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今号のピックアップの日記 [全82件]
前回、最悪の場合、資産の約3割を失うことが想定される金融商品に投資するとして、許容できる損失額が仮に100万円であれば、投資金額は330万円程度までに留めたほうが良いであろうことを説明しました。しかし、330万円の手元資金では、20年後に手にする金額は、(終価係数表から)利回り5%の場合で約870万円、8%では1,530万円と想定され、目標金額の2,000万円に届きません。 最終更新日時 2011.11.07 19:47:48
このところの世界的な株安を受けて金融商品への投資に躊躇する人も多いことでしょう。しかし、自助努力による将来の備えが不可欠と考えられる中、この低金利下にあっては貯蓄だけで十分な資産形成を図ることは難しく、リスク資産の活用から目を背けることはできません。今回は、資産運用を開始するにあたって注意すべきことを考えてみましょう。 まず、支出の時期と概算金額を把握することが大切です。単身者であれば結婚が最初に訪れる大きなライフイベントでしょうし、子供のいる家計では学費の支出に占める割合が高まります。また、子供の成長につれて住居の問題も出てくることでしょう。会社勤めの場合、定年退職後の収入減への備えも大きな課題です。近い将来の出費に充てる予定の資金はリスクにさらすべきではなく、生活費の数カ月分の予備資金と合わせて預金口座に預け入れておくべきでしょう。足元の資産の状況と将来の資金収支の見込みから、リスク資産に投じることのできる金額を事前に把握しておき、そこから大きく逸脱しないように心掛けることが大事です。 次に、目標金額を明確にすることです。最近では、年金制度に対する不信感などから老後生活に金銭的な不安を感じる人が増えており、定年後の収入減にどう備えるかが大きな課題となっています。「家計調査報告(平成22年度)」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の消費支出は234,555円でした。仮に月25万円の支出を前提にすると、20年間で約6,000万円、30年間では9,000万円ほどが必要で、ここから退職金と年金収入を差し引いた金額が自助努力で準備すべき金額となります。 そして、期待利回りと許容できるリスクのバランスを図ることも重要です。ここで、2,000万円を老後資金として用意しなければならないとしましょう。運用期間を20年間、期待利回りを3%として複利運用する場合、20年後に2,000万円を手にするためには(現価係数表から)1,100万円ほどの手元資金が必要となることが分かります。しかし、これが、5%の利回りであれば750万円、8%では430万円ほどの資金で済むことから、手元資金に余裕のないような状況では、つい高めの期待利回りを前提に資産計画を立てがちです。また、運用期間が短くなればなるほど、高めの利回りを設定する傾向はさらに強まります。 しかし、高い利回りの裏には高いリスクが潜んでいると考えるべきです。ここでいうリスクとは、期待されるリターンのばらつきのことを指し、リスクが高いということは大きく値上がりするのと同じくらいの確率で、大きく値下がりする可能性もあることを意味します。したがって、リスク資産に投じる金額は、最悪のケースを想定して、たとえ失ったとしても日常の生活に、またその後の資産形成計画に大きな支障を生じないで済む金額に留めるべきです。例えば、最悪のケースで資産の約3割を失う可能性のある金融商品に投資するとして、許容できる損失額が100万円であれば、投資金額は逆算から330万円程度に抑えるべきことが分かります。 以上のように、将来の収支を基に目標金額を決め、期待利回りと許容できるリスクのバランスを図りながら投資金額を判断すると無理のない運用計画に落ち着くことでしょう。 ========================================================== ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社 ファンドマネージャー 相川雅宏 (楽天マネーニュース[株・投資]第106号 2011年10月14日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.10.17 09:07:04
