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ご挨拶


おちゃのま*しねま<O'cha-no-ma*Cinema> [全953件]

January 20, 2012楽天プロフィール Add to Google XML

  「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」愛する人が記憶をなくしてゆき、違う誰かに恋をしたら・・・。長年連れ添った夫婦の深く複雑な愛を描く傑作。 


「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」【AWAY FROM HER】2006年・カナダ
監督・脚本:サラ・ポーリー
原作:アリス・マンロー
短編集「イラクサ」より「クマが山を越えてきた」

製作総指揮:アトム・エゴヤン

俳優:ジュリー・クリスティ・・・フィオーナ
   ゴードン・ピンセント・・・フィオーナの夫、グラント
   マイケル・マーフィ・・・オーブリー
   オリンピア・デュカキス・・・オーブリーの妻、マリアン
   クリステン・トムソン・・・看護婦、クリスティ
   ウェンディ・クルーソン・・・老人ホーム主任、モンペリエ

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グラントとフィオーナは結婚して44年。子供はいないが仲睦まじく、老いても
夫婦の営みもある。
グラントは大学教授時代、教え子に手をつけまくり妻に心労をかけたが
20年前、過去と決別し、静かな場所で愛妻と人生の黄昏を見つめる日々。

だが、まだ老婆ではないフィオーナにアルツハイマーの症状が・・・。
真冬の夜、徘徊するにいたって、フィオーナは老人ホームに入居する決意を固める。
夫グラントはどうしても気が進まなかったが、フィオーナの決意は固かった。

ホームの規則で一ヶ月の間、面会も電話も許されなかった間に
フィオーナの記憶からグラントは消え去っていた・・・。

そして彼女の心を占めていたのは、無口な車いすの老人オーブリー。
フィオーナはオーブリーに恋していた。
甲斐甲斐しく世話をやき、傍目から夫婦としか見えないほど・・・。

苦悩するグラントは、ある考えを胸に、オーブリーの妻、マリアンの自宅を訪ねるのだった・・・。
お前の亭主が妻を奪ったと抗議されるものと警戒していたマリアンだが
グラントは意外な言葉を口にする・・・。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

ハリウッド嫌いと公言する気鋭の女優サラ・ポーリーの初監督作品。
まだ二十代半ばで、すごいと思う反面、二十代だからこそ、撮れたのかも、とも思う。

アルツハイマーの妻を献身的に介護する夫の物語では、ない。
そういった種類の映画はたくさんあるが・・・。

これは確かに「夫婦愛」の物語であるが
切り口が違う。

愛していたら、どうするか。
一緒にいる。相手の幸福を願って去る、形はそれぞれ。
愛し合う夫婦の数だけ、違う選択があるはずだ。

そして、相手によかれと思ってとった行動が必ずしも相手を幸福にはしない。
だが、それを「間違った愛」などと誰かいえようか。

男女の、いいえ連れ添った夫婦の愛というのは、恋人のそれとは違う。

そして、女の愛と、男の愛は、かくも違うのだ。

待つ愛、棄てない愛、取り戻す愛、許す愛、諦める愛、尽くす愛、受け入れる愛、罰する愛、奪う愛、すがる愛、埋める愛

そのどれもが、愛だ。
だが、それを心から認められるのは、長年生きてきた人間でないときっと無理かもしれない。


老人介護の看護婦が言う。
「亡くなるとき、いい人生だったというのは大抵ご主人のほう。
奥さまは違います。」

老人ホームで、女性のほうが男性を追い回し夢中になりベッドにもぐりこむケースが多い、という話に、女として納得がゆく。

男は女に疲れて老いてゆくのかもしれない。
女は男に惚れて若返る。


人は、忘れられることを悲しむいきもの。
忘れてゆくのは不安だが
忘れてしまうことの無垢な幸福・・・。

だが、忘れるほうも忘れられるほうも、心臓が鼓動するかぎり
生きてゆかねばならない。
忘れられたほうの夫と妻は、伏して泣くのではなく、手をとりあって新しい跡を
雪につけようとする。

過去、ではなく、今と未来のために。
生きてゆくということ。
食べる、暮らす、生理的欲求や人間らしい悦びを満たす。

自分にも、愛する相手にも、それを贈ろうとする。

雪原にくっきりとついたクロスカントリーのわだち。

永遠に平行に仲良くならび、交わらない。
なぜか。
交差したら、あとは離れてゆくだけではないか。。。。


その轍に、深く愛し合う夫婦のありようを見た気がした。

ラストはどんでん返しではない。
アルツハイマーの進行を示すものだ。
なんと惨酷な。

私も身内をアルツハイマーで亡くした。
亡くなる前、戻るのだ。記憶が。だが長くは続かない。そして、去ってゆく・・・。


おそらく、ラストシーンは雪の轍が交差した瞬間だろう。
深く魂が重なった瞬間は、とどめおけない。
滑ってゆく・・・。

切ない美しく、気高く強い魂の物語であった。




Last updated January 20, 2012 8:45:56 PM



January 16, 2012

  「影のない男」ドイツの渋いフィルム・ノワール。ハリウッド映画にはない静謐さを堪能できる。 


「影のない男」【LAUTLOS(静けさ、音もたてず)】2004年・ドイツ(日本未公開)
監督・原案:メナン・ヤポ(「シャッフル」)
脚本:ラース・オラフ・バイアー
俳優:ヨアヒム・クロール・・・殺し屋、ヴィクトール
   ナディヤ・ウール・・・ニーナ

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幼少時に家族を惨殺され、天賦の才能で敵討を果たした少年は、
その後父の親友だった武器商人にひきとられ
殺し屋として育てられた。通り名をヴィクトールという。

