「iシェアーズ・バークレイズ米国総合ファンド(AGG)」と「iシェアーズ・バークレイズ米国TIPSファンド(TIP)」
ETFの連動対象は株価指数に留まりません。債券指数に連動するETFも海外には充実しています。
最初に紹介するのは、「iシェアーズ・バークレイズ米国総合ファンド(AGG)」で、「バークレイズ・キャピタル米国総合インデックス」との連動を目指す海外ETFです。
この「米国総合インデックス」は、アメリカの投資適格債券市場全体のパフォーマンスを測る指標として広く使われています。もともとは08年9月に経営破たんした、アメリカの証券会社リーマン・ブラザーズが算出・公表する「債券インデックス」のひとつでしたが、破たん後は、アメリカの証券会社バークレイズ・キャピタルがリーマンの米国地域を買収し、インデックス部門も掌中に納め、指数の算出・公表を引き継いでいます。
バークレイズ・キャピタルのインデックス・ファミリーに統合されたことに伴って、従来の名称からリーマンの名前が外れ、「バークレイズ・キャピタル米国総合インデックス」と名称変更されました。
さて、「米国総合インデックス」には、投資適格の米国国債、投資適格社債、モーゲージ・パススルー証券およびアセット・バック証券が構成銘柄として含まれています。
投資適格債券とは、格付け機関によって「投資適格」の格付けが付けられている債券で、ムーディーズではBaa、S&PではBBB以上が投資適格とされます。
ある程度格付けの高い債券で構成されることから、デフォルト・リスクは比較的限定されていると考えられます。
「AGG」の上場は2003年9月と4年超の実績があります。上場先は、ニューヨーク証券取引所 アーカで、運用はバークレイズ・グローバル・インベスターズが手がけています。分配金の支払いは、毎月行われており、直近の分配実績を基にして年率化した利回りは4.3%程度です。また、コスト面では、年率0.24%の運用報酬率が設定されています。なお、購入に最低限必要な金額は、90,000円程度です。
次に紹介するのは、「iシェアーズ・バークレイズ米国TIPSファンド(TIP)」です。「バークレイズ・キャピタル米国TIPSインデックス」を連動対象とします。TIPSとは、Treasury Inflation Protection Securitiesの略で、物価連動債のことです。物価上昇率に応じて元本と利息が調整されることから、インフレ・リスクのヘッジ手段として利用されます。
運用は「AGG」と同じくバークレイズ・グローバル・インベスターズが手がけています。上場は2003年12月で、年率0.20%の運用報酬率が設定されています。08年11月以降半年弱ほど分配金の支払いがなかったようですが、それまで、また、09年4月以降は分配金が毎月、支払われています。直近の分配実績を基にして年率化した利回りは4.7%程度です。なお、購入に最低限必要な金額は90,000円程度です。
これまで12回に渡って、海外ETFをカテゴリー毎にご紹介してきました。この1年間で、日本から購入できる海外ETFの銘柄数は倍以上に増え、楽天証券で取り扱う銘柄数は88銘柄(2009年6月現在)となりました。筆者は、「ショート」「ウルトラ・ショート」といったベア型のETFも売買できるようになれば面白いと思います。今後も多種多様な海外ETFにアクセスできるようになるでしょう。
※旬の投資情報をお届けする「今号のピックアップ」と、海外ETFの銘柄をご紹介する「海外ETFナビ」は、交替でお届けします。
==========================================================
金融アナリスト 愛川正博
(楽天マネーニュース[株・投資]第52号 2009年6月26日発行より)
==========================================================