神話から学ぶ、パターン(お約束)を読む力
♪口笛はなぜー 遠くまで聞こえるの~「それは音の速さが……」「山田くーん、楽太郎の座布団一枚持ってってー!」てなわけでお元気ですか。船沢です。 (((゚д゚;)))) 今回はダントツな成功を目指す経営者&ビジネスパーソンに、またクリエイターを目指すヤング&ミセス(どっちも死語)に、ちょいといい話を。 当サイトの読者ならばご存知かと思いますが、私の“心のメンター” 神田昌典先生は、コンサルタントとしてのノウハウを駆使して、起業家小説としては異例のベストセラー『成功者の告白』(講談社)を発表しています。また最近では月刊小説誌「文蔵」(PHP研究所)にて、近未来小説『フリーター五右衛門』を好評連載中です。多くの人は、小説や脚本を書く……といったクリエイティブな作業は、感性の領域であり、凡人とか、堅苦しい文章を書く学者やエリートビジネスマンなどとは無縁のもの――そう思っているのではないでしょうか。実は私自身もそう思うと同時に、その一点のみを重視する文学界・クリエイター業界の考え方にも常に疑問を抱き続けていました。まあ確かに、さながら「お筆先」よろしく、感性の赴くままに原稿を書ける作家もいますが、そんな人材はほんの一握りです。神田先生も「そんな芸当、とても自分にはできない」と言っています。 ではなぜ、本職の小説家でもない神田先生が、小説を書くことができたのか?その鍵を握るのが「汎化能力」。つまり「パターンを認識する能力」です。一見何でもないような事柄や、抽象的な事物などから、何らかの共通する特徴、あるいは普遍的な要素を見極め、抽出できる能力のことを言います。「コツをつかむ」「波を読む」といった抽象的・感覚的概念も、この汎化能力によるものです。いわゆるノウハウ本を書くことのできる人は、おおむねこの能力が人より優れているといわれています。ところが、成績重視・減点評価主義による近代日本の学校教育においては、この能力はほとんど評価されることがありません。というより、この能力を問うカリキュラム自体が存在しません。そのため、多くの子どもたちが、この能力がなんの役に立つのか分からないまま大人になり、そして死んでいきます。(※実社会では役に立たないとされる能力、評価されない能力を持つがゆえに、悩んでいる子供や大人は数多く存在しています。またニート・引きこもりの中には、そのことで社会・組織から疎外感を感じている者も少なくありません。この問題については、いずれ日を改めてご紹介します。) 話を元に戻しましょう。神田先生は、「顧客獲得実践会」(現在は休会)の会員1万社に儲かるためのノウハウを授け、一方で年間2千社からの経営相談を受けています。その過程では、人となりを知るために、またトラブルの源泉を探るために、家庭内の事情にも踏み込むこともあるわけです。これだけのクライアントを相手にしていると、そうしているうちに、ある種のパターンのようなものが見えてきます。実はそのパターンが、いにしえより連綿と続く、神話や物語のパターンとあまりにも酷似していたのです。 ほとんどの人が、「自分だけは特別だ」「うちの環境は特殊だから」と思い込んでいます。しかし、要点のみを抜き出していくと、見事にある種のパターンに合致するのです。これは現実の人生のみならず、どんなマンガやアニメ、文学であっても例外ではありません。まあ多少はあるかと思いますが、それもほんのごく一部です。ただ、物語の舞台・世界観・登場人物・セリフが違うというだけで、本質はほとんど変化しません。その見た目の違いを、私たちが勝手に「多様性」と呼んでいるにすぎないのです。にもかかわらず、見た目にとらわれているばっかりに、多くの企業や家庭が「神話のパターン」にはまっています。それこそが、近代以降の社会の現実であり、多くのひずみを生み出している要因になっているのです。私たちが「運命」とか「宿命」と呼んでいるものさえも、実は神話的な人生のパターンの繰り返しに過ぎないのです。 この話を聞いて、「信じられない」「気分が悪い」という人もいるかと思います。「そんなに簡単に予見されるほど、俺の人生は安っぽくない」そういう人もいるでしょう。……でも、これが真実です。 神田先生は、まさにそのことを伝えるために、小説『成功者の法則』を書き上げたといっても過言ではありません。なぜなら、パターンを知ることができれば、パターンを超える行動を起こすことが可能だからです。物語の「お約束」の、その先や裏を行く展開を、人生の中で生み出すことができるようになります。トラブルとは無縁の、波風のない人生を送ることは、残念ながら不可能です。山があれば、谷があります。光が当たれば、必ず影ができます。