ)」というらしい。中文の「進級」は「初級」の対概念で、「上級」というような意味で使っているようだ。

***

さて、(3)『三大怪獸大決戰』 であるが、これの正体は、 『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年 東宝) である。ジャンプ先は allcinema ONLINE だ。変な写真へ飛んだりするわけではないのでご安心を。

allcinema ONLINEは映画に関するデータを調べるときには欠かせないサイトである。映画のタイトルや監督名をど忘れしたときなんか、このWEBサイトへ行けばいっぱつ(か2、3ぱつ)で、目指す固有名詞を見つけ出すことができる。

この怪獣映画のスジは、「モスラとゴジラとラドンがキングギドラをやっつける」というものである。もすこし詳しく言えば、「金星の文明を破壊したあと地球へやって来た怪獣キングギドラをモスラの仲介で手を組んだゴジラとラドンがやっつける」というものである。

allcinema ONLINEによれば初公開は1964年12月20日となっている。この映画をわたしは封切り当時、映画館で観た。7歳、小学1年生だった。

父親に連れられて初めて劇場で観た映画が、やはり東宝の『モスラ対ゴジラ』で、allcinema ONLINEによればその初公開は1964年4月29日となっている。『モスラ対ゴジラ』はゴールデンウィーク映画、『三大怪獣 地球最大の決戦』は、同じ年の冬休み映画だったわけだ。

『モスラ対ゴジラ』では、台風の過ぎ去った後の干拓地からゴジラの尻尾が出現するシーンにぶったまげた。これは映画や、ホンモノとちゃうんや、と、いくら子供でもそれは分かっていたはずなのだが、しかしやっぱり怖かった。とくに、ゴジラが名古屋城かどっかの天守閣の背後にゆらりと出現したり、石油コンビナートみたいなところをのっそりと進むシーンは、とてつもなく怖かった。

次に、『三大怪獣 地球最大の決戦』を観たときには、ゴジラは始めて見る顔でもないし、もうすでに怪獣映画の初体験は済ませてあるので、余裕を持って劇場に臨んだ。阿蘇山火口からラドンが出現するシーンも、怖かったとは言え、まあ「期待を裏切らぬおどろき」というくらいのものだった。

ところが、日本アルプス山中に落ちた隕石からキングギドラが出現したシーンには、7歳のわたしは再びぶったまげたのである。隕石は、強い磁力で周囲の物体を引き寄せる。やがて内部から発光し始めたかと思う間もなく、今度は光の粒子のようなものをさかんに放射する。その粒子が空中で凝固し、高原地方の漆黒の闇を背景にして、キングギドラが姿を現すのだった。

当時通っていた銭湯の脱衣場に貼ってあったポスターで、すでにキングギドラの造型は確認してあった。風呂上り、たまにビン入りのリンゴジュース(果汁0%)なんかを父に買ってもらって飲んだりしながら、弟とふたりでポスターをじっくり読み込み、新怪獣についての議論を交わしていたものだ。

まさかそいつが飛べるなどとは、思いも寄らなかった。弟は「飛べる」説を展開しており、わたしはそんな彼の幼稚園児らしい幼稚さを笑っていたのである。キングギドラは、その図体のでかさに対して、羽が小さすぎた。この羽はなんかの飾りなのではないか? というのがわたしの考えだった。キングギドラには長い首が3本もついている。胴体は、その3本の首を支える必要もあって、どちらかと言うとデブである。そんなやつが飛べるわけがないではないか。

ところがキングギドラは、その3つの頭から「反重力光線」を発射し、街を破壊しつつ、何の苦もなく飛行していくのであった。一緒に観ていた弟は、幼稚園児らしく、わたしに口で言い負かされたことをすでに忘れており、わたしはそれをいいことに自分の「理論」が破綻したことをひた隠しに隠して小学校時代をしのいだ。悪い兄であった。

なるほど武器が「反重力光線」なんだから自分の重力をコントロールするなんぞは始めっから朝飯前なんじゃねぇか、なんだよぉ、と言うのはずいぶん後で思いついた後知恵で、映画公開当時には、キングギドラが飛べるなんて予想もしていなかったのだ。

しかし、飛んでるやつ、というのは、じつはそれほど怖くはなかった。反重力光線を浴びたら一瞬にしてやられちゃうんだし、キングギドラが飛び去ってしまえばもう安全だ。怖かったのは、こいつが地上に降り立って、ゆっくり進みながらあちこちに光線を吐き散らすシーンだった。なかで鮮明に覚えているのは、どっかの神社の赤い鳥居のずっと先にキングギドラがいて、ゆっくりと暴れている、というシーンだ。これは怖くて、その後ときどき夢にも出てきた。

というような思い出に満ちた『三大怪獣 地球最大の決戦』を、このたびは思いもかけず、台湾で、VCDで、鑑賞することになったのである。とくにチェックしてみたかったのがキングギドラの隕石からの出現シーンと、夢にまで見た鳥居のシーンである。

が、なんと言うことか。わたしは今回の鑑賞で、たいへんなことを発見してしまったのである。それは、劇中で「セルジナ公国のマウス・ドウリナ・サルノ王女」を演じた女優、若林映子のことである。この人、わたし的には、もうズババババッとど真ん中に来るタイプだったんである。(この項、つづく、と思う)


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