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台湾役者日記

台湾役者日記

台北芸術大学『櫻桃園』


■台北芸術大学2004年夏季公演『櫻桃園』を観る。 ■ 05月21日(金)


今日は國立臺北藝術大學戲劇學院(国立台北芸術大学演劇コース?)の学生による舞台劇を観てきた。チェホフの『櫻桃園(インタオユエヌ=桜の園)』だ。今日が初日。5月30日の最終日まで、夜昼あわせて8回上演する。チケットは350元。わたしは事前に関係者を通して「団体客」扱いにしてもらい、250元で入場した。

『風中緋櫻』で「初子」を演じている柯奐如(コオ・ホアヌルウ)はここの学生なのだが、彼女がワーリャ役でこれに出ているのだ。

國立臺北藝術大學というのは台北市の北の端、北投区にあって、今回の公演も大学内の施設で行われる。事前に教えてもらったとおり、捷運(ヂエユヌ=MRT、市内・近郊電車網)・關渡(グアヌドウ)駅から大学の特別送迎バス(運賃10元)に乗って19時15分には会場に着いた。夜だったしなんか山の中みたいなところにあってその全貌をくまなく見るというわけにはいかなかったが、この大学、敷地も広ければ建築も新しい。

そのキャンパス内の「展演藝術中心」という建物の地下の戲劇廳(劇場)が、『桜の園』の会場だった。着いてみて驚いたが、この劇場、ずいぶん立派な施設である。舞台の奥行きも充分、舞台装置も本格的。わたしの席は前から二列目の下手寄りで、歌舞伎で言えば「かぶりつき」 (*)である。椅子のすわり心地も良い。振り向いてざっと見渡したところ、一階席だけで300人は軽く収容できそうだ。二階席にも相当数が入れそうだし、まさに「天井桟敷」といった体の三階席まで付いている。

(*)「かぶりつき」について
日比野利裕さんのサイト 「かぶきのおはなし」 は歌舞伎の歴史、役者家系、歌舞伎にまつわる用語などについて、懇切に解説してあるすばらしいサイトです。その 「62.かぶりつき」のページ を読めば、この言葉の語源について知ることができます。


このまま市内中心部へもっていけば、商業劇場としても充分にやっていける規模と設備。それはまあ、俳優を養成する教育・研究施設なんだからかくあって然るべき、とは言うものの、役者を育てるだけならなにもここまでしなくても良いのかもしれない。

実はこの大学では役者のほかに各種スタッフも養成しているのである。50元で買い求めた今回公演の「節目表(ヂエムウビアオ=プログラム)」のスタッフリストを見ると、役者と音楽演奏を除いて(あと作者のチェホフも除いて)100人以上の人間がこの公演のために働いている。各部門のディレクター級に教授や外部の指導者を配しているが、大部分はここの学生なのだ。

「導演(ダオイエヌ=ドラマの演出家、映画の監督)」は黃建業(ホアン・ヂエヌイエ)という人だ。プログラムにある紹介文には生年が書いてないが、写真は載っている。ロビーでもお見かけしたが、50代くらい(違ってたらたいへん申し訳ないが)に見える、やや恰幅のよい小柄な人で、温和そうな、にこやかな表情の底に強い意志が隠されている感じが、ドイツ出身の名優、クラウス・マリア・ブランダウアーに酷似している。欧州的な渋さをもった人である。

紹介文によれば、この演出家・黃先生は芸術大学の演劇コースおよび映画創作大学院の教授だ。舞台演出の経歴も長いが、著作一覧を見ると映画の本ばっかり書いている。1999年発行『電影辭典(デイエヌイン ツーデイエヌ=映画辞典)』の編集主幹なんかもしているほかに、1994年の時点で『楊徳昌電影研究(ヤン・デエチヤン デイエヌイン イエヌヂウ=エドワード・ヤン映画研究)』なんてのも書いている。まるで佐藤忠男と蓮實重彥と千田是也を一人で兼ねているような人物だ(ただし千田是也の役者部分を除く)。

そういうたいへんな人が演出にあたっているのである。これはもう、アマチュア学生の練習発表会、というようなものではない。劇の中身については後ほど語るとして、舞台美術、音楽、照明、衣装、すべてが本格的、あるいは「本格的以上」の、すばらしい水準にある公演なのだ。

(あとで、つうか、日を改めて、また書き足し・・・)


■ 台北芸術大学『櫻桃園』(2) ■ 05月30日(日)


