噛まれた話
今、私の左手は、腫れに腫れてる。なんでって?ノアのヤロウに噛まれたのだ。 被告ノア うちには小さな食庫があって、そこにキャットフードなんかもしまってあるのだけれど、昨日の午後、台所仕事をしていると、その食庫のあたりから、バリバリ、ガリガリ…と妙な音がする。見に行くと、いつもは鍵がかかっているはずの扉があいていて、ノアが、届いたばかりのフードの袋にかぶりついてた。コラっ!!怒号と共に、私はノアの背中をひっ掴んだ。と、ノアのやつ、逆ギレしやがった。空中で手足をじたばたさせながら、体をひねって、私の手の甲を、ガブリ。しかも本噛み。犬歯が肌にめり込んで、穴が開いた。まさかの出来事に、アタマは真っ白。猫との生活に、噛まれたり引っかかれたりは、つきものだけど、本気で攻撃をくらうなんて、夢にも思わない。いや、ノアだって、突然あんまりな怒られ方をしたもんで、びっくりして噛む加減を誤ったんだと思う。噛んだ後、しばらくは、所在なさそうにして、ごはんもほとんど食べなかった。でも、噛まれたこと、しかも、噛んだのが、温厚を絵に描いたような性格のノアだったなんて、ショックすぎた。傷口には、猛烈な熱さと痛み。噛まれた辺りはもちろん、肘から肩までじんじんして、震えが止まらない。手の甲が、紫色に変色し、腫れあがった。噛まれるって、こんなに痛いんだ…。体重たかだか6キロ程度の猫の歯でも、大人の腕一本痺れさせる威力を持っている。もし、大型犬なんかに噛まれたら…。時々、世間をにぎわす犬の咬傷事件のことが頭をよぎった。それから、自分がかつて、犬に噛まれて、大けがしかけた出来事を思い出した。 ちょこっと休憩 紅葉をバックに…マイキー まだアンバーがいた頃のこと。散歩していると、4,50キロはありそうな、とてつもなくデカイ和系の雑種が、低い声で唸りながら突進してきて、咄嗟に、アンバーをかばう格好で立ちふさがった私の脇腹に、噛みついたのだ。飼い主は、ダウン症の青年。信じがたいことに、ヘルパーもつけず、ひとりで犬を散歩させていたところに、たまたま私とアンバーが通りかかり、襲われた。私のケガは奇蹟的に軽症で済んだ。飛びかかられて、吹っ飛んだ拍子に、アンバーのリードが離れ、それに釣られた相手の犬が、逃げたアンバーを追いかけたおかげで助かったのだ。だけどかわいそうなのはアンバーだ。逃げる途中で、ボケ犬にのしかかられたんだろう、お尻には、歯の後らしき赤い筋状の腫れが残り、肉球はすりむけて出血。私の脇腹も、内出血して、歯型がくっきり浮かび上がっていた。噛まれた部分は紫色に腫れあがり、ひどく傷んだ。これは、れっきとした咬傷事件だ。しかし、知的障害のある飼い主には、今何が起こっているのか、自分の犬が何をしたか、そうして、自分がこれからどうすべきか、当然わかるはずもなく、辺りが騒然となる中、いつの間にか犬を連れて、その場から姿を消してしまった。(犬は、偶然通りかかった顔見知りの訓練士さん(警察犬のベテラン訓練士だった)が捕まえてくれた)怒りのやり場がなかった。責任を問うにも、訴える相手も、訴え出る場もなく、長いこと、気持のおさまらなかった。もう、何年も前の出来事だ。それでも、何かの拍子に、あの時の、目を血走らせた犬の顔や、我が犬が襲われるのをどうしてやることも出来なかった己の無力が、絶望と共によみがえる。 今日も読んでくれてありがとう。 もし、私のケガが重篤で、病院に搬送でもされていたら、アンバーの身の上はどうなっていたんだろう。想像するとゾッとします…。