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2008年12月04日 楽天プロフィール Add to Google XML

織田選手の判定に「甘さがあった」などと書く毎日新聞の愚
[ Figure Skating(2008-2009) ]    

日本の新聞記者のフィギュア・スケートに対する無知は絶望的だ。去年はプログラムコンポーネンツで高い評価を得ている浅田選手に対し、「課題は表現力」などと堂々と書いて、Mizumizuはさんざんこのブログで誤解を指摘した。去年浅田選手の点がのびなかったのは、wrong edgeに対するシビアな減点とジャンプの失敗が響いたのだ。表現力は一貫して高く評価されてきた。

今回のNHK杯の織田選手の優勝について、毎日新聞の山本亮子記者の書いた記事も、まったく新採点システムを理解していないし、読者に採点システムとジャッジに対する誤解を植え付けるものだ。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/figure/news/20081201k0000m050024000c.html

「それだけに、154.55点には「びっくりした」。地元有利を考慮しても、判
定に甘さがあった印象は否めない。周囲が優勝に沸き立つ中、織田はなかなか笑顔になれなかった」


「ビックリした」のはMizumizuも同様で、それについては先日のエントリーに書いた。だが、プロトコルを見ればわかるが、ジャッジの判定はまったく甘くない。織田選手は確かに目立ったミスをしたが、すでに書いたように、点数が下がらなかった最大のポイントは、4Tも3Aも、あるいはコケそうになった3F+2T+2Loも、「すべてのジャンプをきっちり回りきって降りて」きてから、ミスっていたことなのだ。

だから、4T、3Aと認定されて(つまり、回転不足判定されず)、基礎点が下がらなかった。これが大きいのだ。GOEでは4T、3Tともきっちり減点されている。3連続ジャンプの失敗も転倒扱いで1点引かれ、GOEでも減点されている。ただし、ダウングレードはないのだ。

それなのに、「印象」で「判定に甘さがあった」などと書くのは、ジャッジに対して失礼だ。「現地開催アゲ」があったとすれば、プログラムコンポーネンツ(演技構成点)の77.4点だが、これだって75点以上彼がもらった理由はハッキリしている。

プログラムコンポーネンツ(演技構成点)で点を高くもらう選手には、共通点がある。それは「上半身、特に腕の表現がしなやかな選手」だ。プログラムコンポーネンツ(演技構成点)には「スケートの技術」「つなぎのフットワーク(NHKは「つなぎのステップ」と訳しているが、ステップというより、エレメンツとエレメンツをつなぐ足の使い方といった意味だ)」という、主に脚の表現力を評価する項目があるが、そのほかに「パフォーマンス」「振り付け」「音楽との調和」という3つの項目がある。これに大きく影響してくるのが、上半身の表現力なのだ。織田選手は肩の可動域が広く、腕の表現が非常に大きく、しなやかだった。

一方、プログラムコンポーネンツ(演技構成点)でなかなか75点の壁を越えられない小塚選手は、腕のやわらかな表現に乏しい。腕を使っていはいるが、肩の動きに「広さや深さ」がないから、単に「腕を振り回したり、広げたりしてるだけ」に見える。ライバルのチャン選手との差は明らかだ。チャン選手は肩の可動域が広く、腕が根元から前後に深く動く。しかも手首も非常に柔らかく、繊細な指の動きには目を奪われる。流麗に腕を動かし、指先にまで神経の行き届いた上品なポーズを決める、そこまでの流れと制止した姿に魅力があるのだ。そして、チャン選手はプログラムコンポーネンツ(演技構成点)75点の壁をやぶって高い点をもらう。

女子のキム選手も、肩の可動域が広く、腕の表現が抜群で、プログラムコンポーネンツ(演技構成点)は高い。こうした肩のやわらかい選手に共通するのは、「ポーズが非常に美しく見える」ということ。一方、肩を痛めた安藤選手はプログラムコンポーネンツ(演技構成点)でもなかなか点を出してもらえない。今回の織田選手の振り付けは、腕を大きく使い、腕から身体、脚までのラインの美しさをぞんぶんに見せるよう配慮されていた。そして要素と要素の間に「一瞬のポーズ」を入れる(まるでキム・ヨナ)。こうした工夫と表現力が評価されたのだ。