資産運用を始めたばかりか、これから新たに始めようとする個人投資家の中には、当初はインデックスファンドを購入して投資の知識がある程度身についた時点でアクティブファンドに乗り換えることを考えている人が多くいるようです。あたかも「インデックスファンドは手慣らしで、アクティブファンドが本番」という感じですが、果たしてそうでしょうか。 たしかに、かつてはアクティブファンドが投資信託業界の主流でした。最近、インデックスファンドの認知度が高まりつつあるとはいうものの、今でもスポットライトが当たるのはアクティブファンドのほうです。ベンチマークに打ち勝つ醍醐味のようなものがアクティブファンドの魅力であり、ファンドを提供する側としてはプロ意識もあってアクティブファンドが主戦場という気持ちが強くあります。また、取り扱い手数料が高いことから、投資信託を販売する金融機関がインデックスファンドよりもアクティブファンドに重きを置くのも当然といえるでしょう。 しかし、それはあくまで商品を提供する側の論理であり、自らの資産を投じる投資家は金融機関の思惑にくみする必要はありません。金融機関ではアクティブファンドが主であったとしても、利用者側の立場に立てば見方は逆転します。短期的にベンチマークを上回る成績をあげるアクティブファンドがあったとしても、好成績をその後も維持することは現実的には困難なことです。老後資金の準備といった長期の資産形成に取り組む個人投資家にとってはなおさら、運用成績の浮き沈みが予想されるうえに手数料の高めなアクティブファンドよりも、市場平均並みのパフォーマンスを確実に、しかも安価に提供し続けるインデックスファンドのほうが資産運用の中心に据えやすいといえるでしょう。 資産運用には、コア・サテライトという考え方があります。年金基金などのプロの機関投資家が採用するアプローチです。運用資産の中でも、長期的な観点から行う安定運用部分をコア・ポートフォリオとし、コア部分以外をサテライト的な位置づけとします。そして、資産の中核であるコア・ポートフォリオではグローバルな分散投資を重視し、確実に市場平均リターンを低コストで獲得できるインデックスファンドが採用されます。一方、サテライト部分では、積極運用を行うアクティブファンドを採用し、短中期的に市場平均を上回る超過収益率をあげることを目指します。 同じような取り組みが個人投資家の資産形成にも有効でしょう。老後資金の準備といった長期的な資産運用部分をコア・ポートフォリオとみなしてインデックスファンドに投資し、一方で、有望なアクティブファンドを見出すことにやりがいを感じたい人はサテライト的な位置づけで、ただし長期の資産形成に支障のない範囲内で楽しむ、という取り組み方です。「アクティブファンドかインデックスファンド」ではなく、「アクティブファンドとインデックスファンド」という頭の切り替えが大切といえるでしょう。 ========================================================== ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社 ファンドマネージャー 相川雅宏 (楽天マネーニュース[株・投資]第105号 2011年9月30日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.09.30 12:43:31
投資信託は、運用方法による違いからインデックスファンドとアクティブファンドに大別されます。今回は、両者の違いについてまとめてみましょう。 アクティブファンドは、市場や投資銘柄に対するさまざまな調査結果や予測を基にして、運用成績の評価尺度であるベンチマークを上回る運用成果を目指します。投資対象が株式の場合、ベンチマークには株式市場全体の動きを表わす株価指数が採用されます。日本では、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価指数などが一般的です。 アクティブファンドのパフォーマンスの優劣は、このベンチマークを上回る収益率、いわゆる超過収益率の大きさで判断されます。これに対して、インデックスファンドはベンチマークを構成する、ほとんどすべての銘柄に投資し、ベンチマークとほぼ同じ値動きをすることを目指すことから、その良し悪しはベンチマークとの連動性で評価されます。 さて、ベンチマークを上回る収益率を期待できる点がアクティブファンドの最大の魅力ですが、実際には、アクティブファンド間でパフォーマンスに大きな差があります。運用成績の良いファンドで大きな投資成果をあげることができるのと同じくらいの確率で、運用成績の悪いファンドを選択してしまい、市場平均を大きく下回る結果に陥る可能性もあるということを念頭に置いておきましょう。また、短期的にベンチマークを上回るパフォーマンスをあげるファンドがあったとしても、コンスタントに好成績を維持することは現実的には難しいということも覚えておいてください。 