空は終わりが見えない程に。
海は途方もない広さで景色を埋め尽くしている。
メキシコのシワタネホという町で、
小さなホテルを経営するのがアンディの夢。
ショーシャンク刑務所の塀の中で
10年、15年という時間を過ごしても色褪せぬ、
アンディ・デュフレーンの夢。

妻と愛人を殺した罪で逮捕されるまで、
彼は身なりも佇まいもすべて銀行の若き副頭取、
それなりに安寧な人生を約束されているように見えた。
だが、刑務所に入れば、ただの受刑者、
無実だと訴えたところで誰も彼も同じことを言っている。
しかも、1年目は賭けや性的暴力の対象に過ぎない。
それでも「人」というものの価値は、
時を経てこそ、認められることもある。
穏やかで落ち着いた佇まいはずっと変わらず、
看守にも受刑者にも彼は一目置かれるようになっていた。

「刑務所のリタ・ヘイワーズ」
ショー・シャンクでの時間の流れが々が
アンディの部屋の壁の女優のポスターに変遷となる。
マリリン・モンローになり、ラクエル・ウェルチとなる。
時間とともに変わってゆくのは「人」の表層、
めくれて、破れて、古くなり、
やがて、張り直される。
その表層の内面には、卑小で、地味で、
他人には何の価値もないものが隠れていて、
実はそれに気付くだけでも、時間がかかるもので、
誰もが見つけられるとは限らない。
もし幸運にも見つけることができたとしても、
守り抜くための戦いは
困難を極めるものなのである。

アンディの盟友となるレッド、
仮釈放の審査で不合格の烙印を押される。
「もう、完全に更正しました」
ショーシャンクの調達係の口から幾度も発せられる
力無く、虚しく響く台詞。
アンディの前任者の図書係のブルックス老人は、
50年以上の刑務所生活から放り出されて、
行き場を失ってしまう。

敗れ去る者も多いのだ。
卑小で、地味で、
他人には何の価値もないもの、
それを守るための、困難を極める戦い。

刑務所生活が20年を過ぎた頃、
若いトミーという新入りが、アンディに転機をもたらす。
妻と愛人を殺した本当の犯人の輪郭が浮かび上がり、
無罪の再審請求に動き出すアンディ。
だが、所長は、脱税に手を貸していた彼を、
刑務所から出そうとはしない。
そして、読み書きを学び初めたトミーの、
若い人生の命をも奪われてしまう。

女優のポスターはめくれば、
細いトンネルが延々とと続いていた。
27年間。
アンディはレッドに調達してもらったロックハンマーで
ずっと、ずっと、トンネルを掘り続けていた。
女優の姿は変われでも、
彼のずっと変わらず持ち続けた
一人、長く細いトンネルをくぐり、
塀の向こうに出るまでは。

たった、一つ。
彼はそれを守り続けたのだ。

フランク・ダラボン監督の映像は、
人間の喜怒哀楽を穏やかに輝かせる。
ディム・ロビンスは、余計な演技を何ひとつせず、
じっくりとアンディに向き合っている。
レッドはモーガン・フリーマン。
釈放されてからの彼の演技に
レッドの全てが詰まっている。

守り続けたとしても、
その先に幸せな未来があるとは限らない。
屈服することも勇気となることはある。
だが、全ての夢の実現は、
諦めないことから始まっている。
女優の姿は変われでも、
アンディは空と海を目指し続けていた。
そのたった一つを守り続けていた。