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未知之国・夢紀行3

未知之国・夢紀行3

ティンクェ・テッレのマジョルカ叔母さん

「ティンクエ・テッレのマジョルカ叔母さん」

マジョルカ叔母さんから何年か振りに国際便の手紙が届いた。叔母さんは、農家。葡萄の栽培をしている。急峻な崖に狭いながらも少しばかりの葡萄畑で生計を立てている。もう、70歳を過ぎているが肩に担いだ、天秤棒で水を運んでは水遣りにせいを出している気丈な叔母さんなのだ。空はどこまでも青く、畑の下に広がる海は碧色に染まっている。真っ赤な磯舟が時折り、けたたましく音を立てながら白い尾を引きながら海面を滑って行く。マジョルカ叔母さんはこの景色が自慢だった。畑に水を遣りに行く~と言うより、この景色が命の洗濯になるんだと、いつも自慢していた。

葡萄はそろそろ、花芽が付き始めている頃だろう。ツル回しをして支柱に先端を絡ませる作業に追われているに違いない。今年も温暖な気候と気温は申し分ない。今年も豊作に違いない~と叔母さんは思うのだった。潮風が吹き付ける断崖絶壁の畑で採れる葡萄は極上品の評価がされている。イタリアでも有数の畑として、その存在を誇っているのだ。

叔母さんの家族はいない。旦那のアントニオが他界してもうかれこれ20年になる。二男二女の子供もいたが、皆トリノに住んでいる。皆さんも知っての通り、トリノは都会である。地方の中核都市と言って過言ではない。娘らは、叔母さんをトリノで一緒に暮らそうと言ってくれるのだが、マジョルカ叔母さんに、その気は無い。夫婦で丹精込めて育て上げた葡萄畑を手放す気持ちにならないのだ。そんな叔母さん、トリノに出掛ける用事が出来たのだ。

続く・・・・・・・・!



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