ファンドの目利きには自信があるという人もいることでしょうが、そもそも過去の好パフォーマンスが将来の運用成果を保証するものではありません。事前に、将来のパフォーマンスが良いであろうファンドを選ぶことは難しいというのが現実です。 一方、インデックスファンドでは、ベンチマーク収益率、つまり市場全体の平均的なリターンをほぼコンスタントに獲得することができます。しかも、アクティブファンドのように、どの銘柄に投資をするかといった調査を行いませんし、一度、ポートフォリオを構築したら、入出金対応などの調整売買をする程度で、アクティブファンドほど運用に手間がかかりません。そのため、運用の対価として投資家が負担する「信託報酬率」は低めに設定されています。 例えば、日本株を投資対象にしたインデックスファンド(公募投信)の場合、信託報酬は純資産総額の0.4~0.6%程度です。アクティブファンドでは1.4~1.8%程度であり、インデックスファンドの3倍程度の水準に設定されています。また、投資信託を購入する際に販売会社に支払う「販売手数料」は、インデックスファンドで購入時の基準価格の2%程度に対して、アクティブファンドでは3%程度とやはり高めです。 一般的な商品では、高い値段を払えば、より良い商品やサービスを受けられると考えられますが、投資信託では、「手数料の高いファンドほど運用成績がより良いはずだ」とはいえません。むしろ、継続的に純資産から差し引かれる信託報酬はマイナスの複利効果を伴いながら確実にファンドの収益率を劣化させます。老後資金準備といった長期の資産形成の手段として投資信託を考えるのであれば、より保有コストの低いインデックスファンドを軸に据えるのが賢明といえるでしょう。 ========================================================== ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社 ファンドマネージャー 相川雅宏 (楽天マネーニュース[株・投資]第104号 2011年9月9日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.09.13 15:24:43
このところ、欧米の景気減速懸念や財政不安などを背景に世界的な株安が進み、リスクを回避しようとする大量の投資資金が円に流れ込んでいます。また、米金融緩和の長期化観測に伴う日米金利差の縮小に着目した円買いもあって、円は3月17日に付けた過去最高値(76円25銭)を更新しました。今回は「為替リスク」を回避する方法について、外国資産を投資対象とする投資信託の場合ではどのような手段があるのか、考えてみましょう。 外国資産を投資対象とする投資信託は外国通貨を通じて投資を行っています。そのため、投資信託の換金時において、円の価値が購入時の水準を上回っている状態(円高)では損失が発生してしまいます。この為替差損を回避するために「為替ヘッジ」を行います。「為替ヘッジ」とは、通貨の先渡し取引などを使って、運用成績が為替変動の影響を受けにくくする方法のことです。なお、先渡し取引とは、将来のある時点に、予め定めた価格で、ある商品を売買する予約取引のことです。例えば、円を売ってドルを買った後に、一年後に一定の為替レートで、ドルを売って円を買い戻す予約をすることであり、これによって為替差損をこうむるリスクを抑えることができます。 外国資産に投資する投資信託の中には、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」コースが用意されているものがあります。「為替ヘッジあり」コースでは、為替ヘッジを行うことで、基準価額の値動きが為替変動の影響を極力受けないように設計されています。したがって、為替リスクを回避しつつ、外国株式や外国債券などの収益だけを狙いたい人にとっては「為替ヘッジあり」コースを購入するのもひとつの方法でしょう。 なお、当然のことながら、「為替ヘッジあり」を選んだ場合で、購入時に比べて換金時の円の価値が外国通貨の価値よりも低い状態(円安)になったときには、「為替ヘッジなし」であれば得られたはずの「為替差益」を得ることができないことになります。 また、「為替ヘッジ」を行なうにはコストがかかることも知っておきましょう。ヘッジに伴うコスト(ヘッジコストと呼びます)は、相手国との短期金利差、例えば、ドル・円の場合、米国の短期金利と日本の短期金利の差が反映されます。そのため、投資先の金利が自国の金利よりも高ければ高いほど、ヘッジコストがかかることになります。2008年の金融危機以降、内外の金利差が縮小したことから、ヘッジコストもそれに伴って低い水準で推移しているものの、他国に比べて超低金利下にある日本の状況では、基準価額にマイナスの影響を与えるということは理解しておきましょう。 