恩讐の彼方に 南風一
俺が好きだったちょっとお澄まし顔の
生意気な小娘
そんなきみはもう何処にも
いないだろう
きみによく似た他人の空似は
どこかを探せば
いるのかも知れない
恩讐の彼方に
とはいかないまでも
きみはもうすっかり俺のことなど忘れてしまっただろう
俺もきみに対する拘りは
とうに無くなってしまった
若い日のきみに係わる苦悩って
一体何だったのかな?
こんな風にして
生きて
そして消えて行くのかなと想う
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人を好きになる 南風一
きみを好きだったのではなく
意のままにならない感情を
受け入れられなかった
自分がコントロールできない感情を
許せなかった
人を好きになるということは
つまりそういうこと
コントロールできる好きなんて
好きでも何でもないだろう
それでも
好きという感情を許せなかった
コントロールできない感情は捨て去らねばならない
そんなことができないから
きみから逃げるしかなかった
鉄のような心を持った男
きみがそう想っていたら
成功さ
でもきみは多分知っていただろう
「痩せ我慢ばかりして
なぜ自分に素直になれなかったの?」
「そんな風に振舞ったところで
一生の後悔ものよ」
さてきみの想像した通りだったか
それとも鉄が勝ったか
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きみはちっとも変わってない 南風一
会わなければ何とも想わなくなるもので
きみと会って
会わなければ会わないで
何とかなるものだなあと
悟った
きみと久々に共同作業をして
おれがデータを読み上げる間合いが悪いときなど
きみは遠慮会釈なく
「ちょっと待って!」
「私がハイと言うまで次に進まないで」と注文をつけてくる
そんなところは
ちっとも変わってない
それがきみの良さなんだろうけれどね
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何年前のことかな 南風一
仕事を利用するつもりなんて毛頭なかった
きみだって仕事とプライベートは別
だから素早く反応したに違いなかった
「会社から借りている携帯なので仕事以外でかけて来られると
困るんです。
昨日はちょうど接待の最中だったんです」
これまでに見たことのないきみの怒った顔を見て
「そうかこれは仕事の顔じゃないんだ
プライベートになればきみもこういう顔つきになるんだ!」
(きみから放たれた言葉の意味は横に置いておいて)
とにかくこれは発見というかこれはちょっとした感動ものだった
のんきに俺はそんな風に考えていた
「なぜ俺は一線を越えて
きみに何度も電話をしたのかな?」
何かを期待したのは間違いない
きみが好意的に応じてくれたら
デートなんかを楽しんで
その後何を期待したのかな?
今から想えば
能天気にもほどがあったね
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何日会ってないかな? 南風一
無性にきみのことが想い出される日
以前のようにもしかして(俺に好意を寄せているのかも?)
なんて想うこともなくなったから
大したことを想像するわけでもない
ただきみの裸体を想像してしまうのは
どう説明すればいいのだろう?
もはや叶わぬ恋だから
(想像の世界で)
想像だけをたくましくしている?
それとも本当にきみを恋しく想っていたのかな?
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4月2日 南風一
俺が好きだった彼女は
学年で一番の早生まれだった
だから今なら5十云歳ということになる
(にわかには信じがたいことだ)
地方の田舎から都会に出て
何に悩んでいたのか今となっては定かではない学生時代を終えて
きみにいつでも電話できる仲になって
ようやく天にも昇る気持ちとはこういうものかと
悟った
きみはあけすけに
好きな職場の同僚のことを話したし
俺も半分本気 でも半分冗談で
もしきみの恋が実らなかったら
俺と結婚しようなんて言ったかも知れない
そうこうするうちに
俺は結婚することになって
半年ぶりだったかな
きみに電話した
俺が結婚したと切り出すと
きみはきつい口調で怒った
「よくもまあ奥さんのことも考えず
恥も外聞もなくぬけぬけ私のところに電話をかけて来れたものね」
「分かった。ごめん
二度と電話しないから。じゃあ」
あれからもう26年
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夢の形 南風一
目覚まし時計が鳴って
もう少しと思っているうちに
夢を見た
高校2年の新学期が始まるというので
体育館に午後集まれという
新しい校舎を迷いながらようよう体育館にたどり着くと
館内は新入生でいっぱいだった
同級生は?と館内を見渡すけれど
見知っている級友たちの姿は見えない
どうも奥の壁にクラス編成表を貼り出しているらしいので
押し合い圧し合いしながら壁を見上げる
すぐ前の上級生女子のお尻をぐいぐい押すようになったが
彼女の方もそのことに気付いているらしく
ちらりと俺の方に視線を投げてよこした
体育館の隅の方へ行くと
中学校の同級生に会った
そのまま温泉ルームに入ると
若い女性が素っ裸になって風呂につかっていた
これはやばいと思って別のドアから入り直した
今度は俺が素っ裸になって洗い場に突っ立っていると
ドアが開いて素っ裸の女性が入ってきた
・・・・・
そこで目が覚めた
日頃頭の中にある妄想というものは
眠っていたところで
どこでひっよこり頭を出すとも限らない
いつも考えていることが
ない混ぜになって夢の形で現れたのだろう
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