ヴィクトールの仕事ぶりは実に鮮やか。
綿密に計画を練り、音をたてず確実に仕留める。

その夜は雨がふっていた。
ヴィクトールは依頼通り、ある男を仕留めたが
男の部屋で眠っていた女をためらいつつも殺さず仕事を終えた。

女の名はニーナ。
恋人を親友に盗られ自暴自棄になっていた彼女は
寂しさからゆきずりの男と寝た。
その男が、目覚めると殺されていたのだ。

警察はニーナを事件と無関係としすぐに釈放。
だが、ショックのあまり冬の冷たい河に身投げしたニーナを
なぜか気になり追っていたヴィクトールが救う。

やがてヴィクトールを愛しはじめるニーナ。
しかし、裏稼業を隠し続けるヴィクトール。

そして、ニーナを見逃したことが依頼主の逆鱗に触れ
ヴィクトールはロシアンマフィアと警察に追われる身に・・・。

ヴィクトールは初めて知った愛のために、2人で逃げ切ると決意する。

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筋書きは、決して目新しいものではありません。
殺し屋が愛を知って新しい人生のために敵と戦う、のですが、
この映画は、そう決意するに至るまでが本筋。

ラストの逃走劇は短く、驚くぼどあっさり。
警察の諦めの早さも笑ってしまいましたが、妙なすがすがしさというか潔さというか。

派手なアクションもなく、大変地味に展開します。
でも、タイトルが「無音」だけあって
実に静謐、その静けさが、圧倒的に美しいのです。

川に沈むニーナを救う水中のシーンの美しさ。
2人が契を結ぶシーンの陰影の美しさ。
ガチバトルになりがちなハリウッド映画のベッドシーンとはやはり違う。

そしてラストのあまりにも静かな海。

ドイツには海がない。
海がない国の映画の多くで人物が「海をみたい」という。

ヴィクトールがあの雨の夜、彼女を殺せなかったのは
彼女が夢うつつに歌をくちずさんでいたから。
海の夢をみて歌っていたニーナ。

本ではなく映画だから表現できる、「静けさという美学」を堪能できる美しい作品だ。







Last updated January 20, 2012 8:15:28 PM

  「ザ・フォール 落下の王国」圧倒的な映像美学だけでも一見の価値がありますが、テーマは「落ちたら這い登ればよし」だと思います。素朴な子役の愛らしさが最高。 



「ザ・フォール 落下の王国」【THE FALL】2006年・インド・イギリス・アメリカ

監督:ターセム
脚本:ダン・ギルロイ/ニコ・ソウルタナキス/ターセム
衣装:石岡瑛子

俳優:リー・ベイス・・・ロイ/黒山賊
   カティンカ・ウンタルー・・・少女、アレクサンドリア
   レオ・ビル・・・ダーウィン
   ジュリアン・ブリーチ・・・霊者
   ジットゥ・ヴェルマ・・・インド人
   ロビン・スミス・・・爆発の達人、ルイジ/俳優仲間
   マーカス・ウェズリー・・・奴隷/氷配達人
   ダニエル・カルタジローン・・・シンクレア/総督オウディアス
   ジャスティン・ワデル・・・看護婦エヴリン/姫

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1915年、ロサンジェルスの病院。
過激な撮影に失敗し下半身不随になってしまった若きスタントマンのロイは
事故で女優の恋人の心も失い、自暴自棄になっていた。考えるのは自殺のことばかり。

そんな彼の窓に、幼い子の書いたへたくそな英語の可愛い手紙が吹き込む。
それはオレンジ農園で手伝い中に落下し骨折して入院中の5歳の女の子アレクサンドリアが
看護婦に宛てた手紙だった。

貧しく、悲劇的な過去をもつが無邪気な移民の幼い少女は
ロイのもとを手紙を返してもらおうと訪れるが
ロイはある企みを胸に、少女におとぎ話を聞かせ始めるのだった。

1人ぼっちで退屈な病院生活、アレクサンドリアは奇想天外なロイの物語にすぐに夢中になった。

ロイの物語とは、むかしむかし、暴君がいて、その総督に恨みをもつ個性的な5人の戦士が、
弟の仇討を目的とする山賊(少女とロイの脳内ではロイの姿)を頭に、復讐すべく旅をするというものだ。

少女は物語にのめりこんでゆき、毎日、ロイのもとを訪れるようになってゆく。

ある時、ロイは、物語の続きをせがむ少女に、眠れなくて続きが思いつかないから
薬がほしい、看護婦にはナイショで、とモルヒネの薬瓶を盗んでこさせようとする・・・。

おはなしが聞きたいあまり、少女は調剤室に忍び込んだが・・・。

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「ザ・セル」で世界をアっといわせた鬼才ターセムの映像美を満喫できます。
世界24カ国で撮影したミステリアスでエキゾチックなファンタジーの世界は
物語の筋などそっちのけで(実際、語っているロイも超テキトーなのでつじつまなどどうでもよく)、映像美だけを楽しめます。

そして、現実世界のほうの映像も、やはりとても美しい。
整った美しさではなく、シュールな美学。

この映画、少女カティンカ・ウンタルーで全編がもっているような気すらします。
圧倒的な映像美より、この素朴すぎる幼い少女のふっくらした田舎の子らしい笑顔と
たどたどしい喋り方のほうが、うっとりさせてくれるのです。