ヘッジコストは、投資信託購入者が直接的に支払うものではないので、気付きづらいものですが、信託財産から日々、差し引かれており、間接的に負担している格好です。ヘッジコストを支払ってでも将来の為替変動を回避したい、つまり、支払うヘッジコスト以上に円高による為替差損の影響が大きいと考える投資家にとって、「為替ヘッジあり」コースは有効な手段といえます。 ========================================================== ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社 ファンドマネージャー 相川雅宏 (楽天マネーニュース[株・投資]第103号 2011年8月26日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.08.30 15:57:05
「恐怖指数」(Investor Fear Gauge)という指標があるのをご存知ですか。株式市場に参加している投資家らの相場の先行きに対する不安感、つまり恐怖心理の高まりを数値化した指標のことです。市場で取引されているオプション(ある資産について、将来の一定の期日に、一定の価格で取引する権利を付与・売買する取引のこと)の価格から逆算して、市場参加者が予想する将来のボラティリティ(価格の変動率)を算出し、指数化したものが「ボラティリティ指数(Volatility Index)」であり、別名、「恐怖指数」と呼ばれています。このボラティリティ指数が高い値を示すほど、市場参加者が相場の先行きに対して不安感を募らせていることを意味します。 代表的なボラティリティ指数は、アメリカのS&P500種株価指数を対象に、シカゴ オプション取引所(Chicago Board Options Exchange:)が算出・公表している「CBOE SPX Volatility Index(VIX)」です。通常は10~20ポイントの間で推移しますが、相場急落の局面では、そのレンジを大きく超えます。過去の例でいえば、2001年9月のアメリカ同時多発テロ直後に一時49ポイント台まで上昇しました。 また、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻直後には42ポイントに、さらにその後、世界金融危機の様相が強まると、2008年10月末には89ポイントをつけました。その水準をピークに、徐々に低下し、しばらく20ポイント前後で推移したものの、2010年5月には、ギリシャの財政問題に端を発する世界同時株安を受けて再び上昇し、48ポイントをつけました。 今年に入ってからは20ポイントを下回る水準で推移していましたが、3月の日本の震災を受けて一時的に31ポイント台に上昇しました。その後は再び20ポイント以下の水準で落ち着いていたものの、8月に入ってからは、米連邦債務の上限引き上げ問題の難航と米景気減速懸念の高まりから、40ポイント目前まで急上昇しました(8月5日時点)。米債務問題が決着したものの、米経済指標の悪化を受けて景気の二番底懸念が浮上し、さらに米格付け会社が米国債の長期格付けをダブルAプラスに1段階引き下げたことが投資家の不安心理を煽る格好になりました。 日本でも、日経平均225を対象に、「日経平均ボラティリティー指数」が公表されています。通常であれば、20~30ポイントで推移しますが、リーマンショック後の世界金融危機を受けて、2008年10月には91ポイントに達しました。 その後、通常の水準で推移したものの、2008年5月のギリシャ・ショック直後には43ポイントに、今年3月の東日本大震災直後には50ポイントまで上昇しました。7月の同指数は20ポイント前後で推移していましたが、8月になってからは米国同様に、上昇傾向にあります。 8月5日には前日の24ポイントからいきなり38ポイント台に急上昇しました。相場の先行きについて投資家がどのように感じているのか、その市場心理を確認するうえで参考になる指標です。なお、「日経平均ボラティリティー指数」は、日本経済新聞(朝刊)のマーケット総合欄に毎日、掲載されています。 ========================================================== ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社 ファンドマネージャー 相川雅宏 (楽天マネーニュース[株・投資]第102号 2011年8月12日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.08.22 15:51:22
