チェリー(かをりの場合)
アレがほしいの!欲しくて、欲しくて、たまらないの。ねぇ、ちょうだい?キスをちょうだい?冷たいキスじゃいやなの、熱いキスが欲しいのっ!ん。何、口尖らしてるの?やめてよ!あたしが欲しいのはアンタの皿にあるキスのてんぷらだよ、バカ!(指し箸で。) 悪ふざけが過ぎました。かをりです。キスのてんぷらよりキスが大好き!かをりです。チェリー。その甘美な言葉の響きにあなたは何を思い浮かべますか?あたしは、あの日のことを思い出します。高校1年の春休み。当時付き合っていたヒロシくん(仮名)の家に遊びにいきました。ヒロシくんの両親は共働きで、家の中には二人きり。高校1年とはいえ、あたしもバカではないので密室で相思相愛の男女が二人きりになれば何が始まるかもわかってました。自然な流れでそれは始まり、「あたしはどうなるんだろう」という不安と「別にこれくらいのこと、どうってことないや」という強がった気持ちがこんがらがり、成されるがままでした。(いわゆるマグロだ。)けれど、体は正直で自分の敏感な部分にヒロシくんの手が触れると体が火照ってくるのが自分でもわかり、そういう自分が居ることとそういう自分を好きな人に見られてることがとても恥ずかしいのでした。 ヒ「かをりちゃんさ・・・。」 か「ん?」 ヒ「初めてじゃないでしょ?」 か「初めてだけど・・・どうして?」 ヒ「だ、だって この濡れ方は異常だよ?(笑)」ガビーン。・・・異常、て。その上、処女じゃない疑惑?!まあ、なんだかんだ言われましたが事は終わり、ヒロシくんは一人でスッキリしやがってヒロシくんが最後に一言こう発したのです。 ヒ「やっぱりかをりちゃん、処女じゃないよね。」ガビーン。すでに処女じゃない断定!こんなほろ苦いあたしの処女喪失の時に彼の部屋のステレオから流れてたのはスピッツの『チェリー』でした。まじで。二度と戻れないくすぐり合って転げた日きっと想像した以上に騒がしい未来が僕を待ってる"愛してる"の響きだけで強くなれる気がしたよ・・・・。戻りたくねーよ!処女を断固否定された日なんかに!でも、ひとつだけ確かなのはあの頃よりは強くなれた気がするよ。 引用:「チェリー」草野正宗