日本の人形のようにつくりこまれた媚びた子役など到底かなわない「素材の愛らしさ」にヤラれてしまいました。

すきっ歯、えくぼ、よちよちした歩き、訛ってる上に子供らしい発音の英語。
超懸命にセリフを覚えている感じが、この映画にはピッタリなんです。


ファンタジー、寓話、おとぎ話、すなわちそれは、現実世界のうつし絵。
奇想天外であるようにみえて、今ここで生きる誰かの胸のうちを描く。

ステキな映像は数えきれないほどあれど、最初のほうのゾウの水泳でもうウットリ。

CDを駆使しなくても、いえ、しないからの「血の通った幻想性」
これは予算的にも労力的にもなかなかできないことです。


おとぎのおはなしはさておき
映画の中で、厳しい現実に直面しているのは、おそらく実は少女のほうです。

母も娘を愛していても、幼児には過酷な労働をさせざるを得ない。
家は焼かれ、父は殺され、その経緯は移民だからなのか、背景はわかりませんが
少女がわかっていない、これがポイントです。

よくわからないんだけど、怒ったひとたちが家を燃やしたりパパを殺したり
世界は怒ったひとがいっぱいで、面白いことより悲しいことのほうが多い。
だから、おとぎ話が少女には必要でした。

きれいなお姫様とステキなヒーローのキッスに憧れる5歳の少女。

でも、それが変わってゆきます。
少女は、「ジサツミスイ」もよくわかりませんし、ロイが死のうとして薬を頼んだことも
実際にはよくわかっていません。
でも、物語のなかでロイが生きる気力を失ったことはちゃんとわかる。

だから少女はロイを救うべく、山賊の娘として物語に自ら参加します。
男の心を弄ぶ悪い美女をハナで嗤い、真実を導き出します。

もうその少女は、ロマンティックな恋物語にうっとりするおんなのこではない。


ロイは悲劇の主人公気分に溺れています。
ほんとの悲劇のヒロインである少女は自分をそうと気づいていないから、現実に屈していない。
母親に、農園で子供を働かせるなという医師の言葉を通訳しませんでした。
強い子です。


ロイは現実に敗北してしまっていた。

現実とはなんぞや。

事実とは違うのでしょうね。

受け止め方で、リアルは違ってくる。

ころころと落っこちるスタントマン。
落ちてはまた起き上ては観客を驚かせ笑わせ、のぼり、また落ちて這い上がり。

七転び八起き、それが人生ではありませんか。




Last updated January 16, 2012 6:15:09 PM

January 14, 2012

  「ザ・シャウト/さまよえる幻響」イエジー・スコリモフスキ作品。音響ホラーと当時騒がれた珍作ですが、テーマは愛は幻、でしょうか。

シャウト さまよえる幻響 【DVD】

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価格:3,591円(税込、送料別)



「ザ・シャウト/さまよえる幻響」[THE SHOUT]1978年・英
監督:イエジー・スコリモフスキ
脚本:イエジー・スコリモフスキ/ マイケル・オースティン

俳優:アラン・ベイツ・・・クロスリー
   スザンナ・ヨーク・・・レイチェル
   ジョン・ハート・・・アンソニー
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アボリジニの魔術を操り叫び声で人も動物も殺せるという不気味な男が
若い夫婦の家に入り込み、妻を寝取ろうと術をかける。
夫は復讐を企てるが・・・

虚実ないまぜで物語は進行する。

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当時、音響ホラーという勲章をもらった作品です。
神経を逆撫でするイヤな音が大音響で迫り、禍々しい雰囲気炸裂。
この監督もクセものですね。気持ち悪い演出なのに後をひく。

物語は、ハネケの「ファニーゲーム」かよ、と思うほど
薄気味悪い強引な訪問者で壊されてゆく家庭、という雰囲気です。

前編、黒板を引っかくような背筋のゾゾっとする演出満載。
若妻のストッキングを嗅ぎまくりとか、もうトリハダ(笑

物語は、結局のところ、精神障害者の妄想なのか
現実なのか、ごちゃごちゃなつくりになっています。
妄想オチなように見せかけていますが
ラストでレイチェルが、男が落雷で死んだ原因になった靴の留め金を
悲しそうに外すシーンがあります。

看護婦の格好なので、「彼は?」ときいていますが
現実では、看護婦の彼女に恋していた患者、という設定かもしれません。

でも、そのあたりはどうでもよく、
テーマはやはり、「愛」

気の毒なコトになった売れない音楽家の夫アンソニーは、
靴屋の女房とデキており、貞淑な妻を裏切っています。

妻は呪術で操られ素性も知れない男のモノになってしまいますが
男のほうは、劣情だけではなく、レイチェルを本気で奪いたかったのでしょう

愛、性愛、それらの儚さと切なさ
繰り返し出てくる砂丘のように、いつも形を変え風に流される不確かなもの。

官能表現がなかなか素晴らしい。
靴、はダイレクトに女の象徴ですしね。
サンダルの留め金があんなに淫靡に見えてしまうとは。

恐ろしいインパクトのある作品です。
カンヌで審査員賞を受賞。

冒険的な作品ですが、こういう映画監督が認められる時代は健全です。



Last updated January 14, 2012 6:41:32 PM

  「シャッフル」目覚めるたび、違う日にいる一週間。現実と向き合って運命に立ち向かう姿を描いています。S・ブロックがエキセントリックに熱演。

【送料無料】シャッフル

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価格:3,072円(税込、送料別)


「シャッフル」[PREMONITION(悪い予感)]2007年・米

監督:メナン・ヤポ
脚本:ビル・ケリー
俳優:サンドラ・ブロック・・・リンダ
   ジュリアン・マクマホン・・・夫、ジム
   アンバー・ヴァレッタ・・・クレア
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幸福な家庭の主婦、リンダ。
可愛い2人の娘の子育てに忙しい日々。
ある日、出張中の夫が自動車事故で死んだと連絡を受ける・・・。

その日は木曜日。
それから目覚めるたびに、一週間の曜日がバラバラに彼女に訪れる。
夫が生きていた月曜日、葬儀の土曜日、また夫がいる火曜日・・・
混乱を極めるリンダ。