8月1日より、FX(外国為替証拠金取引)の証拠金倍率が現行の最大50倍から25倍に引き下げられます。FX(外国為替証拠金取引)とは、証拠金を業者に預け入れて通貨の売買を行う取引のことで、通常の売買のように直接の現金の受け渡しを行わず、反対売買による差損益金のみで決済を行います(差金決済)。 FXの最大の特長は、レバレッジにあります。レバレッジとは英語で梃子の作用/原理のことですが、梃子を利用して小さな力で大きな力を生み出すように、FXでは担保となる証拠金を元手に、その何倍、何十倍もの金額の外貨を取引することができます。 例えば、手元に80万円があるとしましょう。1ドル=80円として、レバレッジのない(もしくはレバレッジ1倍の)通常の取引では、10,000ドル(80万円)の外貨しか売買できませんが、10倍のレバレッジを使うと、取引できる金額は100,000ドル(800万円)、25倍では、250,000ドル(2,000万円)となります。 仮にドル・円レートが1円動くだけで、レバレッジ10倍では10万円、25倍では25万円の損益が生じます。レバレッジが高ければ高いほど、わずかでも為替レートが思惑と反対の方向に動けば、より大きな損失が発生することになります。そこで、このレバレッジを最大でも25倍までに限定しようとするのが今回の措置なのです。 最大倍率の引き下げは今回が2回目で、金融庁は昨年8月にもレバレッジの上限を50倍に限定する規制を導入しました。それまではレバレッジ数百倍を提供する業者もあり、一握りの成功例の裏で、大きな損失を被った投資家の話をよく耳にしました。 FXに「投機的」なイメージがつきまとうのは、このようなレバレッジの影響だけではありません。そもそもの為替取引の性質は、株式や債券に投資するのとは異なるということを理解しておきましょう。 株式投資の場合、得られるリターンは投資先の生産活動に参加することからもたらされ、株式投資で負うリスクとは資本を提供するリスクということになります。そのリスクに対して支払われる対価としての「リスクプレミアム(リスクに応じて期待する追加的な収益率)」を理屈上、期待することができ、時間をかけてそのリスクプレミアムを獲得することになります。 一方、為替のリスクは市場参加者がお互いの見通しの違いに賭けるリスクです。仮に、円を売ってドルを買った人がいれば、その反対側にはドルを売って円を買った人がいます。結果として、どちらかが得をし、どちらかが損をすることになりますが、損益の合計はゼロです。このように為替取引はゼロサムゲーム的な投機の側面が強く、リスクを負うことで追加的なリターンが得られるわけではなく、長期投資の恩恵を受けることは期待できません。リスク資産に投資をする場合は、リスクの大きさ(リターンの変動幅)もさることながら、負うリスクの性質についてもよく理解しておく必要があるといえるでしょう。 では、個人はFXとどう付き合えば良いのでしょうか。実は、FXでは為替手数料(スプレッド)が外貨預金の100分の1以下とコスト面で圧倒的に有利です。為替取引のゼロサムゲーム的な側面を理解したうえで外貨投資を行うのであれば、レバレッジを1倍程度に自ら限定することで、FXの良い面だけを活用することができるでしょう。 ========================================================== ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社 ファンドマネージャー 相川雅宏 (楽天マネーニュース[株・投資]第101号 2011年7月22日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.07.27 10:08:47
今年の夏のボーナスは、日本経済の先行き不透明感から家計の防衛色が一段と強まり、貯蓄や生活費の補てんを最優先する家計が多いようです。しかし、中には、ボーナスの一部を投資に振り向けることを検討している家計もあることでしょう。住宅ローンを抱える家計でも、ボーナスの一部をローン返済に充てるのではなく、ローン以上の利回りを見込める金融商品の投資に回すという考え方があるようです。ローン返済か、金融商品への投資か、住宅ローンを抱える家計はどちらを優先すべきでしょうか。 仮に、住宅ローン金利を3%、有望な投資候補の期待利回りを6%としましょう。期待利回りとは、投資において予想される利回りの平均値であり、ある金融商品が1年後に50%の確率で+15%に、50%の確率で-3%になると予想されるとすれば、15%×50%+(-3%)×50%=+6%が期待利回りとなります。