だから、多少の「ご当地アゲ」があったとしても、織田選手のプログラムコンポーネンツ(演技構成点)が75点以上というのは、それほど不思議ではない。小塚選手以下になることは考えられないが、たとえプログラムコンポーネンツ(演技構成点)で4点下がって73.4点だったとしても、合計点は150.55で150点を超える。

技術点のほうには、一番最初に書いたように、GOEでの減点はきっちりされている。どちらにも「判定の甘さ」などはないのだ。

去年からフィギュアの点数の出方は異常になった。それは確かだ。だが、その諸悪の原因は、繰り返し繰り返し説明しているように、「見た目にはわからないような回転不足を、ビデオで見つけてダウングレードし、さらにGOEで減点するから」なのだ。

回転不足判定は微妙なものが見逃されたり――ただし、見ているほうが「これは見逃しだろ」と思っても、「いや、4分の3以上は回っていましたから、3回転と認定しました。見逃しではアリマセン」と言えばそれまで――判定されたりする。それも事実だ。だが、今回の織田選手のジャンプの着氷が、「すべて回りきっておりてきていた」のは疑いようがなく、甘く判定されて認定された事実は一切ない。ビデオで確認してみてほしい。すべての失敗ジャンプも着氷時に一瞬「ピタッ」とエッジが止まっている。そのあとで吹っ飛んでいるのだ。これは見た目の印象は非常に悪いが、ダウングレードされずにGOEだけの減点に留まるから、それほど苛烈な減点にならないのだ。

一方のウィアー選手は後半の3ルッツが2ルッツになってしまった。後半だと3ルッツの基礎点は6.6点。2ルッツは2.09点にしかならない。加点がついたが、点は2.29点。さらに3Fの予定が1Fに。1Fの後半の基礎点は0.55点。さらに減点されて0.45点。一方の織田選手は後半の3ルッツと3ループで、6.7点(加点)と5.05点(減点)。こうしたところでの点差も響いた。そしてウィアー選手がフリップで失敗するのも理由がある。彼はフリップがwrong edgeなのだ。今回は1FであるにもかかわらずE判定がついた。このようにwrong edgeをかかえる選手は気になって、思いもかけない大失敗をしてしまうことが多いのだ。気にせずに跳んだほうがまだよかったりするのだが、どうしても気をつけようとして、2回転、1回転になってしまう。
この失敗は浅田選手もフランス杯でやったし、中野選手にも多少の影響があるように思う。中野選手はフリップがよく回転不足判定されるので、それも気になっているではないか。

まったく、日本の記者はどうして、まったくフィギュアのことを勉強しないんだろうね。これほど日本の選手が強いというのに。今の採点システムが変なのは事実。それもこれも「回転不足だと、見た目の着氷の大きな乱れ以上に減点される」というおかしなルールのせいであって、ジャッジには罪はない。ジャッジは一生懸命このルールにそって、忠実に減点してるだけなのだ(苦笑)。

日本のメディアのみなさんは、どうしてこういう変なルールがまかりとおっているのか、詳しく取材してみたらどうだろう。もちろん、屁理屈はあるよ。「3回転の回転不足は、2回転が失敗してオーバーターンしたもの(つまり失敗)だから」とかね。だが、それは見た目ほとんどわからないような回転不足ジャンプを、ムリヤリ2回転ジャンプの失敗にして、明らかな失敗ジャンプ――オーバーターンしたり、手をついたり、ジャンプによっては転倒したものより低くつける合理的な説明にはならない。

回転不足判定を厳しくする――それで、非常に困る世界のトップ女子は誰だろう? 難度の高いジャンプを跳びながら、微妙に回転が足りないまま降りてきてしまう浅田選手と安藤選手なのだ。一方で、セカンドに3トゥループという、3ループより難度の低いジャンプを跳ぶコストナー選手とキム選手は、回りきって降りてこられる確率が浅田選手や安藤選手より高いから、メチャクチャ有利になったのだ。