娘の顔についた恐ろしい傷跡、土曜日の葬儀の後、母親の通報により精神病院に収監されてしまう自分・・・。

何があったのか。
水曜日、夫が死ぬ日。リンダは運命を回避すべく必死で立ち向かうが・・・

やがて浮き彫りになってゆくのは、本当は冷え切っていた夫婦の仲だった・・・


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信仰の大切さを描いた作品としても見られますね。
「シェルター」と同じで、後から反省しても、一度信仰を捨てたら救ってはもらえない・・・。結果を受け入れるしかない、という。

でも、この作品、スリラー、ホラーというふれこみですが、そうでしょうか。

その視点で観ると、ほとんどドキドキもハラハラもしない。

夫婦の愛情のほうをメインで私は観ました。

男女の愛情はどこですれ違うのか。
何をきかっけに取り戻せるのか・・・。

リンダは、シャッフルされた曜日を辿るうち、認めたくない現実を
受け止めていくのです。

<ネタバレ全開>





夫を、実はもっと前から「失っていた」こと。
何年くらい夫婦関係がなかったのかわかりませんが

映画のなかで、リンダは、自分はいい母親だと絶叫していましたが
必ず朝、眠っているリンダ。
夫は1人で朝食を作り、1人でコーヒーを飲み、
娘たちの弁当までこしらえている。そして冷たい視線で「君が学校へ送れ」

朝起きられないというのは、低血圧とかではなく
おそらくはうつ状態からくるものだったのでしょう

幸福な家庭の主婦、を演じていた自分の心と向き合う一週間。

ところで、
曜日がシャッフルされたことの意味ですが
結局、夫が死ぬ運命は変わりません。

でも、どうなんでしょう。
シャッフルがなかった場合なのですが
ジムは浮気旅行の途中で、愛人からの携帯への電話に気をとられ事故死したのでは??

シャッフルがなかった場合、リンダはジムとやり直そうとしていないので
3人目、つまりジムとの愛の結晶は、おなかにいなかったのでは?
和解できないまま、夫が浮気旅行の途中で死ぬのと
心がやっと通い、心からの愛の言葉をきいて直後に死なれるのと
「死」は同じでも、やはり違う・・・。

シャッフルしない場合のジムの留守電は
浮気のやましさを誤魔化すためのものだったかもしれない。

2人の娘をとりあげられ、精神病院で過ごす運命は、変わっているじゃないですか。

ジムが死ぬ運命は変わっていない、でも、今後の彼女の人生は変えられたんです。

死ぬか生きるかではなく
愛するか憎むか

真実と向き合うことの大切さを、きちんと描いた作品だと思います。



Last updated January 14, 2012 4:30:23 PM

January 10, 2012

  「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」お下劣コメディーでありながら、けっこうマジメに男女の成長を描いています。



「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」【KNOCKED UP(デキちゃった)】2007年・米
監督・脚本:ジャド・アバトー(「40歳の童貞男」)
俳優:セス・ローゲン・・・ベン
   キャサリン・ハイグル・・・アリソン
   レスリー・マン・・・アリソンの姉、デビー
   ポール・ラッド・・・デビーの夫、ピート
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キモデブ強烈ダメ男のベンと美人キャリアウーマンのアリソン。
どう考えても不釣り合いな二人が、酔った勢いで意気投合、
避妊もせずにいたしてしまった結果、見事にイッパツ命中。

寝てしまったことを忘れたかったアリソンだが
大慌てでデキちゃったことを伝えることに。

価値観も収入も外見も何もかも釣り合わない二人だが、
激突を繰り返しながらも相手を愛そうと努力してゆく。

でも、すれ違い、溝は深まるばかり。
結婚生活は人生の墓場です、を体現しているデビーとピートの夫婦生活を
目の当たりにするにれ、不安は増大するばかり。

不安も増大するが、お腹のベビーも増大。
不仲なまま臨月を迎えたアリソンとベン。

大人の階段絶賛のぼり中の二人、笑顔で赤ちゃんを腕に抱けるのでしょうか?

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もっとバカコメディーだと思ってヘラヘラ観ていたのですが、
いや結構真面目に、男女の感覚や価値観の違い、
結婚観、自分のコトで手一杯だった20代前半の男女が責任意識に
どうやって目覚めていくかの過程が、丁寧に(長い・・・)描かれていたと思います。

ギャグは下品を極めていますが、それでもなきゃ、逆に説教臭いヒューマンドラマになってしまう。


父親にベンが相談しますね。
子供は本気でアドバイスを求めて、具体的に「どうしたらいい?」か
答えを求めるのですが
父は、「お前を愛してる、としか言えない」としか本当に言えません。

結局、物事の本質はそこなんです。

あのお父さんは本当に答えに詰まったんだと思う。
4回離婚してる自分に、愛を語る資格はないと。

でも、お父さん、息子を愛してるじゃないですか。
それは嘘じゃない。

愛してなきゃ、そんなんテキトーに答えりゃいいんです。
「堕ろしちゃえよ」でもいいし「カナダに逃げ帰れ」でもいいし。

そんなシーンの端々に、ちょっといいなぁと思ったのでした。

そして。
最近多い、いつまでも結婚しない(※相手をえり好みしていて)若者へ。
理想だの価値観の同じ相手を探してるうちに干からびますよ。

選り好めるくらい出会いがあるのであれば、とりあえずチャレンジを勧めたい。

結婚って、親になるってどういうことか。
この映画、チャラいわりについているところはシビアです。

誰かを、好きになろう、愛そうと努力してみた経験って、ありますか。
すべきことじゃないって考えも1つかもしれませんが、
戦前や、古い世代は、結婚式で初めて相手の顔を見ましたというケースもまれではなかった。
でも、その世代って離婚率が低い。
物理的に女性が自立してなくてできなかった、許されなかった、もありますが、
「愛していたのがさめてった」よりも
「好きになろうとして一緒にいたら大切になった」ほうが当然、息が長い。

