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2008年11月30日 楽天プロフィール Add to Google XML

NHK杯女子シングルに吹き荒れた、ダウングレードの嵐
[ Figure Skating(2008-2009) ]    

NHK杯の女子シングルフリーが終わった。

まずは浅田選手の驚異的な立て直しに脱帽。2週間前にあれほどボロボロだったジャンプを、ほぼすべて修正して決めた。「どーして、ここにわざわざ苦手の3サルコウまで入れるの?」というサルコウまで決めてきた。「お約束」の着氷のツーフットもまったくなし。それぞれのジャンプの高さと軸に正確さには驚いた。

正直言って、信じられない能力。ふつう、前回のような超不調に陥ったら、立て直しにワンシーズンかかるのだ。

そのわりには点が出なかった。軽く130点はいくだろうと思ったのだが、126.49点。放送最後でアナウンサーと解説の荒川静香が言っていたように、「2つ目のトリプルアクセル+ダブルトゥループ」のコンビネーションのトリプルアクセルが回転不足と見なされ、ダウングレードされたのだ。

3A+2Tなら8.2+1.3=9.5点の基礎点がある。

実はこれ、難しさのわりには点が低いのだ。キム選手の得意な

3F+3Tも基礎点が9.5点。こちらのほうがお得なジャンプなのだが、浅田選手はセカンドに3トゥループをもってくると回転不足判定されてしまうことが多い。そのせいか、今シーズンはセカンドで3トゥループを跳んでいない。

で、3A+2Tなら9.5点の基礎点なのだが、

3A(<)+2Tつまり、トリプルアクセルがダウングレードされ、2A(の失敗)とみなされると、基礎点はいきなり2A+2Tだから4.8点に下がってしまう。そして、そこからGOEで減点される。

浅田選手をどうしても落としたいジャッジはどの試合にもほぼ2人いるらしく、あの連続ジャンプにマイナス2をつけたのが2人もいた。結果、4.8点の基礎点から減点されて4点にしかならなかった。

もはや、漫画の域でしょ、この点数。女子ではトーニャ・ハーディング(まぐれ)・伊藤みどり以来、誰も成功させたことのない3Aからの連続ジャンプを決めて(あれで「決まってない」と思う人が、この世にいるとはねぇ)、しかもその伊藤みどりですらやらなかった、フリーで3Aを2度という快挙をなしとげて、もらった点数が4点! 4点つーたら、誰でもできる単独のトリプルトゥループと同じでっせ。

オイ! 天野真クン、キミ、Assistant Technical Specialistでしょ、こういうときに徹底的に抗議しなくてどーする、まったく! 役立たず!!!

この回転不足判定によるダウングレードの愚については、さんざん書いてきたが、もうプレ5輪シーズンなので、このままオリンピックに突入するということだ。それならば、その対策を立てなくてはならない。

今回のNHK杯、女子シングルの回転不足判定は、異常なほど厳しかった。特定の選手に対してだけではなく、すべての選手に対して。とにかく、ちょっとでも回転が足りなければ容赦なく(<)判定でダウングレードしてきた。

荒川静香は浅田選手の3A+2Tの3Aを、最後まで、「私は(認定しても)いいと思う」と主張していた。これにはMizumizuも同感。実は公式練習での浅田選手の3A+2Tは、過去のエントリーで書いたように、ことごとくファーストの3Aが回転不足気味だったのだが、本番の出来は、どの練習のときよりもよかったのだ。あれで「回転不足」と言われると、お手上げ。本田武史や伊藤みどりは、もはや「ジャッジがどう判断するかですからね~」と完全にサジを投げている(苦笑)。解説が全然予想できないジャッジの判断って…… 

しかも、それが軽く5点、6点という差になるのだ。日本のファンは、だいぶこの変な点の出方がわかってきたと思うが、バンクーバーで本格的に見る人は、さぞや驚くだろう。きれいにまとめてると思った選手より着氷で目に見えてミスってるように見える選手のほうが点が出るなんてことが日常茶飯事なのだから。

