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2009.12.25
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波乱に満ちた2009年も終わろうとしています。今回は来年2010年の相場テーマを展望してみたいと思います。

まず、新エネルギーと環境関連です。12月7日から18日までの予定でコペンハーゲンで開催されていた第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)が19日に閉幕しました。前回も書いた通り、地球温暖化対策は政治、経済、株式市場のいずれにとっても大きなテーマですが、今回のCOP15では結局大した結果は出ませんでした。その結果、日本は諸外国に比べ突出した削減義務を課されずに済みそうです。

来年1月31日までに先進国は京都議定書よりも厳しい排出削減目標を提示し、途上国は排出抑制計画を提示することになっていますが、いずれも拘束力はありません。また、先進国は発展途上国に対して巨額の支援金(まず2010~2012年に300億ドル(約2兆7000億円))を行うことになりますが、これは日本の環境技術やエコカーにとって市場が拡大することになりますので、前向きに捉えてよいでしょう。

COP15で明らかになったのは、各国、各グループの思惑の違いでした。アメリカと中国は終始消極姿勢でした。彼らは自国の経済成長を優先する立場を変えませんでした。また、中国などの新興国と発展途上国は、先進国からの支援金を引き出すことができました。

欧州諸国は最も落胆した国になったようです。この会議の中で彼らの本音がでてきましたが、それは地球温暖化を防止しなければならないという使命感ではなく、排出権取引で儲けようというものでした。その利益で弱り切った欧州の金融市場をテコ入れしようと言うものでした。主なターゲットは日本で、日本の25%削減案が実行されると、毎年数千億円が排出権を買うために日本から出ていき、その手数料が欧米投資銀行の収入と従業員のボーナスに化けるという目論見です。この目論見は温暖化ガスの削減には何も寄与しません。こういった人達がいる欧州の一国が議長を務める会議で、まともな結論がでることなど期待するほうが無理でした。

日本では、鳩山首相が就任早々に地球温暖化ガスの排出量を2020年までに1990年比25%削減すると宣言しました。日本だけがこれに取り組むのではなく、諸外国を巻き込んだ国際的な取り決めができることが、25%減の前提になっています。今後の推移を見守る必要はありますが、現時点では、日本だけが突出してこの目標を設定されることはなさそうです。

もっとも、COP15で大した結果が出ないからと言って、化石燃料から新エネルギーへの転換と地球温暖化防止ビジネスが頓挫することはないと思われます。地球温暖化防止と、省エネ、環境汚染防止とは相当程度範囲が重なります。石油、石炭などの化石燃料から原子力や太陽電池へのエネルギー源の転換は、環境汚染防止にも省エネにも寄与しますし、地球温暖化ガスの削減にも寄与します。

中国などの新興国が70ドル台の原油をいつまでも喜んで買い続けるとは思えません。また、新興国の環境汚染は、そろそろ国民の忍耐の限度を超えるレベルになっています。今後、新興国が新エネルギーと環境関連市場の大市場になるのはほぼ確実でしょう。来年も新エネルギーと環境関連産業の動きを探っていきたいと思います。

■日本企業の国際展開が進む、大型M&Aも?

民主党政権成立前の今年8月ごろから円高が進みました。民主党政権成立の確率が高いと市場が感じ取ったことが主な要因と思われます。また、民主党政権成立後に、財務大臣が円高肯定論を発言したことは決定的でした。それが、その後の円高の流れになったと思われます。円高の弊害は、デフレーションを後押しして企業収益を悪化させ、賃金を引き下げ、負債を抱える企業と家計を困った立場に追いやってしまうということです。企業や国民が安い輸入品を買うことができると言うメリットなど吹き飛ばしてしまうほどの害が円高にはあるのです。

円高が続くと、企業の海外移転が進むことになるでしょう。また今の日本政府が、大企業に対する支援に熱心でないことも、日本での生産に固執しない企業を増やしていると思われます。

一方で、日本企業は海外企業にはない技術を数多く持っています。三菱自動車工業とフランスのプジョー・シトロエングループとの提携交渉が明らかになりましたが、この眼目は三菱自動車の電気自動車です。現時点で量産化された電気自動車を作っている会社は、日本の三菱自動車とアメリカのテスラモーターズの2社だけ。来年になれば、日産など世界の大手メーカーが参入しますが、すべての自動車メーカーが電気自動車を生産販売できるわけではありません。