この主人公の2人がそうですよね。

どっちがいい、悪いではなく、
そういう「努力して相手をわかろう、一緒に生きようとする姿勢」こそ
幸せへの道だよ、というお話です。


つい先日見たバラエティ番組で、結婚できない女性第一位が
「同じ価値観を相手に求める女」だそうです。
喧嘩にならないように? いえ、最初から相手に歩みよるつもりがない、
ワガママともいえるからでしょう。

主人公の2人は、磁石の両極並みに価値観が違いましたし
ラストでも違うままですが、
ピンポイントで、同じ思いがあればよいのです。
「この子を幸せに」

あのアジア人の産婦人科医のくだりもとてもいい。
いいドクターじゃないですか。

どこも褒めるとこがなかったベンが、
最後の最後でいいとこ見せまくり、あ、こんな男なら人生大丈夫だな、と思いました。


エンドクレジットで、延々と可愛い赤ちゃんズの写真が流れます。
お下劣コメディにしては、きちんとしまってよかったです。





Last updated January 14, 2012 3:57:18 PM

January 07, 2012

  「ミックマック」ジュネ監督のいたずら心MAX!ワクワクしちゃう映像美で綴るオトナのやりすぎしっぺがえしシニカルファンタジーコメディ。 



「ミックマック」[MICMACS A TIRE-LARIGOT(仕返してんこもり、みたいな意味)]2009年・仏
監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ギョーム・ローラン
俳優:ダニー・ブーン・・・バジル
   ドミニク・ピニョン・・・人間大砲、フラカス
   ジェリー・フェリエ・・・軟体女
   ヨランド・モロー・・・料理のタンブイユ
   ジャン=ピエール・マリエール・・・ギロチンの生還者、プラカール
   ミシェル・クレマデ・・・ちっちゃい発明家おじさん
   マリー=ジュリー・ボー・・・計算機ちゃん
   オマール・シー・・・言語ヲタク、レミントン
   アンドレ・デュソリエ・・・武器商人、ド・フニュイ
   ニコラ・マリエ・・・武器商人、マルコーニ

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幼い頃に父親を地雷で亡くしたバジル。
母と生き別れ孤児院から逃亡し、孤独を友に生きてきた。
そんな彼はとことんついていない。

ある夜、勤め先のレンタルビデオ店で夜勤(?)中、表で騒動が。
アクション映画ばりの発砲事件に見とれていたところ、マヌケなことに、
暴発した拳銃の弾をおでこにくらってしまう。

無理に取り出すと植物状態、取らなくてもいつ死んでもおかしくないらしいが
医師の文字通りの「賭け」により、おつむの中に銃弾は放置されたのであった。

退院したバジルだが、死んだと思われてアパートはもう別の入居者が。
荷物は管理人が管理してなくて全部盗まれ、職場にはいかにも看板娘なむちむちぷりんちゃんがバジルの後釜に・・・。

かくして無職の家なし、野宿生活を強いられるバジル。
特技の大道芸で日銭を稼ぐも季節は真冬、銃弾以前の問題で死にそう。

そんな彼は、廃品回収や修理品の販売で逞しく生きているホームレス集団に
家族として温かく迎えられる。

皆、過去に奇想天外な経験をしたり、普通には生きられない特殊能力を持つ奇人変人ばかり。
料理番のふとっちょおばさんタンブイユを中心に、本当の家族より強い結束力で明るく楽しくやっている。

ある時、バジルは廃品回収中に、父を殺した地雷の製造会社と、自分のおつむにめりこんだ銃弾の製造会社を発見!

よくも俺の人生はちゃめちゃにしやがって、である。

バジルの復讐に、みんながノった!!
人殺しの道具を造って大儲けしてる連中に、きっついお灸をすえちゃう計画発動だ!!

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世の中の異端への慈しみと敬意のまなざしは、やはりジュネならではです。
そして、夕暮れや夜をなぜ、ジュネはこんなに美しく映像化できるのか。
ノスタルジックなんてもんじゃない。
「ロスト・チルドレン」の空気感そのもの・・・。
「エイリアン4」や「アメリ」は健全すぎましたが、ロスチルやデリカの頃の、
見世物小屋のいかがわしさ、これですよ!
人間はいかがわしいのです。風刺は今回も満点。

映画全体がひっくりかえったおもちゃ箱。
細かいモチーフから、むちゃくちゃな爆破シーンまで、万華鏡のように
次はどんなになるのかな、とわくわくさせられてしまう。

ドタバタコメディではないので、刺激が足りないと思うかたはいるかもしれません。
どちらかというと、「覗き」のイケナい悦びを愉しむ方向性のしっぺがえしです。うふふ、あんなコトになっちゃってるよw という可笑しさ。

武器商人や武器製造会社は必要悪だとかそういう短絡的な批判はこの映画には不要。
この2人の社長、もう人間としてサイアクです。救いようがないアフォ。
やっつけちゃいましょう。

そして、やられてる被害者2人の怒りかたが漫画チックで実に爽快です。
悔しがってくれなきゃ、しっぺがえしになんないもん。

俳優さんたちが、復讐サイドも被害サイドも、それはそれは楽しんで演じているのが伝わってきて、それがまたいい空気を生んでいます。

小道具1つ1つも、何度観かえしても飽きないキッチュでシュールな美しさ。
「だって廃品だもん」

使えるけど捨てられたもの。
社会の隅に捨てられた奇人たちもまた。

あのステキな秘密基地、どんなオトナも憧れるんじゃないでしょうか。。。
ラスト、プチ・ピエールおじさんの発明おもちゃ、くるくるドレスが素敵。

終盤、いよいよしっぺがえしの大詰め、悪戯の結末が最高。
すごいなユーチューブ。警察に証拠品の提出なんてもう要らんな(笑

自分の造った地雷を踏んだり手榴弾を咥えてる気分はどうだったでしょうね。
最高ですな。
ああゆう連中は反省はしません。こんな目に遭ってもしないでしょう。
でも、社会人として立ち直れないのは間違いありません。
グッジョブ!と大笑いでありました。

