308963 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

山崎元の経済・マネーここに注目

山崎元の経済・マネーここに注目

カテゴリ

お気に入りブログ

まだ登録されていません

ニューストピックス

楽天カード

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2009.09.11
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類

「お金とは何か」とあらためて訊かれると、案外、一言では答えにくい。学校の社会の教科書には、交換の手段、価値の尺度、価値の保蔵手段といったお金の機能に関する羅列的な説明があったような記憶があるが、お金そのものの説明としては今一つ心に響かない。

なるべく短く答えるとすると「お金とは、支払い手段として信用されているもののことだ」ということになるだろうか。コインも、紙幣も、銀行預金も、それを使って支払いを済ませることができるので「お金」だ。

現代の取引を考えるとすると、「現代にあって、お金とは、主にコンピューターの中のデータの形を取る」という説明を付け加える必要がある。高額の商品やプロジェクトなどの代金は、特に企業間の取引では、預金から相手の預金口座に送金することによって支払いが行われる。この場合に、動いているのは、「口座の持ち主が持っているとされるデータ」であり、これが相手の口座に移ったとされることで、支払いが完了する。

これが支払いとして認められるのは、預金者が預けた貨幣なり日銀券なり別の銀行にあるデータなりを預金を受け入れた銀行がその人の「お金」だと認めてデータ化し、このデータを、取引の対価を支払う側と受け取る側の双方が「お金」だと認めていることによって成り立っている。「お金」は、お互いにこれを「お金」として認めようという共通の信用から成り立っている。

このお金とされているデータは、国債や外貨準備など自国政府又は外国政府の債務を中央銀行が買い、その対価として紙幣や預金(のデータ)を取引相手に渡し、さらにこのデータを将来やりとりできるという前提で銀行がお金を貸すことによって増える。これを信用創造と呼ぶから、やはり「お金」のベースは信用だ。この増え方をコントロールして経済に影響を与えるのがマクロの金融政策ということになるが、この辺まで来ると、かなり複雑だ。

観点を変えよう。では、お金があると何がいいのか?

一言で言うなら、積極的には、「お金があると、自由が拡大できる」ということだろう。お金を持っている人は、モノ・コト両面で、できることが多い。また、やや消極的な言い方だが「お金で避けられる不幸は多い」ことも現実だ。空腹も、病気も、退屈も、お金があるとかなりの程度解決できる。実感としては、後者を重要に感じる方が多いかも知れない。

「お金で幸せになれるか?」というのもよくある問いだが、幸せを常識的な範囲で定義する限り、明らかにお金だけでは幸せになれない。たとえば、人は、何らかの意思を十分に実現するために健康な精神と肉体が必要な場合が多い。また、人は、他人に認められたい生き物だから、友人ないしこれに近い他人がいなければ、幸せを感ずることができない。

人それぞれだから、決めつけてはいけないのかも知れないが、健康が損なわれていて、家族も友人もいない人が、亡くなる寸前に生涯最高額の使い切れないほどのお金を持っている、という状態が幸せだとは思えない。でも、同じその人が、お金を持っていなかったら、もっと不幸せかも知れないと思われるところに、お金の厄介さがある。

多くの場合、お金は、無いよりもある方が好都合だ。「お金は、いくらあっても邪魔にならない」と言われることが多いのだが、そうとばかりも決めつけられない。お金がたくさんあると、これを失うことが心配になる。そのうちに、利回りが気になるようになり、時価が気になるようになる。あるいは、十分なお金をもらっていても、同僚がもっともらっていると気分が悪いというような状態もあり得る。もらうお金にせよ、貯めたお金にせよ、「お金が気になる」という状態は幸せではない。

お金は、今の時点で皆がそれを『お金』だと認めたものに過ぎない頼りないものだ。ドルだって、円だって、将来お金の役割を果たさなくなる可能性が十分あり得る。しょせん人間の信頼が作り上げた虚像に絶対などない。お金だけに頼り切るのは、心許ないし、寂しい。

お金で悩むことのない、お金のことが気にならない人生が理想的に思える。ただ、そのためには、お金で「不自由や」や「心配」をしないために、お金を上手に扱うことが必要になる。お金を気にしないで暮らすために、お金について正しく知らなければならない、というのだから、世の中は皮肉にできている。

==========================================================
楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第58号 2009年9月11日発行より)
==========================================================

 






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009.09.11 18:37:01



© Rakuten Group, Inc.