米国のクルーグマンが今年のノーベル経済学賞(正確にはスウェーデン銀行賞)を単独受賞しました。一般著書も多く、インフレターゲット論などで日本でも比較的知られた経済学者です。
実は僕がマクロ経済学に興味を抱くきっかけを与えたのはクルーグマンです(しかし経済学そのものにはのめり込まなかったのですが。。)。「国に国際競争力などはない」という彼の論争が関心をよびました。ちょうど同時期、政治学の授業では日米貿易摩擦問題を扱っていたので、レポートで彼の論文を参照したのを覚えています。クルーグマンの主張全てを知っていたわけでも、理解していたわけではないです。が、彼の話の展開がオーソドックスの至極まとも、裏をかえせばやや退屈なのに逆に説得力を感じたんですね。文章もうまい。その頃から将来のノーベル賞候補だと言われていたので、まあ今回のニュースは驚きません。
しかしクルーグマンの受賞は一部で物議をかもしているようです。
池田信夫氏などは批判的です。池田氏の主張などを総合してみると、どうもクルーグマンはその時折で持論を変えてきたようです。僕自身が初めて触れた、国際競争力をめぐる論争時、彼は自由貿易論者という位置づけでした。そして主な論敵は、戦略貿易論のレスターサローやローラ・タイソン。後者はクリントン政権時に通商代表部におり、日米貿易摩擦解消のため、日本政府に「数値目標」を要求した人物です。クルーグマンはこれを痛烈に批判していたのですが、タイソン側の主張の根拠は、なんとクルーグマンの戦略的貿易理論でした(また皮肉にもこれが今回のノーベル受賞の対象となったらしい)。つまりクルーグマンは自説を変えて、いわば架けたはしごを自ら外してしまったのです。
経済学から離れてしまい、クルーグマンとも疎遠になったので、最近の主張も知りません。ここ数年はブッシュ政権批判に始終していたらしく、また民主党政権への猟官運動なのか、その手の政治的ペーパーが多くなったようです。(反面、大衆ウケ?は良かったようですが)。そもそもクルーグマン=自由貿易主義者というのは期間限定だったのでしょう。せっかくなので今回の受賞を機に、「まっとう」な仕事もして欲しいですね。