あくまでも、ファンタジー、寓話として観てください。
ジュネ監督の大きなスノーボールの中に放り込まれて揺らされる感じを楽しめばいいのです。

この映画がジュネ監督作品で最初、というかたは、
絶対に「ロスト・チルドレン」にさかのぼってみてください。




Last updated January 07, 2012 3:52:49 PM

January 06, 2012

  「アンフィニッシュ・ライフ」ラッセ・ハルストレム監督の十八番、喪失からの再生、そして許し。 



「アンフィニッシュ・ライフ」【AN UNFINISHED LIFE】2005年・米(日本未公開)
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:マーク・スプラッグ
   ヴァージニア・コラス・スプラッグ
俳優:ロバート・レッドフォード・・・アイナー
   ジェニファー・ロペス・・・アイナーの亡き息子の嫁、ジーン
   モーガン・フリーマン・・・アイナーの親友、ミッチ
   ジョシュ・ルーカス・・・保安官、クレイン
   ダミアン・ルイス・・・ジーンの元恋人
   カムリン・マンハイム・・・ダイナーの女主人ニーナ
   ベッカ・ガードナー・・・ジーンの娘、グリフ

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

ジーンは11歳の娘がいるシングルマザー。
娘グリフは、夫グリフィンを若くしてある事故で失ったとき、お腹にいた子供だった。

小さなワイオミングの田舎の町から彼女は妊娠を隠したまま去り、
次々とできる肉体関係だけの恋人のもとを転々としていた。

そして、DV男に母親が殴られ続けるのに耐えかねた娘グリフの説得により
ジーンは娘を連れて男のもとを逃げ出した。

行くあてはない。
殴る男は女性保護シェルターの場所など知りつくしているのだ。

泊る場所もお金もない。仕方なく、和解せぬまま去った舅アイナーのもとへ・・・。

アイナーは、最愛の一人息子を嫁のせいで失った事故から立ち直ってはいなかった。
牧場の牛も売り払い、空っぽの牧場で余生を憎しみと悲しみで埋めて生きていた。

ジーンを受け入れたくはなかったアイナーだが、
生前の息子に生きうつしの孫娘グリフを追い払えはしなかった。

奇妙な緊張をはらんだまま、3人の生活がスタートする。

物語のもうひとつの主軸となるのは
凶暴な雄熊と、その熊に襲われて体が不自由になったミッチ、
ミッチの世話をするアイナーの関係だ。

熊が、山を下りてきた。そして動物園で飼われることに。

ミッチは、人生を狂わせた熊を、許すというのだ。
そして、熊を山に逃がしてやってほしいとアイナーに懇願するのだった・・・。

何もかも許せないアイナー。
ジーンも、熊も、そして親友をこんな体にした自分自身も。


そんなアイナーの心をとかしてゆく、まっすぐな瞳の孫娘とミッチと熊。

だが、過去は亡霊のように幸せを喰らおうとする。
暴力男の影が小さな田舎町にちらつきはじめる・・・。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


ラッセ・ハルストレム監督の作品ですが、日本では未公開なのですね。
ハルストレム監督の得意分野は、ずばり「喪失と再生」です。

私はどれよりも「シッピングニュース」が好きでした。
彼の映画の中では、人はみな、失ったもの、手に入らないものに苦しみ抜く。
そして、時にゆっくりと、時に大きなさらなる破壊の後に
人は再び顔を上げるのだ。

本作品は、他の作品に比べるとものすごく地味で
それが劇場公開がなかった理由のように思いますが・・・

とてもこぢんまりとまとめられているからこそ、
行間が丁寧なように思います

モーガン・フリーマン演じるミッチは仙人クラスな人生の達観者だし
(キリスト並みに赦しすぎでしょう)
嫁ジーンは、露出加減といい、身ひとつで逃げてきたのに服持ってすぎとか、
男に懲りたはずなのに即日男と寝てしまうとか、
(でもDV男にハマる女性の弱さをとてつもなくリアルに描いている気がする)
そりゃ、死んだ息子の嫁がこんなアバズレでは、舅は不愉快だろうと・・・

ちょっと人物の描き方が極端かなとは思いましたが
100分くらいにまとめたヒューマンドラマとしては、強調されたキャラでないとまとまらないですから

物語の中で達観しているのはミッチだけであり
他の人々はとても人間臭く、過ちをおかした哀しさを背負っている。

食堂のニーナは娘を亡くした。
たった1分、目を離したすきに。
幾ら大事にしていても、愛していても、どうにもならなかったこと。
「あの1分を取り戻せるならなんだってする。」ニーナが言う。

子供に先立たれる悲しさをわかってあげて、と。

彼女が出てこないと、アイナーは本当に偏屈で思い込みの激しい爺さんでしかなくなってしまう。

やはり、思うのだ。
似たような喜びは人と共有できる。
でも、同じ悲しみはない。悲しみは、その人にしか背負えない。
「気持ちがわかる」はずなんてないのだ・・・

結婚したばかりの夫を自分の過ちで亡くしお腹に彼の子供がいたジーンの悲しみも深いが、
ジーンにはグリフがいた。
子供がいるというのはすごいことなのだ。
生きなくてはならない。必死に暮らすことで心を誤魔化せる日々もあったろう。
実際、女のほうが逞しい。
すぐに仕事も男もゲットしたタフさ、若さ。
本人が言うように、子供のためにも、前へ、前へ進まねばならないからだ。