國立臺北藝術大學戲劇學院(国立台北芸術大学演劇コース)の学生による舞台劇、チェホフの『櫻桃園(インタオユエヌ=桜の園)』。

5月21日の初日のことをその日の「日記」に書きかけて、書き終わらないうちに、今日が千秋楽。また行ってきちゃいました(!)。21日の「日記」の続きはいつかまた書くとして、とりあえず今日のことをメモ。

***

あらかじめ初日と最終日の切符がほしいと頼んであったのだが、今日は「招待券」を準備してくれてたので無料で入場できた。その代わり席は2階。番号を振ってないパイプ椅子の自由席だ。下手側に坐る。舞台からは遠くなるが、そのかわり全体が見渡せる。今日は14時30分開演(じっさいは45分頃開始)で、終演後、「演出劇評會(上演劇評会)」があった。

21日の「日記」の続きになるが、今回の公演は、舞台装置と照明、それに音楽がすばらしい。

まず舞台最前面の幕。普通は緞帳のような分厚い幕を使うんだと思うが、これが寒冷紗のような白い半透明の幕になっている。幕間(まくあい)には、そこへ正面から照明が当てられる。照明は影絵になっていて、第一幕が始まるまでは樹影のような、第四幕の前には降りしきる雪のような、抽象的な形が浮かび上がる仕掛けだ。第二幕、第三幕のはじまるまでの「影絵」はちょっと抽象的過ぎてうまく描写できないが、第二幕の「野外。/間もなく日が沈む時刻。」、第三幕の「アーチで奥の広間と区切られた客間。シャンデリアがともっている。/宵。」に、それぞれふさわしい形象と色使いになっていた。

静かでさびしみのこもった音楽が流れるなか、この正面幕の影絵で、芝居の雰囲気は始まる前から盛り上がってくる。そして劇が始まるのだが、幕が上がる前に、まず正面からの照明が(したがって「影絵」が)ゆっくりと消え、舞台上のライトが明るくなっていく。つまり、今までは観客席が明るく舞台が暗く、したがってわれわれは舞台を見通せなかったのが、明暗おもむろに逆転して、客席が暗く舞台が明るくなり、観客は向こうを見通せるようになるわけだ。今まで「影絵」のスクリーンになっていた寒冷紗(のような半透明の布)の幕越しに、これから動き始めるであろう人物たちの彫像のように立ったり坐ったりしているのが、浮かび上がってくるのだ。

(ついつい有線TVの映画『訣別の街』に見入ってしまい、身を入れて書けなかった。後日加筆・・・すると思う。)


メモ■

*役者はみんな良かった。
*トロフィーモフ(ピョートル)とフィールスとガーエフがたいへん良かった。
*ロパーヒンはたいへんたいへん良かった。


メモ■上演劇評会におけるわたしの発言要旨

中文不是我的母語 . 我講得會非常不流利
請大家忍耐一下

剛才紀老師有發問為什麼羅巴金不能對瓦利亞求婚哪 ?
我有我的答案想要給大家聽

為了要看這個戲 , 今年三月回日本的時候 , 我有買一本書
就是 "櫻桃園" 日文版
"櫻桃園" 封面上契柯夫有寫 "四幕喜劇"
一看完這部劇本之後我一直發問
這是為什麼會叫 "喜劇"?
這部戲我覺得很悲哀

我今天看完這部戲才發現答案

如果這是 "喜劇" , 主角是誰 ?
從誰的角度來看的話 , 可以笑這個結束 ?

我認為這部戲的主角不是人
我想這部戲的主角是羅巴金手上的錢
羅巴金自己不是主角
他的資本就是 "櫻桃園" 的主角

羅巴金的資本的立場來講的話
這部戲的結束就是 "成功"
它贏了

羅巴金自己不是主角 , 他不會贏
所以他當然不能對瓦利亞求婚

羅巴金的資本是主角的話
配角是誰

我想配角是大學生彼得的思想
彼得他自己並不是配角
他的頭腦裡面的思想就是配角

彼得說他跟安妮亞的關係 "超越愛情"
"超越愛情" 還不是愛情
他也不是他自己的主人

主角是錢 , 配角是思想
契柯夫應該有這些構想
所以他決定這部戲是喜劇

我們知道俄羅斯的歷史
看這部戲的我們還是會覺得悲哀

契柯夫的戲劇好像鏡子
這個鏡子它自己好好笑
但是鏡子上面看到的我自己
還是一個很悲哀的世界當中生活的小人物


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