日本で高級チョコレートといえば、ゴディバ。というような時代があった。今はいろいろなショコラティエが東京に進出している。だが、どこもプラリネとかトリュフばかりであまり個性がない気がする。そんななかで、偶然新丸ビルで入った、ショコラティエの「円盤」形のチョコレートを見て、「あれ?」と思った。
「もしかして、ここリヨンのショコラティエの店ですか?」
何も知らないので、店員に聞いてみた。
「そうではないんですが、リヨンのベルナションの店で修行したオーナーの店なんですよ」
やっぱりそうか!
ベルナション――チョコレート好きでその名を知らない人はいない、リヨンの天才ショコラティエ。「フランスで最も優れたショコラティエ、つまりは世界一のショコラティエ」と評されたこともある(ただし、そう言ったのはリヨンの政治家だけどね・笑)。その新丸ビルの店の名前は『
パレドオール』だという。フランス語で「金の円盤」という意味で、金箔を散らした円盤形のそのパレドオールというチョコレートは、ベルナションのスペシャリテだった。
イタリア派のMizumizuだが、チョコレートに関していえば、完全にフランス派。それもリヨンを聖地とあがめている(笑)。イタリアの高級チョコレートといえば、ジャンドゥイオッティだが、ヘーゼルナッツと合せたミルクの風味の高いこのチョコレートは、なんといっても高貴なエスプレッソ「家」と幸福な結婚をすべく育てられた、これまた高貴な貴族の箱入り娘のようなもので、あまりに甘やかで、我侭なほどねっとりしすぎている。東京では、カフェ・コヴァでも売られているが、買ってる人を見たことない(笑)。
一方、リヨンはカカオそのものの美味しさを追求するショコラティエが多い。近頃少しだけ日本でも知られるようになった「ベネズエラ産のカカオ」を発見したのもリヨンのショコラティエであると聞く。
2007年7月10日の記事で紹介したように、Mizumizuにとってのショコラの最高傑作はリヨンの街角で出会った、ベネズエラ産のカカオを使った極薄の円いショコラだった。そのショコラはシンプルでプレーンな味わい。ほんの少し酸味のあるビターなカカオの美味しさをあますところなく味わわせてくれた。しかも、その薄さは芸術的だった。
「パレドオール」では、ちょうど円盤形のチョコレートで新栗のペーストを中に入れたものが季節限定で出ているという。なので、それとヌーヴォーオレンジ(写真中)、あとはもう1つのスペシャリテだという「ガナッシュに砂糖を使わず、100%カカオにはちみつだけで甘みをつけた」というマールショコラからシトロン(レモン風味)を選んでみた。

感想としては…… 新栗のパレは個性的でこれまで食べた栗と合せたチョコレートのなかでも相当評価できると思った。だが、オレンジとレモンは期待したほどではなかった。フランスだったら、もっと果物のすっぱさを前面に出しそうなのだが、酸味がかなり控えめになっている。そのかわり香料の後味が残ってしまった気がする。お題目ほどは感動しない。もちろん美味しいのだけれど、買い手というのは常に、払った金額に対しての満足度を考えるものなのだ。
こちらはマドレーヌ。マルセル・プルーストの小説で主人公の記憶を呼び覚ますのはこのお菓子の香り。つまりはバターの香りだ。マドレーヌはバターの風味と香りが命といってもいい。ショコラティエの店なので、チョコレート味にしてみた。悪くはない味なのだけど、この程度なら『並』かな。もっとチョコレートの濃厚さがグッとくるかと思いきや、そうでもない。バターの風味を消してしまわないようにという配慮かも。でも、どちらにしろ控えめというか中途半端。上品で美人だけど、1度デートしたらそれでバイバイで十分な、育ちのよいお嬢様という感じ。
やっぱりここのお薦めは、スペシャリテの「パレドオール」かもしれない。次回買うときは、これに絞ろう。少なくとも、リヨンの天才ベルナションの面影は伝えているだろうと期待している。なにせリヨンのショコラティエは、海外進出なんて考えない人が多いから、東京でその「風」を感じられるということは、それだけで貴重なのだ。
最終更新日
2007年11月14日 23時23分25秒