だが、
赤ん坊から宝物のように育てたたった1人の愛息子を嫁のいねむり運転で失ったアイナーの憎悪は、経験のない人間に「このくらいの悲しさ」などとはかれるはずもない。
妻との関係までこじれ、若い働き手の息子も失い、
ほんとうに生きる屍になって余生を送るアイナーには、
憎む時間、悲しむ時間は幾らでもあっても、他にすることもないであろう・・・

人は、誰かのために、でなければ生きられないものだ。
自分1人生かすためには、前は向けない。呼吸をするだけだ・・・。


ミッチは、自分の世話を焼くことでアイナーがどうにか「生きて」いることも知っているのだろう。
ジーンを許せないアイナーもまた、
同じように、悔やんでも悔やみきれない愚かな行動により、親友の苦痛を生涯見つめるという十字架を背負っている。

人生にもしもはない。
でも、もしアイナーが泥酔していなければ・・・

泥酔していたのは悲しみゆえ。
失ったものを悲しんでいて、まだ失っていなかったものをさらに失った・・・。

人生とはなぜかくも残酷なのか。

「許すこと」
ハルストレム監督のほかの作品でも大きく扱われるこのテーマ

憎むことで自らを悲しい過去に縛るアイナー
それは、そのまま、檻の野生の熊

ひとを傷つけることしかできない

ミッチの無謀な願い、山へ返せ、は
アイナーに己の悲しみの檻を解き放て、と言っているのだろう。

ミッチVS熊のラストシーン
漫画のように眼力で追い払うのではなく、ミッチは目を閉じる

奪い返そう、取り戻そうとして昔、熊を怒らせた
牛はもう死んでいたのに。還ってはこないものだったのに、取り戻そうとした過ちをミッチは知った。

死んだ息子はもう還らない・・・。
永遠に失ったことを受け入れなければ、無意味な傷に苦しむことになるのだという暗喩なのでしょうね。

怒りは、まだ取り戻せるものへの執着に向けるべき。
かくして、勘違いバカDV男をボコボコにするシーンは拍手喝采。

ハルストレム監督のユーモアは上品でピリっとしている。
刑務所へ向かうバスの中で意識を取り戻した男の情けないこと。

特筆すべきは、子役のベッカ・ガードナー。
海外の子役はうすらぼんやり可愛いとか泣きがウマいとか
そんな低次元な演技をする子はいないわけであり

彼女の眼力はすごい。
ロバート・レッドフォードと目で渡り合える気迫。

ダメ男にすがってしか生きられない頼りない母親に、冒頭「You promised.」(また殴られたら出てくって)言ったわね)と鋭い眼光で悲しげに迫るシーン。

躾のできていない母親に育てられ行儀の悪いところも、
おじいちゃんにYes,sir.と怯えた、あるいは不信感と畏敬の混じった表情で答えるシーン

かなり複雑な演技がこなせる少女で驚きました。

よい作品だと思います。
是非、一度ご覧ください。




Last updated January 06, 2012 8:55:55 PM

January 03, 2012

  「テネイシャスD 運命のピックをさがせ!」ジャック・ブラック大暴走。バカバカしくて可笑しいお下劣ロックンミュージカル♪ 







「テネイシャスD 運命のピックをさがせ!」【TENACIOUS D IN THE PICK OF DESTINY】
2006年・米
監督:リアム・リンチ
製作:ジャック・ブラック/カイル・ガス 他
脚本:ジャック・ブラック/カイル・ガス/リアム・リンチ

俳優:ジャック・ブラック・・・JB
   カイル・ガス・・・KG
   ティム・ロビンス・・・謎の男
   ベン・スティラー・・・ギターショップの店員
   
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

敬虔なクリスチャンの家庭で悪魔の音楽としてロックを禁じられた少年JBは
家出をしハリウッドへ。
そこでギターの名手?KG(15年ミュージシャンの卵をやったが芽が出ず家賃が払えなくなったデブハゲ中年男)と出会い、すったもんだのあげく、ロックバンド「テネイシャスD」を結成。

勢いはいいのだが売れる気配はない。
しかし、気付いたのだ。売れっ子ロッカーは皆、同じ不思議な形のピックを使っていることに!!

早速楽器店へ。すると、怪しげな店員がそのピックについて教えてくれた。
なんと要するに、悪魔の歯でできたピックであるらしく、使えばものすんごい力が乗り移ってすんごい演奏ができちゃうんだそうな。
現在それはロックの歴史博物館にあるという。

というわけで、悪魔のピックを盗もう計画発動。

二人は力を合わせてそれを盗みだせるのでありましょうか。
そしてコンテストで優勝して今月の家賃を払えるのでありいましょうか。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

家賃かよ(笑)

ロックミュージカル仕立てのおバカシモネタ満載ドタバタコメディでございます。
予告編でヤラれてしまい、つい速攻借りてしまいました。

こういうムチャクチャコメディ、実は大好きです。
下品だわくだらないわ、真面目な人には見せてはいけない映画ですが(笑

製作からジャック・ブラック&カイル・ガスなので
本人たちがそれはそれは楽しそうで。

ラミアっぽい感じの悪魔さんがいいです。

悪魔に家賃払わせるオチもいいですね。
世界イチのミュージシャンにしてくれ! じゃないんだ。。。
家賃なんだ。。。
ピザ屋から借りて壊した車も弁償してもらえばいいのに。悪魔に。