これはどうしても避けることができません。でも、その谷間や影をできるだけ最小化して、ダメージを減らすことはできます。こうして神田先生は、神話のパターンを用いて、多くの企業だけでなく、崩壊の危機にあったご自身の家庭さえも救うことができたのです。そしてその極意を本に託して、より多くの人々と分かち合うことができたのです。 さて、神田先生が小説を書き上げることを可能にした、そのメカニズムを探ってみましょう。前述のように、神田先生は本職の作家とは違い、感覚のみを頼りに筆を走らせることはできません。また本来の仕事もある中、限られた時間で世界を構築し、話を進めながら、何人もの登場人物を生き生きと動かすことが要求されます。そこで、登場人物や舞台の設定に、神話学・心理学・占星術などを応用した、先進的な方法が使われています。 たとえば、登場人物それぞれに、3世代に渡るバックグラウンドストーリーが用意されています。本編には描かれない、バックグラウンドストーリーや舞台背景などのコンテキストをつくるのは、名うての作家なら誰でもやっていることです。でも、それを3世代にさかのぼって積み重ねるとなると、ちょっと事情が違います。その人はどんな母親の元で育てられ、父親から何を教わって育ってきたか。その結果、どのように成長し、どういうパラダイムを持ち、現在に至ったのか。そして、父母の両親はどういう性格で、どう彼らを育ててきたのか……。それぞれがいかなる葛藤を経て、どう成長し、どんなゴールに到達するのか。そこまで細部にこだわって、考証がなされています。もうひとつのメソッドは、シーンの設定に、登場人物の深層心理を反映しているということです。場所、気温、湿度、時間、明るさ、音、空気……人物のセリフをあえて使わずとも、これらのコンテキストによって人物の内面を舞台そのものに「語らせる」ことができるのです。 特に、登場人物に対してどのようなゴール(達成目標と、人生における学び)を期待するのかという点は、ものすごく重要です。なぜなら、作家を目指す人々――特に40代以下の若い世代は、ストーリーや人物、世界観、ガジェット(可動式の小道具)などにはやたらと力を入れますが、登場人物にどんな結末を迎えさせたいのか、また彼ら(と読者)がどのような学びを得るのかについてまでは、ほとんど考慮されていないことが多いからです。 どんなドキュメント(文書)もそうですが、読者が理解・気づき・学びを得ることができないコンテント(文書の中身)は、往々にして書き手が酔ってしまい、独りよがりになってしまっています。その原因は、ドキュメントのプロセス(構成)とゴール(文書の目的=読者が得る学び)が明確になっていないことにあります。そのため、当初の目的を見失い、迷った挙句、収拾がつかなくなるのです。 かく言う私自身も、その泥沼にハマっていた一人でした。今でもよほど注意していないと、すぐにやってしまうかもしれません。ちなみに、「広げた大風呂敷を元に戻せない」といわれている、朝のヒーロー特撮でおなじみの某ドラマプロデューサーも、きっとこの呪縛にやられていると思います(実はその人の本も買いました。それだけにこの評価は惜しい)。ありゃたぶん、脚本家のせいじゃありません。もう製作陣以下、スタッフ全員「フォトリーディング」(R)と「マインドマッピング」(R)を必修にすべきです。 (※参考文献はこちら) 今回の内容をもっと深く知りたい方のために、おすすめ図書も挙げておきます。『昔話の形態学』 ウラジーミル・プロップ著 北岡誠司、福田美智代訳(水声社)『千の顔をもつ英雄』 ジョゼフ・キャンベル著 平田武晴、浅輪幸夫監訳(人文書院)『神話の法則 ライターズ・ジャーニー』 クリストファー・ボグラー著 岡田勲監訳 講元美香訳(愛育社)余談ですが、私のIEの「お気に入り」(メニューバーの★マークを押すと開くやつ)が大変なことになっています。調べてみたら、ショートカットの数が2,134(重複含む)、フォルダの数が428、サイズが8.3メガバイト(フロッピーディスク約7枚分)でした(5月21日14:00現在)。左側にペイン(小窓)を開くと、いきなり全部がフォルダです。実を言うと、そのこともあって、ブログ上の「日記お気に入り」や「ブックマーク」にはかなり制限を加えています(どう考えても入り切らないのが目に見えている)。すぐ使うものですから、ぼんぼんとこっち側(←左ペイン)にマークを放り込んでいます。このブックマークを「詰め合わせ」にして送ろうかな、と考えていたりしますが、どうですか。春風亭昇太が、初大喜利してはなかなかの大活躍でした。 \(^o^)/今回はこんなところで。ではまた。 m(_ _)m