あくまで1年後の収益率の期待値であって、実際には住宅ローン金利の3%を大きく上回るかもしれないし、逆に下回るかもしれず、その結果に大きな差が生じ得ます。 次に、住宅ローンの繰り上げ返済を投資的な観点から考えてみましょう。ローンのキャッシュフローは債券投資のキャッシュフローのプラス・マイナスをひっくり返したものと考えることができます。つまり、債券投資では、定期的に利息を受け取る(プラスのキャッシュフロー)のに対して、ローンでは、定期的に支払いが生じます(マイナスのキャッシュフロー)。 そこで、例えば、住宅ローン金利が3%であったとしましょう。繰り上げ返済をすることで、その返済額に将来発生するはずであった利払いを回避できることから、結果として将来のマイナスのキャッシュフロー(繰り上げ返済額×3%の利払い分)を軽減することができたことになります。これは、3%の利回りで、しかもゼロリスクで運用することができたことと同じ経済効果となります。 一方、ローンをそのままに前述の金融商品(期待利回り6%)に投資したとすると、3%のローン金利との差し引きの3%(=6%-3%)しかない期待リターンで、金融商品のリスク(株式の標準偏差は15~20%)を負うのと同様の取引をしたことになります。 以上のように、仮にローン金利に比べて、投資信託などの金融商品の期待利回りが高かったとしても、金融商品への投資結果は不確実(=リスクがある)であり、リスク・リターンの観点からも効率的とはいえません。一方、住宅ローンの返済では負債残高を減らすことで確実に(=リスクなしで)将来の利払いの一部を軽減できることから、ローン返済を最優先に考えたほうが賢明といえるでしょう。 なお、これまで繰り上げ返済に励んでこられたような家計では、ローン残高の減少による借り入れ条件の改善が見込まれます。主に、固定金利での借り入れがある家計では、ローン残高が減ることで(月々の支払額が一定として)借入期間が短縮され、金利もより低い水準のものが適用されることになり、ローン負担の軽減が期待できるでしょう。また、1万円から繰り上げ返済できたり、繰り上げ返済時の手数料もかからなかったりと金融機関のサービスはより使い勝手が良くなっています。その点からも借り換えのメリットは大きいといえるでしょう。 ========================================================== ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社 ファンドマネージャー 相川雅宏 (楽天マネーニュース[株・投資]第100号 2011年7月8日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.07.12 16:59:09
海外ETFのディスクロージャー資料は、本国で作成されたものが日本語に翻訳されており、横文字が目立ちます。また、ファクトシート(定期的にネット上で更新される簡易的な運用報告書)が日本語に翻訳されてネットに掲載されるまで時間が掛かることから、最新の情報を入手するには、直接、海外のホームページをみたほうが早道です。しかし、馴染みのない言葉が頻繁に出てくると、読み進むのも億劫になりがちです。今回は、海外ETFのディスクロージャー資料でよく目にする用語について解説します。 (1)フル・リプリケーション(Full Replication) 日本語で完全法といい、連動対象とするベンチマークを構成する全ての銘柄を、ベンチマークの構成通りに組み入れるポートフォリオ構築方法です。リプリケーションは、replicate「複製する、模倣する」の名詞形で、フル(完全)にリプリケート(複製)するから、完全法というわけです。一方で、計量モデル等にもとづき、一部の銘柄を抽出し、ファンドとベンチマークのリスク特性のズレが最も小さくなるように、ポートフォリオを組む方法を最適化法(Optimized Replication)と呼びます。 (2)トータル・リターン(Total Return) 投資元本に対する一定期間内の総合的な収益率のことです。株価や債券価格の変化(キャピタルゲイン/ロス)と、配当や利子収入(インカムゲイン)を合計したものを、投資元本で割って求めます。なお、配当や利子収入を含まない、株価・債券価格の変化だけの場合は、プライス・リターンと呼びます。 (3)NAV(Net Asset Value) 一般の投資信託では、ファンドの純資産総額をNAVといいますが、ETFの場合、純資産総額を一口当たりに換算した金額を指します。NAVは、1日に1回、取引所の引けた後に算出されます。さらに、取引時間中にリアルタイムで更新される一口当たり推定純資産額もあり、Indicative NAV(iNAV)と呼ばれています。 