有利になったのが、イタリア人と(カナダ人のコーチつき)韓国人。しかもプレ五輪でそれがますます露骨になってきた。国際スケート連盟の有力者って、誰でしたっけ? 本当にすごい偶然ですね。

点が異様に見えるほど高かったり、変に低かったりしたとき、「判定が甘い」なんて無責任な印象論を書いて読者に誤解を与えるより、「なぜ、ミスが多かったように見える織田選手の点が下がらなかったのか」を、プロトコルをみて考察すべきだ。ミスが多くても、ある基準を満たせば点が下がらないようなルールを作ったからなのだ(それがいかにおかしいかは繰り返し批判しているが、おかしくたってルールはルールなのだ)。織田選手はたまたま、この基準を非常にうまく満たす選手だった。ジャンプの正確さに加え、スピンやステップにも取りこぼしがない。キム選手と似ているのだ。だから、Mizumizuは、「いきなり世界チャンピオンも夢ではない」と思うのだ。



<ここから、きのうの続き>

3ループに関してはそうだが、浅田選手の場合、3アクセルからの2Tはもっと完璧にできると思う。ただ、欠点を狙い撃ちされた浅田選手が、それに打ち勝って、誰にも文句を言わせないジャンプを跳ぶ肉体を作るのに、もう少し時間がかかるのは仕方がない。これだけ「ごくごく小さな欠点をメチャクチャ大きな減点」にされても、浅田選手は自分に対する自信と欠点を克服しようとする前向きな気持ちを失うことがない。あの3A+2Tをダウングレードされても、「また課題ができた。大丈夫だと思う」なんて言えるのがそもそもスゴイ。思うようにいかないことがあるとすぐに、「私ばっかり不公平に扱われている。XXさんはヒイキされてるのに」「私はイジメられている」「周囲が認めてくれない」とグチる近頃の「マジョリティ日本人」とは大違いだ。



エッジで「E」や「!」判定されて、「判定に不満」などと頬を膨らめているキム選手にも見習って欲しいもの。キム選手のフリップのエッジが怪しいのは昔からだ。インの軌道で滑ってきて、最後に中立に戻り、ときにアウトに入って踏み切っている……場合があるかもしれない――それは以前から指摘されている。「誰にも文句を言わせないぐらいキチンと正確にインで踏み切る」ようにすればいいことだ。

ルールについて言えば、前回のオリンピックで優勝したのが日本人女子。冬のオリンピックの華である女子フィギュアで、できれば連続で日本人女子には勝って欲しくない――ヨーロッパもアメリカも内心ではそう思っている。だから、彼らはルールそのものを変えて、日本人を勝てなくしようとする。回転不足判定の厳密化で苦境に立たされるのは、アメリカのジャン選手や長洲選手もその範疇に入るが、彼女たちはまだ世界トップを狙うほどではない。一番苦しいのは浅田選手、安藤選手、中野選手だ。頻繁にお手つきしたり、転倒したりするが、「とりあえず回りきって降りてくることのできる」コストナー選手には、この基準は有利だ。キム選手も回転不足の少ない選手だが、実は今年に入って、ほんの少しだけその正確さにほころびが見える。体の成長にともなって起きてくる問題で、今年はまだその萌芽だが、来年はもっと大きな問題になる可能性がある。

たとえばアメリカ大会でのフリーの3F+3T。
http://jp.youtube.com/watch?v=c2GuzcjWn5c&feature=related
このビデオをアップした人は最初のジャンプのwrong edgeを疑っているようだが、Mizumizuの目にはセカンドジャンプの3Tが回転不足気味なのが気になる。ダウングレードされず、逆に加点までされたのだが、少しだけ足りないのは事実。これがまたファンの誤解と中傷を招いている。つまり、微妙に回転不足でダウングレードされれば、そこから減点。


<明日へ続く>








最終更新日  2008年12月04日 19時54分35秒

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