とにかく、これからのジャンプの点の判断のポイントは、「回りきって着氷しているかどうか」だと思って欲しい。そのあとに転倒しても(基礎点の高いジャンプに限る)、手をついても、オーバーターンでくるくる回っても、とにかく、着氷時にエッジが一瞬「ピタッ」と決まっていれば、そのジャンプのほうが、回転不足で降りてきた(つまり降りたあとにエッジが氷の上で回ってしまう)ジャンプより点が高い。ただ、これ、リンクサイドで見てるファンにはほとんどわからないだろう。テレビでもスローにしないとわからないものでもジャンジャン引いているのだから。

荒川静香じゃないが、今回の浅田選手の3A+2Tをふつうにテレビで見たときは、「どう考えたって、これなら文句ないでしょ」と思った。スローでも「ちょっと降りたときにガタッとなって、次のジャンプへのタメが長いかな」と思うぐらいだった。「でも、もしかして?」と思ったら、案の定アナウンサーが最後に、「残念、ダウングレードです」と言っていて、あーあ、と思った。

回転不足判定は、まちがいなく荒川静香が現役だったころより厳しい。そもそも2季前までは、こんな「乱用」はなかったのだ。先シーズンから「厳しくする」ということになり、今シーズンはさらに厳しい方向。

キム選手が高得点を出した初戦のアメリカ大会の判定の甘さが、逆に異常に見える。今回のNHK杯のジャッジだったら、あのときのキム選手のフリーの高得点連続ジャンプにも間違いなく回転不足判定しただろう。wrong edgeもつけたかもしれない。

今シーズンの中でもNHK杯の女子シングルは、異様なほど厳しかったのだ。だが、回転不足判定は、「疑わしきは罰する」という、今回のこの基準のままいくと考えたほうがいいだろうと思う。若干不足していても、認定したりしなかったりすると、不公平感が出る。今回は徹底的に、少しでも回転不足だと減点したという意味では、どの選手に対しても公平だった。

GOEのほうは相変わらず公平ではない。

なんとか浅田選手を落としたいジャッジは、最初のあの見事なトリプルアクセルに加点をしなかった(1人)。2点加点したジャッジが6人もいる中で、1人だけ意固地に加点しないのは異常。だが、さすがにあそこまで完成度が高いと、減点もできない。

次の3A(<)+2Tにはダウングレード判定をいいことに、マイナス2点をつけたのが2人。しーちゃんは、「手を挙げているので加点されるはず」と言っていたが、それは認定されてこそ(まさか認定されないとは思わないもんねぇ)で、残念ながら(<)されたので、マイナス1からマイナス2の減点がつけられたのだ。浅田選手はこうした、「ちょっとでも減点できる要素があれば、最大限減点してくる」ジャッジとも戦わなければならない。

文句なく回りきって降りてくること」――これがこれまで以上に大事になってくることははっきりした。3回転を1つでもダウングレードされると、2回転の失敗ジャンプにさせられるから点はのびない。それこそキム選手のように、苦手な3回転ジャンプは回避して、比較的基礎点の高いダブルアクセルを3つ入れようかという話になってくる。

やや回転不足気味のジャンプの多い中野選手には非常に厳しい。着氷をうまく決めることはできなくても案外回りきって降りてこられる鈴木選手のほうが有利かもしれない。中野選手はトリプルアクセルを跳ぶが、実は彼女の3Aは常に、「ちょっとだけ回転不足」なのだ。去年までは認定してくれるジャッジもいた。だが、今年NHK杯の基準では、何回跳んで着氷しても、ダメだろう。

しかし、浅田選手、安藤選手、中野選手、村主選手、鈴木選手――5人も国際大会で表彰台にのぼる選手がいる日本女子の層の厚さって……。ホント、回転不足気味のジャンプをドンドンダウングレードして減点しないと、他国、特にヨーロッパの選手はまったく歯が立たない。というか、あれだけ、ジャンジャン減点しても、NHK杯では表彰台を日本選手が独占した。「まだまだ減点を厳しくしないと」なんて考えてるジャッジがいそうで、イヤだなぁ。

