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山崎元の経済・マネーここに注目

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2009.10.09
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カテゴリ:カテゴリ未分類
8月の消費者物価指数がマイナス対前年比2.4%と大幅な落ち込みになった。前年の同時期に原油高によって物価が上昇していたので、対前年比の物価下落が大きめに出るということもあるのだが、対前月比で4ヵ月連続でマイナス0.2%の下落となっていて、物価が下落傾向にあることは間違いない。現状を「デフレ」と呼んで差し支えないだろう。

街を歩いていても、夏物衣料品の「セール」と銘打った値下げ期間が例年よりも長かった気がするし、値引きも大きかったように思う。特に、全国百貨店売上高はここしばらく10%前後の対前年比マイナスを続けており、マイナス2%台で推移する小売業販売額よりも悪い。金融危機による資産価格の下落は、富裕層の消費に大きくブレーキを掛けた。

平均的な勤労者の状況も良くない。現金給与支払総額の対前年比の数字は6月がマイナス7.0%、7月がマイナス5.6%と、厳しい状況が続いていて、要は、勤労者の場合、物価の下落による実質購買力の改善を収入の下落がさらに上回る状況になっている。生活がじわりと苦しくなっていると感じるはずだし、何せ、現実に収入が減り気味なのだから、将来の不安もあって、財布の紐が堅くなっている。物が売れないのは仕方がない。小売業者は在庫を持つのが怖いから、値引きしてでも売りたいと思うし、従って、物価は下がる。しかし、消費者は物価が下がる傾向にあることを感じているから、買い急がない。

勤労者の所得環境が厳しいのは、労働需給が労働者側にとって不利だからだ。8月の失業率は前月から小幅に改善したが5.5%と依然高く、有効求人倍率の0.42倍は歴史的な最低水準であり、賃金が上がる環境ではない。

売上・業績の好調を伝えられるのはユニクロのファーストリテイリング社を代表とするような品質に対して価格の安い商品を提供する一握りの企業だ。「安くて、得だ」と思えるものなら、買ってもいいと自分を納得させやすいという辺りが現在の典型的な消費者心理だろう。

一部には、ユニクロ的な低価格販売がデフレを悪化させているとする向きもあるが、こうした販売者の低価格は主に相対価格が低いのであって、彼らをデフレの元凶と見る考え方は適切ではない。彼らが安い商品を提供してくれることによって、生活者は他の品目やサービスに充てる支出に余裕が生じるのだから、彼らを恨むのはお門違いだ。デフレの主な原因は物価水準全体にあり、さらにその背後には、経済全体としての需要不足がある。

最近の円高の進行もデフレ的な方向に作用する。輸入物価が下がることに加えて、特に製造業で業績が圧迫されることになる。国民にとって、円高は購買力の向上を意味するので、決して悪いことではないのだが、景気にとってマイナスであることは否めない。輸出企業でなくとも製造業では輸入品と競合することが十分にあるし、ソフトウェア業種などでも海外のライバルと直接競争しなければならない。国際比較した労働者の賃金は円高によって上昇するわけだから、円高は日本の労働者の競争力にとってマイナスに働くのだ。

現在のデフレが解消されるか否かの大きなポイントは二つある。一つは、今後、日銀が追加的な金融緩和策を採るか否か、もう一つは、新しい政権が財政収支をどうするかだ。日銀は、残存期間の長い長期債をもっと購入するなど、金融緩和効果を追加する方法をいくつか持っているが、現状ではそのようには動きそうにない。

一方、民主党政権の今後が財政収支にどのような影響を与えるかは、今一つ不透明だ。子ども手当のような家計に対する継続的な支出は、個人消費の回復に役立つはずだが、仮にその財源が全てこれまでの支出の削減で賄われるなら、需要に対するトータルな効果はややマイナスになる公算が大きい。民主党のいう「支出のムダ」の削減はいいことだが、トータルの財政収支がどうなるのかが、今後の景気とデフレの行方に関して非常に重要だ。

来年度予算の内容に大いに注目したい。

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楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第60号 2009年10月9日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2009.10.09 17:15:33



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