iNAVの公表により、売買にあたっての透明性が高まり、市場での取引価格とiNAVとを見比べることで、裁定取引(価格差を利用して売買し、利鞘を稼ぐ取引)に取り組み易くなっています。 なお、一口当たりに換算する前の純資産総額はトータル・ネット・アセット(Total Net Asset)と表記されることが多いようです。 (4)エクスペンス・レシオ(Expense Ratio) 運用手数料や口座管理費用、監査費用といったファンド管理に要する費用はファンドの純資産から差し引かれます。その支出額の純資産に対する比率がエクスペンス・レシオであり、この値が低いほど保有コストが低いと評価できます。 (5)ポートフォリオ・ターンオーバー(Portfolio Turnover) ターンオーバー(Turnover)とは、一般的に、資本・資産の回転率を指します。ポートフォリオのターンオーバーという場合は、ポートフォリオに組み入れる株式などの有価証券が一定期間内にどれだけ頻繁に売買されたかを示し、ファンド内の取引活動を計る尺度になります。取引コスト抑制の観点から、ターンオーバーが低いほうが好ましいとされます。 ========================================================== ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社 ファンドマネージャー 相川雅宏 (楽天マネーニュース[株・投資]第99号 2011年6月24日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.06.24 16:56:21
商品市況の高騰や経済の回復基調を背景に、世界的にインフレ圧力が高まってきている。投資信託に投資してインフレから資産を守るためには、どの様なタイプのファンドがよいだろうか。 多くの人が第一にあげるのは株式ファンドであろう。だが、株式投資は常にインフレヘッジになるとは言えない。1980年から2010年までの30年間について、東証第一部の各年間の平均株式投資収益率を消費者物価指数上昇率と比較してみると、株式投資収益率が物価上昇率よりも悪かった年が12年あった。 1年という短期で見れば40%の期間、株式投資はインフレヘッジの機能を果たしていない。10年という長期で見ても、20期間中7期間は株式投資収益率が消費者物価上昇率に及ばない。20年ではどうか。この場合でも10期間中3期間がインフレヘッジとなっていない。 この3ケースは、1980年代末の株式市場バブル期の頂点で株式を買い20年後のリーマンショックによる暴落時に売却したという異常なケースと言えるかもしれないが、今後そうした状況が再来しないとも限らない。そこで、株式ファンドを補完するために他のタイプのファンドにも分散投資することが望まれよう。 その一つは、コモディティファンドである。石油や金属、農産物など商品への投資は昔から効果的なインフレヘッジ手段と言われる。しかもこれらの商品の価格変動は株式市場の変動と動きが大きく異なるので、株式投資と組み合わせれば資産全体のリスク・リターンの向上が期待できる。 ただ、コモディティファンドは基準価額の変動が激しいので、短期ではインフレヘッジになるとは限らないこと、また、ファンドは石油とか小麦などの商品に直接投資するのではなく、多くの場合、商品指数に連動するように作られた「仕組み債」に投資するので、仕組み債の発行会社の信用リスクがあることに留意が必要だ。 もう一つは不動産投資信託ファンド(REITファンド)である。インフレ期には地価や家賃が値上がりするからREITは好影響を受けるだろう。しかし半面、不動産の維持・管理費用も上昇するというマイナス面も出てくる。また、インフレ期に金利水準が上昇すると株式や債券の利回りが上昇し、REITの利回りの相対的有利性が薄れてくる。こうした点を考えるとインフレヘッジ手段としてのREITファンドの効果は限定的と言えよう。 インフレヘッジという観点から投信ポートフォリオを構築するには、株式ファンドをコアとし、コモディティファンド、REITファンドを一部組入れて分散投資効果を図るという組み合わせがよいだろう。 ========================================================== 金融アナリスト 新藤正悟 (楽天マネーニュース[株・投資]第98号 2011年6月10日発行より) ========================================================== 最終更新日時 2011.06.16 11:22:05 |一覧| |