あ~、世界選手権&オリンピックの女子の枠を5枠ください!!
浅田選手が今のところ別格だとしても、この5人は全員、世界トップ10人に入る力がある。誰が枠からもれても、あまりにかわいそうだ。

だが、世界トップを狙う浅田選手にとって、弱点を狙いうちにされた過酷な減点は最大の強敵だ。あの3A+2Tで3Aが認定されないとなると、事実上浅田選手はトリプルアクセルからの連続ジャンプはできない選手ということになってしまう。100%文句なく降りきって連続ジャンプにすることは、公式練習を見る限り浅田選手にはできていない。今日の出来は、今のところ浅田選手の最高の出来。とりあえずは、あのまま行って判定を待つしかないだろう。だが、「まったく文句のつけようもなく降りきってセカンドへつなげる」ことが、浅田選手にとって不可能だとも思わない。3Aもあそこまで完成させた選手だ。ただ、もう少しトレーニングが必要だろうし、今季はおそらく100%完成させるには時間がたりないと思う。

とにもかくにも、3A+2Tを今回初めて国際大会で入れて、あの出来なのだから、非常にいいと思うのだ。去年より3Aは間違いなく安定してきている。

もう1つの問題は、常にちょっとだけ回転不足になるセカンドに跳ぶトリプルループ。こちらのほうが実は大問題。フリーでは今回入らなかったので、3回転ジャンプが1つ減り、その分点数が出なかった。トリプルループをセカンドに入れられなかった場合、もう1箇所でどこかで連続ジャンプを入れられるのだが、3Tのあとに何か入れるなどの「点数稼ぎ」が必要になるかもしれない。

浅田選手は、今回もフリーに基礎点の高い3ルッツを入れていない。ただ、ショートでは入って、加点もついた。あれだけ入り方を徹底的に変えて成功させるなんて、すごい努力だろう。もちろん才能もあるが。考えてもみてほしい、エッジの矯正では、ほとんどの選手がもう1つのジャンプの調子まで崩して苦しんでいる。男子のトップ選手でも、1年で完全に矯正できた人はあまりいないのだ。来年に向けてルッツも安定してくれば、去年まで足を引っ張っていたものが武器になる。

浅田選手はショートでは、意地でもセカンドにトリプルループをつける人で、入るか自爆かどちらか。1回転になってしまったとき、伊藤みどりから「最低でも2回転にしないと。真央ちゃんなら2回転にならできそうなのに、なぜ?」と言われていた。

今回のNHK杯のショートの(かなりきれいに見えた)3F+3Loの3Loでもダウングレードとなると、3回転ループを跳ぶのはあまりに危険になる。判定は試合によって超厳しかったり、若干甘かったりするが、一度ぐらい「2回転で回避」して得点の出具合を見てみるのもいいのではないだろうか。こんなときに3トゥループに逃げられないのが痛いのだ。浅田選手は3トゥループも回転不足が多い。ただ、今回の単独3Tの高さを見ると、セカンドに3Tをつけてもいけそうに見えるのだが… フリーで、3T+3Tのコンビネーションなど、どうなんだろう? もちろん教わるのは伊藤みどりに。彼女はプログラム後半での3T+3Tを、試合でほぼ100%の確率で決めていた。今から思えばすごいことだが、伊藤選手は簡単にやってしまうので、あれはやさしいのだと思っていた(苦笑)。

ここまでジャッジが意地でもダウングレードしてくると、今の浅田選手のセカンドのトリプルループジャンプでは何度やってもすべてダウングレードされてしまう。実は世界女王になった去年の世界選手権のフリーでも、セカンドの3回転(3Tのほうだが)は若干足りないかな? というのが認定されて命拾いしているのだ。浅田選手はジュニア時代から、セカンドの3回転は常に、ちょっとだけ回転不足。それを今になって徹底的に減点対象にされているというわけ。

<文字数オーバーしたので、続きは明日>




最終更新日  2008年12月26日 03時16分03秒

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