また、ハイブリットカーもトヨタ、ホンダなど日本メーカーの独壇場になっています。電機では、原子力、太陽電池、リチウムイオン電池などの新エネルギー関連や、発電、送変電、鉄道などの社会システム関連も国際競争力の大きな分野です。また、これらの製品を構成する素材、部品も同様です。

自民党政権は日本の大企業ができるだけ日本から出ていかないように、様々な妥協を繰り返してきました。その中には派遣規制の緩和など、必ずしも好ましいと思えない政策もありました。民主党政権は今のところ日本の大企業とは距離を保っており、彼らを支援することもないように見えます。その結果、日本の大企業はこれからも海外に生産拠点を移して、海外展開を進めていくことでしょう。そして、少なからぬ企業がそこで大きなビジネスチャンスを獲得することになると思います。特に、電機、自動車、電子素材を含む素材などに注目したいと思います。

■日本にカントリーリスクの問題?

ネガティブな問題にも気をつけておかなければなりません。それは日本のカントリーリスクが、今後2~3年で投資にとって無視できない程度に増加する可能性があることです。問題は財政赤字と安全保障です。

民主党政権が成立して3カ月経ちましたが、彼らの経済政策の特徴がある程度分かってきました。第一の特徴はまず「削る」ということです。第二次補正予算の骨格は自民党政権時代にできたものです。ここから民主党の方針から外れる予算を執行停止し、あるいは削ってきました。一方で、自分たちのマニフェストに合った政策を付け足そうとするのですが、予算が足りずに様々な妥協を模索しています。来年度予算でも同様の行動が見てとれます。第二の特徴は、企業への支援ではなく、消費者への直接給付による需要増加を重視するということです。

このように、一方で予算を削り、一方で付け足すと、削られた分野では失業者が増えることになりますが、増えた分野で必ずしも雇用が増えるとは限りません。今の不況の中では、どのような産業、企業であれ余剰人員を抱えているので、その分野で政府予算が増えたからと言って、特に正社員の雇用は簡単には増えないと思われます。また、雇用規制も厳しくなりそうです。

また、消費者への直接給付を重視して需要を作り出すという考え方は、失業率がまだ低く景気がここまで悪化していない場合は、実施する価値はあると思われますが、明日にでも多くの労働者が失業するかもしれない切迫した状況では、企業への支援のほうがより効果があると思われます。ちなみに、消費者への直接給付に政策の重点を置くと、この円高下では需要の多くが輸入品に流れてしまい、かえって消費者=労働者の雇用が失われてしまう懸念があります。

このように、民主党政権の経済政策では、一定の政策効果が出るのに自民党政権(例えば麻生政権で定額給付金という消費者への直接給付とともに、企業への支援(例えばエコポイントやエコカー減税など)を行いました)に比べて、余分に予算が必要になると思われるのです。こうなると、失業率が高止まりして、かつ、財政赤字だけが拡大することになりかねないでしょう。そこで、これをいつまで続けることができるのかが債券市場で問題になる可能性があります。そうなると、株式市場にも影響が出る可能性があります。

次に安全保障の問題があります。アメリカとの距離を再検討して、中国に接近するというのが、民主党の一部の実力者の考え方の模様です。この考え方には明確な問題があります。アメリカは日本と同じ議会制民主主義と資本主義の国で日本の同盟国です。中国は市場経済を導入したとは言え、共産党独裁の国で、日本とは同盟関係はありません。経済水域を巡っての争いもあり、軍事費は年率約20%で増加しています。もし、アメリカとの仲が決定的に悪化して日米安保条約が廃棄されるようなことになれば、四方を海に囲まれた日本は直ちに海上輸送路と経済、ひいては独立を他国に脅かされることになりかねないでしょう。世界地図を見て、日本の周辺国の人口、軍事力、政治体制を考え併せれば、簡単に理解できることです。

日本はアメリカとの同盟関係なくして、一日も経済と独立を維持することはできないという至極当たり前のことは、民主党政権や党の別の有力者の発言から見ると、わかってきている人達もいるようですが、そうでない人達もいるようです。注意しなければならない問題と思われます。

本年はこれにて終了です。今年も1年間拙い文章をお読みいただきありがとうございました。来年は寅年、世情の動きを見ると、上にも下にも猛々しい相場になる予感がします。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

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楽天証券経済研究所
アナリスト 今中能夫
(楽天マネーニュース[株・投資]第65号 2009年12月25日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2009.12.25 20:44:09


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