つっこんでもつっこみきれないおバカさが
正月疲れに最適でした。

ああくだらないけど楽しい映画が観たいと思われるかたに
激しくお勧めの作品ですw





Last updated January 04, 2012 9:34:41 PM

  「マーゴット・ウェディング」N・ボーンバック監督独特のぶっ壊れた家族の不器用すぎる愛憎コメディ。N・キッドマンのイカれ女っぷりがいい。 



「マーゴット・ウェディング」【MARGOT AT THE WEDDING(結婚式でのマーゴ)】
日本未公開 2007年・米

監督・脚本:ノア・ボーンバック
俳優:ニコール・キッドマン・・・姉、マーゴ
   ジェニファー・ジェイソン・リー・・・妹、ポーリン
   ジャック・ブラック・・・妹の婚約者、マルコム
   ジョン・タートゥーロ・・・マーゴの夫、ジム
   キアラン・ハインズ・・・マーゴの恋人、ディック
   ゼイン・パイス・・・マーゴの息子、クロード
   フローラ・クロス・・・ポーリンの娘、イングリッド
 
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

マーゴは中年の女流作家。夫とはうまくいっていない。
11歳の思春期の一人息子を連れ、絶縁していた妹の結婚式に出席するため久々に生家に戻ってきた。

妹ポーリンは教師。前の結婚は破綻、思春期に入りかけた年頃の娘がいる。
今度こそ幸せに、そう必死で願うポーリンのお腹にはすでに赤ん坊がいるも、皆に打ち明けられないでいる。

姉妹は、長年にわたる確執が解けてはいないまま再会を果たした。
海が見える庭での、ささやかなごく親しい人だけの結婚式の準備が進むなか、
最初こそ、久々の対面を喜んでいた姉妹だが・・・

まず、マーゴは妹の婚約者に定職がない自称芸術家なのが気に食わない。
きっかけはなんでもよかった。要するにすべてが気に入らない。

エキセントリックな性格でいつも周囲をふりまわすマーゴの非常識で自己中心的な言動は
妹一家だけではなく、隣人やベビーシッターの家族まで巻き込み、
砂上の楼閣のようにすべてが崩れてゆく・・・

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

監督業では「イカとクジラ」で知られ、脚本だと「ライフ・アクアティック」「ファンタスティック Mr.FOX」が記憶に新しいノア・ボーンバック監督(姓の読み方は映画データサイトによって若干違う)の作品。
この作品は日本では公開されなかったのですね。

確かに、日本人が好む方向性の展開ではない。
「イカとクジラ」を観て、なんだこれ・・・と思ったかたは観ないほがいい。

ノア氏の作風は、まんま毎回組んでいるウェス・アンダーソンのそれですが
アンダーソンより、さらにドライで突き放したところがあります。

ウェスの場合は、さすがにどっかで「ええはなしやな」と思わせてくれるサービスがありますが、ノアの場合、とことん、「あ~あ。。。」な家族を、決して優しくはない目線で描く。

ですが、まぁいいじゃないの、という生温かい目線を棄てている本作では、
女という生き物の本性、姉妹間の「愛」の奇妙さ、母性の危うさなどにダイレクトに切り込んでいます。

ああ、女って怖い、女はめんどくさい、とシニカルに笑えます。

このドロドロ愛憎物語をコメディにどうにか保っているのは
ジャック・ブラックのおかげです。

アメリカの病理をコミカルに掘り返す作風は相変わらず。

クスリやセミナーやセラピー大好きな、自力で解決できず他力本願なインテリ層の女性、
ちょっと他人や子供が「変」だとすぐに、アスペルガー、ADHD、鬱病、と症状名をつけて分類することで「表面上心配しながら安心する」。

知識はあふれるほどあるが、自己満足的、自慰的にしか使わず、決して問題解決に向けては活用しないインテリ層をめちゃくちゃ皮肉っています。

この作品に出てくる人々、総じてみな、ソロ活動のスペシャリストです。
ダイレクトになさってるシーンもございますが、精神的にもそう。

言いたいと後先も相手も考えずにすぐ言う。
自分は言えばスッキリ。
そこに、「コミュニケーション」は存在していません。

ものすごくセリフが多い映画なのですが、「対話」になっていないのです。
それぞれが、言いたいことを言いたいだけ喋りまくる。
まさに、現代アメリカのディスコミュニケーションを痛烈に描き出している。

子供に対する接し方も同じことで
この姉妹、どっちも、子供を溺愛しているように演じつつ、ホンネはうっすら邪魔にしている。

皆が誰かに依存して生きている。
マーゴは息子に依存し、息子は母親に依存、典型的な共依存。
そこに出口はあるのかいな、とラストシーンを見送りました。

ポーリンはダメ人間の恋人に依存、ではなく、
ダメ人間をそれでも愛してしまう、求められる自分に酔わせてくれるカレに依存。
付き合う男がみんなDV男という女性に非常に多いケースです。

マルコムはまんま、自力で生きられないので養ってくれるポーリンに依存。

笑い話なのですが、いや、そんなレアなケースではないように思うのです。
似たようなことがどこの家庭にもあるんじゃないかと。

姉妹というのは難しいのでしょうね。
同じ腹から出て育ったのに、だんだんに手に入れるものが違ってくる。
本人の努力がそこに介在するはずなのですが、どうもフにおちない。。。

男性の兄弟だと、手に入れたものというとやはり社会的地位や名誉、お金、
親からもらえる愛情の差がドラマになるのでしょうが(そういう映画は星の数ほど)

女性だと、美貌、オトコ、性的な充足度、最後に社会的立場、なのかもしれない。

自分より相手が上だと、他人である友達とは違う、歪んだ嫉妬がそこに・・・。

決して明るいキモチにはなれない本作ですが、
夢といい話だけを食って生きていては他人の痛みに鈍感になりますので

ちょっと苦いクスリをいただけた作品になりました。




Last updated January 07, 2012 3:53:58 PM

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三度の飯より映画とインコ。

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