ホイットニー・ヒューストン「アイ・ルック・トゥ・ユー」
(承前)2曲目は「I Look To You」。早すぎるラスト・アルバム(年齢的にもリリースから間が開いたという意味でも)となった『I Look To You』(2009年)のタイトル曲です。訃報を知って最初に聴いたのが、このアルバムです。その時はいいアルバムだと思うんですよね。リリース時に買って聴いた時もそうでした。「あの」ホイットニーという事をいったん意識の外に置けば。しかし、そこから改めて過去のアルバムを聴き直して比較すると声の劣化に愕然としてしまいます。その印象をダメ押しするのが、この曲。トリッキー・スチュワート(Christopher "Tricky" Stewart)とハーヴィー・メイソン・ジュニア(Harvey Mason, Jr.)の共同プロデュース。作詞・作曲はマイケル・ジャクソンの最後のビルボード1位曲も手掛けたR・ケリー(R. Kelly)。 (葬儀で歌った!!)磐石の布陣ですがアレンジがシンプルなので、誤魔化しようがないんです。(ほかの曲は、その辺りを巧く処理している)かつて聴き手に幸福感をもたらした美しく艶やかで強さのある、「あの」歌声はどこにも無くざらついて不安定な苦しさを感じてしまいます。「I Look To You」ミュージック・ビデオ(YouTube Whitney Houston VEVO)http://www.youtube.com/watch?v=5Pze_mdbOK8楽曲の良さやアルバムにおける位置づけはともかくとしてこういう歌唱の重要度が高い曲をどうしてリード・シングルにしたのか訝るほどでしたが何度も聴き返して(なぜか心に残る)ようやく納得しました。それこそが、この歌のメッセージなんだと。墜ちるところまで墜ちてたいせつな物を失ってしまって。そこから前に進むために必要なものを苦しみながら求めている姿をありのままに晒しているんだと。「I Look To You」歌詞の和訳http://plaza.rakuten.co.jp/miyajuryou/3023#looktoyouしかし、他人の書いた歌詞とはいえ最終的に彼女の命を奪った心の弱さを露呈しているとも言えます。(20代までが、あまりにも恵まれ過ぎだったのかもしれません)彼女と同時代に脚光を浴びたソロ歌手で現在まで常に第一線を走り続けているのはおそらくマドンナだけですがマドンナがそうである大きな要素としてハートの強さがあると思います。もともとの路線の違いはもちろんありますが下から這い上がって来たマドンナは、たとえ低迷したとしてもこういう歌詞は歯牙にもかけないでしょうね。---- --------After I lose my breatheThere's no more fighting leftSinking to rise no moreSearching for that open door息が切れてしまって闘う力はもう残ってなくて沈んでもう浮かべないの抜け出る所を探しているのI Look To You / Whitney Houston (2009)ホイットニー・エリザベス・ヒューストン(Whitney Elizabeth Houston)August 9, 1963 - February 11, 2012。 エグゼクティブ・プロデューサー Clive Davis (1932-) 母 Emily "Cissy" Houston (1933-) 従姉(シシーの姉の娘) Dionne Warwick (1940-) 名付け親(ホイットニーが生まれた頃、シシーがバックコーラスを勤めていた) Aretha Franklin (1942-)父 John Russell Houston,Jr が2003年に亡くなったくらいでみんなご存命ですよ...